前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃

文字の大きさ
72 / 92
アルシア移住

ババアにババアと言ったところで

しおりを挟む
「──だけどよ、やっぱエルフ出したいんだよなぁ。異世界と言えばエルフだろ?」

「問題は、最後までエルフが勇者を殺さずエンドロールまでいけるかどうかね……」

「そこよね。まず序盤でキレて、安全が保証できないわ。勇者だけじゃなくて隠密モードのカメラマンやスタッフまで殺されちゃうわ」

「ジューン! ジューンが居るじゃん?  ジューンなら見た目は二十代の美女だし──あ、でもなー、ジューンはババァだからなぁ」

 フレスベルグはニヤニヤしている。

 私は思わず笑い出した。
 この若僧、時々私をババァって言うのよ。

(ババァにババァって言ってダメージになると思ってるのかしら)

 だって正真正銘のババァだよ?

「だから毎回言ってるじゃないの。ババァババァと言ってもノーダメージだって」

「じゃあ何なら──」

「フレスベルグ、あのね。ババァと言われてダメージ受けるのは逆にババアとはまだ言えない年頃の子じゃない? 」

「──確かに」

 フレスベルグは考え込んだ。

「同世代の男にババァって言われたら、殺しちゃうかも知れないけど」

「ええ?  それくらいで──」

「それくらい、って思うあたりがもうね、モテない男のテンプレよ?」

「冗談なのに!?」

「そういうね、本人には改善できない部分を弄るつまんないジョークを言う男はモテないのよ」

「…………」

「まあ、でも大丈夫よ。そういう男は大人の女性からは選ばれないわ、だから問題ない」

 フレスベルグの顔色が悪くなってきた。

「もちろん、ババァからもね。眼中にないから問題なし。ただ、アドバイスするとしたら──自分がバカだって宣伝するのはオススメしない、かな」

 ババァからの優しいアドバイスよ。
 面白い、親しみあるつもりで不躾なこと言う男ってホントにモテない。
 もちろん、これは女にも当てはまるけれど。

「じゃあ、じゃあどうやったらモテる!?」

(モテたいのか。知らなかったわ)

 カルミラがフレスベルグをまじまじと眺めてから、ため息混じりで呟いた。

「フレちゃん、外見は最高に良いのよねぇ。美形だし、物憂げで知的だし」

「中身がねぇ……なんというかまだ子供よね」

「…………」

 フレスベルグは静かにうなだれた。
 珍しく真剣な顔で、こちらを見てくる。

「俺、そんなにダメなの!?」

「惜しいのよ、ほんっとに惜しいの」

 カルミラがため息をついた。

「まずね、冗談のつもりで他人を下げるのは一発で心証悪くするわ」

「いや、それは場を盛り上げようと──」

「場じゃなくて周囲を見なさいよ」

 私はカップを置いてから、口を開いた。

「モテたいならまず、受け手の気持ちに想像が及ぶこと。それが第一歩」

「受け手の……気持ち……?」

「そう。自分はそんなつもりじゃなかったは言い訳。相手がどう受け取ったか、がすべてよ」

「……難しい……」

「でも、必要。あなたは見た目はいいんだから、中身も伝わるようにしなきゃ損よ?」

 カルミラが追い討ちをかけるように微笑んだ。

「で、第二に──人の話、ちゃんと聞いてるようで聞いてないってのもマイナスポイント」

「そんなことない!」

「前に私が言ったピクルスのレシピ、覚えてる?」

「……え?」

「ほらね」

 カルミラが肩をすくめる。
 私も覚えてないので黙っておこう。


「モテる人って、他人の話を記憶して興味を持って、適切なときに引き出せるの。聞き上手で記憶上手は鉄板のスキルよ? 」

「あとね、相手の好みを全否定しないってのも大事」

「私の大事なケルベロスを『それの何がいいの?』って言ったの、感じ悪かったわよ」

「えっ、それ俺、マジでわかんなかっただけで──」

「わからなくても、否定しない。理解は後からでいいの。共感が先」

「…………」

 フレスベルグは、何かに耐えるようにテーブルの木目を見つめている。

「追い打ちすると、自分語りが多い男もモテないわよ」

「わかるー!こっちは喋る隙なくて。で、俺はさ~って三回続いたら、もう帰りたくなる」

「…………ッ」

「でも、フレちゃんはまだ若いからどうにでもなるわよ」

「……そうかな」

「中身で繋ぎ止めて、顔で納得させる。そしたら最強」

「…………」

 フレスベルグはゆっくりと顔を上げた。
 なにやら決意した顔で、静かに言った。

「……俺、明日から聞き上手になります」

「……急に意識高いわね?」

「努力する。ケルベロスも褒める。ピクルスも覚える」

「やけに前向きね?」

「──モテたいから!!」

「動機は下心かい!」

 私達は盛大に吹き出した。

 なんでフレスベルグの人生相談になったか、わからないけれど。

 ま、攻撃したいなら丸見えの武器は使うなって事よ。
 誰かを消したくなったら、エルフ式だと謀略か毒、暗殺かしらね。

 ──私がそこまで怒る事も、まず無いけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ガチャで大当たりしたのに、チートなしで異世界転生?

浅野明
ファンタジー
ある日突然天使に拉致された篠宮蓮、38歳。ラノベは好きだが、異世界を夢見るお年頃でもない。だというのに、「勇者召喚」とやらで天使(自称)に拉致られた。周りは中学生ばっかりで、おばちゃん泣いちゃうよ? しかもチートがもらえるかどうかはガチャの結果次第らしい。しかし、なんとも幸運なことに何万年に一度の大当たり!なのにチートがない?もらえたのは「幸運のアイテム袋」というアイテム一つだけ。 これは、理不尽に異世界転生させられた女性が好き勝手に生きる物語。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~

楠富 つかさ
ファンタジー
 都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...