怪賊

住原かなえ

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第十話 撃沈

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フォックスは思わず手を叩く。
ガービヤンが敵兵三人を華麗に倒したのだ。
ガービヤンは時代遅れの早撃ちガンマンだ。
かつては自動小銃を使っていたが、全く使えず
ハンドガンに転向した所、己の早撃ちの才能が目覚め、戦場でも第一線で活躍する遅咲きのガンマンだ。
彼の早撃ち技術は目を見張るモノがある。

ガービヤンにロックオンされれば、目にも留まらぬ速さで脳天をブチ抜かれる。

そして、またしても一人の黒人がガービヤンにロックオンされる。

行け!
ガービヤン!

ほぼ目に見えない速度でガービヤンがトリガーを引く。

あっさりと黒人が血を吹いて倒れる。


しかし、フォックスがガッツポーズをした直後、ガービヤンは一瞬にして黒人に囲まれていた!
一体何があったんだ!
フォックスは理解が追いつかなかった。

まさか囮だったのか!?
先程の黒人を倒している間に、囲まれたのか!
なんという速さだ!
ガンマンにとって包囲されるというのは死に近い状況である。
だが、ガービヤンは普段からそうならないように敵を倒しながらも周囲に注意を払って、囲まれ無いよう訓練していた筈だ。
普段から訓練している分野で負けるとは!
これが力というものだった。

ガービヤンは包囲された中で観念したかのようにハンドガンを捨て、目を瞑った。

フォックスも目を閉じた。
また一人、また一人と貴重な戦力が減っていってしまう。
何とかしないと。
これ以上ここでキートソン帝国と戦っていてもキリがない。
せめて止めさせるくらいの策は無いのか。

しかしフォックスは荒れる戦場を祈るように見つめている事しか出来なかった。





じっと戦場見つめていると、フォックスはふと軍人達の動きが不自然な事に気がつく。

先程まで最前線で戦っていた軍人達が次々と後退している。

撤退か?

フォックスは一瞬歓喜したが、すぐにその考えを打ち消した。

これは、作戦だ。
長年の間軍隊にいたフォックスにはすぐに分かった。
スペンサー島軍名物、C4作戦だ。

数々の敵を打ち破ってきたスペンサー島の伝統的な作戦、C4作戦が始まろうとしている。

C4とは知っての通り、強力な爆弾だ。
爆発に巻き込まれればひとたまりもない。
スペンサー島ではこのC4を戦闘中に敵が密集するエリアに大量に置き、味方兵が少し後退したところで煙幕を撒き、一斉に起爆するというものだ。
長い間使われて来た作戦だが、外部には一切漏れていない、スペンサー島の軍人のみが知るお決まりの作戦だ。
この作戦は戦闘が始まると同時にスタートしているのだ。
そしてさらにこの作戦は敵に気付かれないように敵陣にC4を仕掛ける為、マジシャンの様な技術も問われる。

既に優秀な軍人を二人も失っているが、この作戦が有効な事はフォックスもよく知っている。
巻き返しを期待出来る作戦だ。
これまでもそうだった。


手筈通りにスペンサー島軍が少し後退する。
黒人達はC4が仕掛けられているエリアから動いていない、筈だ。

いや、違う。
フォックスは何か嫌な予感がした。
フォックスは目を凝らして嫌な予感の正体を探る。

まさか!
フォックスは戦闘開始時に比べて黒人達が後退している事に気が付く。

大変だ!
黒人達が後退してスペンサー島軍が前進しているという事は、今、スペンサー島軍がいるのは自らが仕掛けたC4が置かれているエリアという事になる!

早く気付け!
煙幕を撒く前に!
煙幕を撒けばもう分からなくなるぞ!

「下がれェええええ!!」
フォックスが必死に叫ぶも時すでに遅く、煙幕が撒かれてしまった。



ドォン!
ドォン!
ドカァン!

煙幕の中で良い事は起こっていないだろう。
それは煙幕が下りないでも理解できた。
またしても黒人達の一枚上手だったのだ。
完全なる自滅だ。
まんまとやられてしまったのだ。


その時、不吉な声が煙幕の中から聞こえてきた。

「エドワード王ぉおおおお!」


まさか…
フォックスはもう何も考えたく無かった
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