愛?愛!愛。

ぴぽ子

文字の大きさ
11 / 22

11.彼氏が好きって言ってくれない

しおりを挟む


 「彼氏が好きって言ってくれない。」

 そう不満げに言うのは、幼馴染みの遥だ。セミロングの毛先をくるくると指で遊び、ふてくされた表情で私のことを横目で見る。これは彼女なりの“私の話を聞いて”の合図だ。

 「遥は彼に言ってるの?好きって。」

 「言ってるよ!ちゃんと言ってる。好きって言ったらありがとうって言われるの。ありがとうってなによ!私片想いしてる?!」

 「落ち着いて。落ち着いて。」

 ここは私の家。お酒の入った遥の声はかなり大きいので、アパートの私の家だと隣の人に聞こえてしまうかもしれない。

 「恥ずかしいとか照れてるとかで言わないんじゃないかな。」

 「そんな理由が通用するとでも思ってるわけ?もしも、私以外に好きな人がいて浮気とかしてたらぶっ殺す。」

 遥は元ヤンだ。短気で口が悪い。

 「浮気してたらどうしよう。私は本当に好きなんだよ…」

 遥の丸い瞳からぽろぽろと涙が落ちる。一見ただの怖い元ヤンだが、本当は乙女でかなりピュアなハートの持ち主なのである。

 私は泣く遥の頭を撫でる。

 「そんなことないよ。和樹さん、浮気するような人には見えないもん。きっと和樹さんなりの理由があるんじゃないかな。」

 「本当に…?」

 充血した目で上目遣いをする遥。ちょっと怖い。

 「ええい!思い切って今電話しちゃえ!それで聞け!」

 「ちょっと、本気で言ってる?!」

 「本気よ本気!」

 私はテーブルに置いてある遥のスマホを手に取り、勝手に彼氏に電話をかけた。もちろん私も聞こえるようにスピーカーだ。

 『もしもし。どうしたの?』

 「あえ、えっと…その話があるんだけど。」

 『なに?』

 「なんで和樹はさ、私に好きって言ってくれないの?」

 『は?待って、ん?え?』

 「私は和樹にいつも好きって言ってるのに、和樹は私に好きって言ってくれないじゃん。なんでなの?」

 『なんでそんなこと聞くの?』

 「いいから答えろや!」

 遥がテーブルを勢いよくバンと叩く。

 『その…言い過ぎたら言葉の価値が下がるかなって思って。好きって言葉が軽い言葉になっちゃう気がしたから…です。』

 「なんだその理由…てことはさ、私のことを別に好きじゃないわけではない?」

 『もちろん。』

 「よかった…。私ね和樹のこと大好きだよ。」

 『俺も。』

 “俺も好き。”という言葉を期待した私達の空間に沈黙が走る。

 いや、好きって言わないんかい。

 「なんでそこで“俺も好き。”が言えないわけ?!もういい!死ね!」

 最後に彼氏にとどめの暴言を吐いて電話を切った遥は私のベッドにあがり泣きながら寝た。



 翌朝、彼氏が私の家に遥を迎えに来た。朝から、幼馴染みの彼氏の綺麗な土下座を見る私。
 なんとか仲直りをして帰っていったあのカップルは結構手のかかる人達なのだ。

 後日聞いた話によると、あの一件から彼氏が毎日のように好きと言ってくるらしい。
 喋ったり目が合ったりするだけで好きと言うので、今は逆に、恥ずかしいから言わないでとまで言ったそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった

naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】 出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。 マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。 会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。 ――でも、君は彼女で、私は彼だった。 嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。 百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。 “会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

処理中です...