前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃

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アルシア移住

ゴブリンのダンジョン④

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「くっそ、いてぇ!」

 フレスベルグは、地面をバンバン叩いてプリプリ怒っている。
 ティティは笑いすぎて翔ぶのを忘れ、墜落した。
 パンジーちゃんは……また怯え始めた。

 ──スライムだ。

「あれェ?  ココ、最初のフロアじゃん」

 また洞窟だ。
 スライムがちらほら。

 ここ、『普通のダンジョン』なら三層目の筈。

(──なにかが、おかしい)

 私はメモをしっかり取っていく事にした。

「ここ、最初んとこだよなー、スライム居るし」

 フレスベルグは、凍らせたスライムを蹴って
 遊び始めた。

 うーん……?

「階段の位置も……同じね」

「ループ?」

 今回は私が先に降りることにした。
 パンジーちゃんが慌てて着いてくる。
 階段は無くなる事は無く、普通に降りる事が出来た。

 四層(仮)は湿原。
 チラリとケルベロスの背中を見ると、子犬は目を閉じたままだ。
 まだ、危険は無さそう。

 蛇やらワニが寄ってくるけれど、敵になる強さでもない。

「ああっ、パンジーちゃん! 蛇はダメよ。ほら、ペッして────」

 パンジーちゃんが蛇で遊んでいる。

「あ、瞳孔が丸い蛇ね。なら食べちゃってもいいわよ」

 一瞬慌てたけど、無毒の蛇ならいい。
 低脂質・高タンパクでヘルシーだし。
 ダイエットにちょうどいいんじゃないかしら?

「おい、なんで蛇を捕まえ出したんだよ」

「パンジーちゃんのダイエットフードよ」

「毒あったらヤベェんじゃねーの?」

 フレスベルグが蛇を振り回しながら、首をかしげた。

「瞳孔が縦長のは毒があるやつだけれど、丸いのは大丈夫よ」

 途中、ティティが蛇に飲み込まれるというちょっとしたトラブルはあったが──
 三十匹くらい集めたところで、パンジーちゃんが蛇を投げ捨てた。

 ──あら? 食べない感じ?

 仕方ないので、不要な蛇は沼に放り込んだ。

「時間の無駄だった……」

「そういうこともあるよォ~」

 湿原は、なかなか広そうだ。
 二時間ほど歩き回ったが、階段は見つからない。
 湿気も多いし、あんまり長居したくない環境。

「うお! でっかいカエル」

 フレスベルグは、小型車サイズの真っ赤なカエルと対峙していた。
 ──真っ黒な禍々しい大剣をスラリと抜き放つ。
 毒液を水鉄砲のように撃ってくるカエルと、アホの子コンビはいい感じで戦っている。

 私とパンジーちゃんは、見学だ。
『二人の冒険』なのだから、手に負えない敵が現れてからの、サポートでいい。

「とうっ!」

 ティティは上手にデバフとバフをかけてるし、いいコンビなんじゃないかしらね?

 危なげなくカエルを倒し終わった二人は、意気揚々と戻ってきた。

「楽勝だったぜ!」

 大喜びで大剣を鞘にシャリン!と滑り込ませ、頬を掻いたフレスベルグの頬っぺたが黒くなった。

 ──手を見ると、両手が真っ黒だ。

「??──フレスベルグ、手」

 フレスベルグは自分の手のひらを見て、すっとんきょうな声を上げた。

「えっ! なにこれ!」

 慌てて大剣の柄をチェック。

「──は、剥げてる!?」

「見せてごらんなさい」

 フレスベルグから大剣を受け取った私は、入念にチェックを行った。
 デザインも禍々しい漆黒の大剣で、持ち手は剥げて黒茶色になっている。

 剣元にある銘は──真・魔王斬。

(刻印じゃないわね、スタンプじゃないの)

 黒いのはニスの重ね塗りね、手汗で剥げたんでしょうね……

「真・魔王斬ってなによ? 魔王って自分の事よね? 自害でもされるおつもりで?」

「ちげーよ! 真・魔王斬かっこいいだろ! 柄のスカルと薔薇、絡みつく蛇──」

「こどものオモチャじゃないの! まさかこれがメイン武器とは言わないでしょうね?」

「は!? オモチャのわけないだろ! 銘だってちゃんと魔王斬って入ってるじゃねーか! しかも真だぞ、真!」

「鑑定では大量生産の粗悪品、鋳造だが焼き入れ焼き戻しはされていない。って出てるけど? 銘だって刻印じゃなくてスタンプよ、それ」

「そんなわけないだろ、驚異の殿堂ロシナンテのオープニングセールの目玉商品だぞ!? 限定一本の抽選だったんだからな!」

 フレスベルグが怒り出した。
 驚異の殿堂ロシナンテって、安売りが自慢のチェーン店じゃないの。
 なんで自分の命を預ける武器を、チェーン店で買うのよ?

「カエル斬っただけで刃こぼれしてるんだから──あのカエルが堅いならともかく。ちなみにいくらで買ったの?」

「銀貨三枚と銅貨九枚」

 ──3980円じゃないの!
 日本円にしたらだけど。

「その値段、おかしいと思わなかったの?」

 フレスベルグはしょぼくれた様子で呟いた。

「だって、オープニングセールの限定販売……」

 ティティは地面に墜落して笑い転げている。

「ロシナンテは安売りがコンセプトでしょ、自分の命を預ける武器を、なんで鋳型に流し込んだだけの物にするのよ」

「限定一本だったんだぞ……返品するか」

 フレスベルグは紙箱を取り出した。

「あっ、観賞用って書いてある……」


 ──そりゃニスも落ちるわ。

「どうしようジューン! レシート捨てちゃった!」

「諦めなさい、本来の用途と違う使い方したんだから返品出来るわけないでしょ!」

 元気の無くなったフレスベルグを連れて、私達は更に一時間以上歩き回った。

「あれェ? 見てー、またカエル」

 さっきと同じカエルと風景。

 パンジーちゃんを見ると、子犬が目を開けている。
 ケルベロスモード待機状態に入っている。

「気を付けて。様子がおかしいわ」

 私はコンビにそう告げて、警戒を促した。
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