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13.全部、全部、かえしてよ
しおりを挟む全開の窓から6月の涼しい風が入ってくる。部屋は、かろうじて歩ける程度に散らかっていて、壁には画鋲で刺した穴やテープを貼っていた跡が残っている。洗ってない食器や回してない洗濯物はもはや汚物だ。
なぜ、こんなにも部屋が汚いのかと言うと、私自身がもぬけの殻だからだ。頭の中はカラッポで、到底何かをできるような状態ではない。
理由は、簡単に言えば失恋。
もう先週のお話だけどね。
高校生の頃から付き合っていた彼とは、上手くいっていれば今日で7年記念日のはずだった。
別れた原因は、彼の浮気。
職場で出会った3歳年下の女に恋をしたそうだ。馬鹿らしい。会社に何しに行ってんだかあいつは。
7年と言う交際は、結婚を期待するのに十分すぎる長さだったのではないかと私は思う。そのため、一人暮らしをしていた私の家に彼は半同棲的に泊まっていた。
きっと、今は実家か彼女の家にいるだろう。
「この靴下はあいつのだ。ピアス忘れてってる。あ、これも…」
散らかった部屋を少しあさるだけで小さな彼を簡単に見つけることができる。
物は捨てるなり送りつけるなり処分できても、写真やポスターを飾るためにできた、画鋲の穴や粘着力の強いテープの跡は簡単には消えてくれない。
この部屋にいると、本当に彼はここにいたんだ。というより、本当に彼はもうここにはいないんだ。と思う気持ちの方が大きくなる。
こんな空間にいて、彼のことを考えるななんて無理な話だ。
そういえば、誰かが言っていた。
付き合うのに損得なんて考えはしない。メリットデメリットなんて関係ないんだ。
と。
私はそう思わない。
人と付き合うということは、その期間、私の心を体を金を、そして時間を全てその人に捧げるということだ。
そんな対価を払って得る交際に、なんの考えも持たないとか無理難題。
彼と過ごしたこの7年間はなんだったのだろう。
無駄だったのか。後悔の塊なのか。
その間あったかもしれない素敵な出会いは
彼を優先して断った沢山の誘いは
彼好みに切って染めた私の長い綺麗な黒髪は
信用して捧げた私の初めては
「全部、全部、かえしてよ…」
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