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16.めっちゃラブレターじゃん
しおりを挟む『大好きな君へ
聴いてください。……』
部室の鍵を締めに行くと、まだ帰ってない部員がいた。彼女は俺に気づくと、とっさに何かを隠した。
「ね~何隠したの~?」
少しいじわるっぽく聞いてみると、彼女は顔を赤くして「内緒です!」と言い、部室を出ていった。
廊下を走る音がする。危なかっしくてほっておけない。つい気になっちゃうような存在。
「星野にはまだ言えないな…」
俺が転校するって知ったら、きっと悲しむよな。
彼女のことは俺がよく知っているつもりだ。
最初は、部員が増えたらいいなっていう気持ちで彼女を勧誘した。
でも、彼女には才能がある。俺は基本しか教えてないのに、会うたびにどんどん上手くなっていく。すぐに俺や先輩たちとバンドを組めるようになった。
彼女のその成長ぶりに惹かれていく。
彼女は俺と話すとき顔を赤らめて下を向くことが多い。質問や聞きたいことは俺に聞きにくるし、俺とバンドを組みたいってずっと言っていた。
しかも、知ってるぞ。バレンタインのお菓子俺にだけ違うのを作ってくれたことも。
彼女は俺のことが好きなんじゃないのか。そう思うと彼女を意識し出して、俺も気になってしまう。
転校が決まってから、部員たちに最後に何かできることはないかと考えていた。焼肉奢る?お菓子大量に買う?俺のギター1本あげる?
色々考えた結果、部員全員にお菓子とひとこと手紙を用意することにした。
星野に手紙を書こうとしたとき、なぜだか心の中に色んな感情が押し寄せてきた。だから、頭の中に浮かんだ言葉をどんどん書いていくことにした。
「なんか、歌詞みたいになっちゃってる…」
俺の最後の登校日。皆んなに手渡しで渡したくて、昼休みや放課後に学校を歩き回った。
彼女だけ見つからない。どこに行ったんだよ。
探しまくった結果、夕暮れの部室で彼女を見つけた。椅子にも座らず、地べたに座り込み、壁に寄りかかって寝てる。
夕日のおかげだろうか、彼女の頬に光が見えた。泣いている。
何か悲しいことがあったのか?怖い夢でも見ているのか?
それとも俺が転校するから泣いているのか?
わからない。わからないけど、今起こすのは違う気がする。そっとしといてあげよう。
「星野だけだからな。手紙じゃなくてCDにしたの。」
俺はテーブルにCDとお菓子を置いた。
「ここで星野の前で弾き語りしたな。懐かしいな。その時も今みたいに夕暮れ時だったかな。」
彼女には自分から転校することを伝えられなかった。彼女が悲しむと思ったからなんて言い訳で、俺自身が言う勇気がなかったのかもしれない。
「星野…ごめんな。」
寝ている彼女の涙をそっと拭った。
部室を出ようとするとき、フタがちゃんと閉まってないゴミ箱が視界に入り、フタを閉めようとゴミ箱に近づいた。すると、中にはビリビリに破かれた紙が入っていた。
汚いのはわかっているが、つい破かれた紙を拾って集めてしまった。だってこれ彼女の字だから。
ブブッとスマホが揺れた。親から早く帰ってこいとメールがきた。
集めた紙を鞄にしまい、部室を出ていった。
寝る前、ビリビリに破かれた紙をパズルのピースを繋げるように丁寧に合わせた。
完成した1枚の紙を見て、俺は自分でもわかるくらい顔を赤くしてしまった。
「めっちゃラブレターじゃん。」
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