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第十一話 動乱
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- 怪賊11 -
もうお終いだ。
早く逃げろ。
一人でも多く生き残るんだ!
最初から勝ち目など無かったのだ。
もうエドワード二世もいない。
降りた煙幕の先に見えたのは、まさに地獄だった。
もう戦ってはいけない。
これ以上犠牲を出してはいけない。
ここに来ているのはおそらくスペンサー島の本軍だ。
ここで全滅すれば、国を守る事など出来ない。
はっきりそう断言できるのは、フォックスはこの状況に既視感があるからだ。
忘れもしない、アンダーバード島争奪戦。
強国、南バルージャンとアンダーバード島を巡り対峙した時の事だ。
互いに一歩も譲らない状況下で戦いが始まった。
スペンサー島はアンダーバード島を軍事拠点とする事を非常に重要視していた為ほぼ総動員といっても過言ではない数の兵が出された。
対する南バルージャンは小規模な軍隊しか出されなかった。
誰もがスペンサー島の勝利を確信した。
しかし、いざ戦ってみると南バルージャンが圧倒的な強さを見せつけ、なんと開戦一時間にして生き残っている兵の数も南バルージャンの方が多くなった。
フォックスがあの戦いで痛感したのは、スペンサー島軍の諦めの悪さだった。
全く持って引く気配が無いのだ。
戦争において強い国というのは、ただ単に戦闘能力が高いだけでなく、これ以上戦いを続けても、勝利することは不可能だと考えて、早々に撤退する決断力も必要なのだ。
安直に根性だけで戦っていても、余計な損失が増えるだけだ。
つまり、弱い軍隊程、諦めが悪いのだ。
勝利がいつまで経っても見えてこない様な無謀な戦いを続けていては、損害を増やす一方になり、悪循環を生み出すだけなのだ。
結果、アンダーバード島争奪戦ではこれでもかというぐらい大量の軍人が戦死してしまった。
だがそれはもう過去の話では無い。
現在進行形で破滅が起ころうとしている。
阻止しなければ。
でもどうやって。
火を放って戦闘を中断させるか。
しかしそんな大きな火を放てるのか。
フォックスはその答えをすぐに見つけた。
ベックだ。
ベックの火炎放射器があれば。
いや、火炎放射器だけでは足りないか。
とにかく撒き散らして、戦闘を中断せざるを得ない状況にしなければ。
だが、フォックスが身を潜めていた物陰から出た時、ニックが言葉を発した。
「おい見ろ!マーランド島の奴らがこっちに来てるぞ!」
「俺たちを追って来たのか!」
「ああ、多分な。」
ここでまたしても、邪魔者登場だ。
「どうする?このままこの戦いに合流させる?」
「いや、それは危険だ。」
ニックがきっぱりと言う。
「考えてみろ。あのマーランド島だ。このスペンサー島の馬鹿な王より百倍利口だ。こんな連中にこの複雑な戦いを理解する事が出来ない事ぐらい見ればわかる話だ。」
「じゃあ、合流させたら…」
「ああ、味方に成り済ますだろうな。」
「しかし、そんな騙す様な真似をした事がキートソン帝国に漏れれば、喧嘩を売る事になるんじゃないのか?」
「いや、それも無い。そもそも、こんな軍隊を送り込んでくる時点で、キートソン帝国はこの国に興味が無い。今回もいつもの見せしめだ。スペンサー島がどうなろうと相手にもしていないんだろう。」
ニックの言う通りだ。
キートソン帝国は何のやる気も無いのだ。
「だから、このまま鉢合わせたら、間違いなく手を組まれる。そうなれば、最早戦いにすらならない。全滅か、撤退か、だ。」
「なんてこった。じゃあ残された手段は一つ。ここで俺たちがマーランド島のやつらを食い止める。」
クリスが頭を抱えながらそう言う。
「ああ、そういう事になるな。殲滅するしかないだろう。」
「そんなの無理よ!さっきだって死に目に会ったじゃないの!」
エマが叫ぶ。
「ああ、分かってる。だが、ここで合流させれば兵力は倍増する。この島を諦めたければそれで良い。」
「そうだぞエマ。ここで食い止めるしかないんだ。それに、ジェイムスの仇討ちもまだ済んでない。奴の死を無駄にするな!」
険しい表情でトーマスが言う。
「フォックス、お前はあの戦いを止めるんだろ?」
「ああ。」
「やって来い。我々はその間にマーランド島軍を食い止めておく。自分の任務が終われば、すぐに合流して応戦してくれ。ここからは厳しい戦いになるぞ。」
「了解。」
もうお終いだ。
早く逃げろ。
一人でも多く生き残るんだ!
