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11.彼氏が好きって言ってくれない
しおりを挟む「彼氏が好きって言ってくれない。」
そう不満げに言うのは、幼馴染みの遥だ。セミロングの毛先をくるくると指で遊び、ふてくされた表情で私のことを横目で見る。これは彼女なりの“私の話を聞いて”の合図だ。
「遥は彼に言ってるの?好きって。」
「言ってるよ!ちゃんと言ってる。好きって言ったらありがとうって言われるの。ありがとうってなによ!私片想いしてる?!」
「落ち着いて。落ち着いて。」
ここは私の家。お酒の入った遥の声はかなり大きいので、アパートの私の家だと隣の人に聞こえてしまうかもしれない。
「恥ずかしいとか照れてるとかで言わないんじゃないかな。」
「そんな理由が通用するとでも思ってるわけ?もしも、私以外に好きな人がいて浮気とかしてたらぶっ殺す。」
遥は元ヤンだ。短気で口が悪い。
「浮気してたらどうしよう。私は本当に好きなんだよ…」
遥の丸い瞳からぽろぽろと涙が落ちる。一見ただの怖い元ヤンだが、本当は乙女でかなりピュアなハートの持ち主なのである。
私は泣く遥の頭を撫でる。
「そんなことないよ。和樹さん、浮気するような人には見えないもん。きっと和樹さんなりの理由があるんじゃないかな。」
「本当に…?」
充血した目で上目遣いをする遥。ちょっと怖い。
「ええい!思い切って今電話しちゃえ!それで聞け!」
「ちょっと、本気で言ってる?!」
「本気よ本気!」
私はテーブルに置いてある遥のスマホを手に取り、勝手に彼氏に電話をかけた。もちろん私も聞こえるようにスピーカーだ。
『もしもし。どうしたの?』
「あえ、えっと…その話があるんだけど。」
『なに?』
「なんで和樹はさ、私に好きって言ってくれないの?」
『は?待って、ん?え?』
「私は和樹にいつも好きって言ってるのに、和樹は私に好きって言ってくれないじゃん。なんでなの?」
『なんでそんなこと聞くの?』
「いいから答えろや!」
遥がテーブルを勢いよくバンと叩く。
『その…言い過ぎたら言葉の価値が下がるかなって思って。好きって言葉が軽い言葉になっちゃう気がしたから…です。』
「なんだその理由…てことはさ、私のことを別に好きじゃないわけではない?」
『もちろん。』
「よかった…。私ね和樹のこと大好きだよ。」
『俺も。』
“俺も好き。”という言葉を期待した私達の空間に沈黙が走る。
いや、好きって言わないんかい。
「なんでそこで“俺も好き。”が言えないわけ?!もういい!死ね!」
最後に彼氏にとどめの暴言を吐いて電話を切った遥は私のベッドにあがり泣きながら寝た。
翌朝、彼氏が私の家に遥を迎えに来た。朝から、幼馴染みの彼氏の綺麗な土下座を見る私。
なんとか仲直りをして帰っていったあのカップルは結構手のかかる人達なのだ。
後日聞いた話によると、あの一件から彼氏が毎日のように好きと言ってくるらしい。
喋ったり目が合ったりするだけで好きと言うので、今は逆に、恥ずかしいから言わないでとまで言ったそうだ。
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