愛?愛!愛。

ぴぽ子

文字の大きさ
15 / 22

16.めっちゃラブレターじゃん

しおりを挟む


 『大好きな君へ
     聴いてください。……』


 部室の鍵を締めに行くと、まだ帰ってない部員がいた。彼女は俺に気づくと、とっさに何かを隠した。

 「ね~何隠したの~?」

 少しいじわるっぽく聞いてみると、彼女は顔を赤くして「内緒です!」と言い、部室を出ていった。

 廊下を走る音がする。危なかっしくてほっておけない。つい気になっちゃうような存在。

 「星野にはまだ言えないな…」

 俺が転校するって知ったら、きっと悲しむよな。


 彼女のことは俺がよく知っているつもりだ。
 最初は、部員が増えたらいいなっていう気持ちで彼女を勧誘した。
 でも、彼女には才能がある。俺は基本しか教えてないのに、会うたびにどんどん上手くなっていく。すぐに俺や先輩たちとバンドを組めるようになった。
 彼女のその成長ぶりに惹かれていく。

 彼女は俺と話すとき顔を赤らめて下を向くことが多い。質問や聞きたいことは俺に聞きにくるし、俺とバンドを組みたいってずっと言っていた。
 しかも、知ってるぞ。バレンタインのお菓子俺にだけ違うのを作ってくれたことも。
 彼女は俺のことが好きなんじゃないのか。そう思うと彼女を意識し出して、俺も気になってしまう。


 転校が決まってから、部員たちに最後に何かできることはないかと考えていた。焼肉奢る?お菓子大量に買う?俺のギター1本あげる?
 色々考えた結果、部員全員にお菓子とひとこと手紙を用意することにした。

 星野に手紙を書こうとしたとき、なぜだか心の中に色んな感情が押し寄せてきた。だから、頭の中に浮かんだ言葉をどんどん書いていくことにした。

 「なんか、歌詞みたいになっちゃってる…」




 俺の最後の登校日。皆んなに手渡しで渡したくて、昼休みや放課後に学校を歩き回った。
 彼女だけ見つからない。どこに行ったんだよ。

 探しまくった結果、夕暮れの部室で彼女を見つけた。椅子にも座らず、地べたに座り込み、壁に寄りかかって寝てる。
 夕日のおかげだろうか、彼女の頬に光が見えた。泣いている。
 何か悲しいことがあったのか?怖い夢でも見ているのか?

 それとも俺が転校するから泣いているのか?

 わからない。わからないけど、今起こすのは違う気がする。そっとしといてあげよう。

 「星野だけだからな。手紙じゃなくてCDにしたの。」

 俺はテーブルにCDとお菓子を置いた。

 「ここで星野の前で弾き語りしたな。懐かしいな。その時も今みたいに夕暮れ時だったかな。」

 彼女には自分から転校することを伝えられなかった。彼女が悲しむと思ったからなんて言い訳で、俺自身が言う勇気がなかったのかもしれない。

 「星野…ごめんな。」

 寝ている彼女の涙をそっとぬぐった。

 部室を出ようとするとき、フタがちゃんと閉まってないゴミ箱が視界に入り、フタを閉めようとゴミ箱に近づいた。すると、中にはビリビリに破かれた紙が入っていた。
 汚いのはわかっているが、つい破かれた紙を拾って集めてしまった。だってこれ彼女の字だから。

 ブブッとスマホが揺れた。親から早く帰ってこいとメールがきた。

 集めた紙を鞄にしまい、部室を出ていった。



 寝る前、ビリビリに破かれた紙をパズルのピースを繋げるように丁寧に合わせた。
 完成した1枚の紙を見て、俺は自分でもわかるくらい顔を赤くしてしまった。

 「めっちゃラブレターじゃん。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった

naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】 出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。 マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。 会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。 ――でも、君は彼女で、私は彼だった。 嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。 百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。 “会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。

籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。

クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。 3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。 ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。 「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

処理中です...