最初から勝ち目など無かったのだ。
もうエドワード二世もいない。
降りた煙幕の先に見えたのは、まさに地獄だった。
もう戦ってはいけない。
これ以上犠牲を出してはいけない。
ここに来ているのはおそらくスペンサー島の本軍だ。
ここで全滅すれば、国を守る事など出来ない。
はっきりそう断言できるのは、フォックスはこの状況に既視感があるからだ。
忘れもしない、アンダーバード島争奪戦。
強国、南バルージャンとアンダーバード島を巡り対峙した時の事だ。
互いに一歩も譲らない状況下で戦いが始まった。
スペンサー島はアンダーバード島を軍事拠点とする事を非常に重要視していた為ほぼ総動員といっても過言ではない数の兵が出された。
対する南バルージャンは小規模な軍隊しか出されなかった。
誰もがスペンサー島の勝利を確信した。
しかし、いざ戦ってみると南バルージャンが圧倒的な強さを見せつけ、なんと開戦一時間にして生き残っている兵の数も南バルージャンの方が多くなった。
フォックスがあの戦いで痛感したのは、スペンサー島軍の諦めの悪さだった。
全く持って引く気配が無いのだ。
戦争において強い国というのは、ただ単に戦闘能力が高いだけでなく、これ以上戦いを続けても、勝利することは不可能だと考えて、早々に撤退する決断力も必要なのだ。
安直に根性だけで戦っていても、余計な損失が増えるだけだ。
つまり、弱い軍隊程、諦めが悪いのだ。
勝利がいつまで経っても見えてこない様な無謀な戦いを続けていては、損害を増やす一方になり、悪循環を生み出すだけなのだ。
結果、アンダーバード島争奪戦ではこれでもかというぐらい大量の軍人が戦死してしまった。
だがそれはもう過去の話では無い。
現在進行形で破滅が起ころうとしている。
阻止しなければ。
でもどうやって。
火を放って戦闘を中断させるか。
しかしそんな大きな火を放てるのか。
フォックスはその答えをすぐに見つけた。
ベックだ。
ベックの火炎放射器があれば。
いや、火炎放射器だけでは足りないか。
とにかく撒き散らして、戦闘を中断せざるを得ない状況にしなければ。
だが、フォックスが身を潜めていた物陰から出た時、ニックが言葉を発した。
「おい見ろ!マーランド島の奴らがこっちに来てるぞ!」
「俺たちを追って来たのか!」
「ああ、多分な。」
ここでまたしても、邪魔者登場だ。
「どうする?このままこの戦いに合流させる?」
「いや、それは危険だ。」
ニックがきっぱりと言う。
「考えてみろ。あのマーランド島だ。このスペンサー島の馬鹿な王より百倍利口だ。こんな連中にこの複雑な戦いを理解する事が出来ない事ぐらい見ればわかる話だ。」
「じゃあ、合流させたら…」
「ああ、味方に成り済ますだろうな。」
「しかし、そんな騙す様な真似をした事がキートソン帝国に漏れれば、喧嘩を売る事になるんじゃないのか?」
「いや、それも無い。そもそも、こんな軍隊を送り込んでくる時点で、キートソン帝国はこの国に興味が無い。今回もいつもの見せしめだ。スペンサー島がどうなろうと相手にもしていないんだろう。」
ニックの言う通りだ。
キートソン帝国は何のやる気も無いのだ。
「だから、このまま鉢合わせたら、間違いなく手を組まれる。そうなれば、最早戦いにすらならない。全滅か、撤退か、だ。」
「なんてこった。じゃあ残された手段は一つ。ここで俺たちがマーランド島のやつらを食い止める。」
クリスが頭を抱えながらそう言う。
「ああ、そういう事になるな。殲滅するしかないだろう。」
「そんなの無理よ!さっきだって死に目に会ったじゃないの!」
エマが叫ぶ。
「ああ、分かってる。だが、ここで合流させれば兵力は倍増する。この島を諦めたければそれで良い。」
「そうだぞエマ。ここで食い止めるしかないんだ。それに、ジェイムスの仇討ちもまだ済んでない。奴の死を無駄にするな!」
険しい表情でトーマスが言う。
「フォックス、お前はあの戦いを止めるんだろ?」
「ああ。」
「やって来い。我々はその間にマーランド島軍を食い止めておく。自分の任務が終われば、すぐに合流して応戦してくれ。ここからは厳しい戦いになるぞ。」
「了解。」
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楽しくよませてもらってます。これからの更新たのしみです。
楽しく読んでます。これからの更新、楽しみにしています。
自分も海賊作品を書いてるので、とても楽しめました。これからフォックスが何をするのか、どんな展開になるか楽しみです。続き待ってますね^_^