85 / 92
アルシア移住
ゴブリンのダンジョン⑧
しおりを挟む
フレスベルグ、転移不発。
私、転移不発。
──魔法は間違いなく、発動している 。
コンビにそれぞれもう一回ずつやってもらう。
「見た感じ、収束、構築、始動までは出来てるわね……」
個々でやり方に差はあるが、魔法というものはざっくり分けると五段階に分けられる。
「──説明、必要かしら?」
「うん! よくわかんない!」
「俺もー!」
私は時空庫から、ホワイトボードを取り出した。
いいえ、パンジーちゃん。
おやつじゃないのよ。
「そんなもん持って歩いてるのに驚愕!」
「あら。便利なのよ? おバカさんに説明するのにピッタリ」
「辛辣ぅ」
私は魔法について、大まかに分類されている項目を、簡単に噛み砕いて書き出した。
・① 収束(Concentration)
魔力を体内で集束・圧縮し、魔法行使のための状態に整える。
(魔力の制御・準備段階)
・② 構築(Formation)
術式や転移座標など、魔法の設計図を魔力で編み込む。
(魔法の骨組みを作る)
・③ 始動(Initiation)
構築した術式に起動の命令を与え、魔力を流し始める。
(スイッチオン段階)
・④ 展開(Deployment)
構築した魔法を現実に広げ、世界へ作用させる。
(魔法効果を「外」に接続する)
・⑤ 発動(Activation)
展開した魔法が実際に効果を発揮し、現象が起こる。
(結果が現れる・転移なら移動が完了する)
「──この④の展開で躓いてるのよ、今の私達」
「何かで阻害されてるってことか?」
「そうね、それか空間自体が閉鎖されてて干渉を受け付けないか」
(──そもそも、普通のダンジョンとは何か違う気がするけれど)
二時間ほど休憩を取り、何度も転移を試みてわかったのはここが『閉鎖空間』ではないことだった。
魔力展開の瞬間に、霧散してしまう。
「──何らかの阻害、で間違いないわね」
私達が考察をしている間、パンジーちゃんはドッグフードを食べて毛布の上で居眠りをしていた。
彼女が疲れてるのは、間違いない。
「何故パンジーちゃんがカエルに干渉できたのかは、だいたい推測がついてるんだけど。まずはこのフロアを離れた方がいいと思うの」
フレスベルグが立ち上がり、ゆるゆるとストレッチ始めた。
「そうだなぁ、ヤベェのはこのフロアだけかもしれないからな」
フレスベルグは私とティティを見て、照れたようにはにかみながら言った。
「今回は俺が先に降りるから!」
(──いや、君、ずっと一番で行ってるよね?)
私達は警戒しつつ、階段を降りていった
五層目(仮)は、爽やかな針葉樹の香りが漂う明るい場所だった。
木の密集している箇所はほとんど無く、光が差し込む雰囲気のいい森林。
本音を言えば、もうちょっとパンジーちゃんを休ませたいところだ。
「転移してみるねェ~! って、やっぱりダメみたい」
ティティは大袈裟に両手を広げ、首を振った。
兎、栗鼠、鹿────
このフロアには『動物』しかいないのかしらね?
魔物は全く見当たらない。
柔らかな落ち葉を靴底で感じつつ、野営に向いてそうな場所を探す。
一時間ほど探索して、少し開けた場所に各自魔導テントを設置。
パンジーちゃんは私のテントがいいらしい。
毛布を隅に敷いてやると、コロリと転がって眠り始めた。
「フレスベルグ、ティティ。私はちょっと周囲を見てくるわ」
魔道具の焚き火風置物に夢中の二人を置いて、私は歩き出した。
──もちろん偵察の意味合いが大きいのは確かなのだけれど。
歩きながら、自分の考えを整理したかったからだ。
(……何かがおかしい。だとすれば──私が考えるべきことは、ひとつ)
森を歩きながら、ぶつぶつと呟く。
「転移が効かない、結界でもない、魔力も正常」
「考えろ、私。……考えるのが、私の生きる理由でしょう?」
(──ここは、本当に、ダンジョン?)
或いは──最初からどこにも無かった場所?
私、転移不発。
──魔法は間違いなく、発動している 。
コンビにそれぞれもう一回ずつやってもらう。
「見た感じ、収束、構築、始動までは出来てるわね……」
個々でやり方に差はあるが、魔法というものはざっくり分けると五段階に分けられる。
「──説明、必要かしら?」
「うん! よくわかんない!」
「俺もー!」
私は時空庫から、ホワイトボードを取り出した。
いいえ、パンジーちゃん。
おやつじゃないのよ。
「そんなもん持って歩いてるのに驚愕!」
「あら。便利なのよ? おバカさんに説明するのにピッタリ」
「辛辣ぅ」
私は魔法について、大まかに分類されている項目を、簡単に噛み砕いて書き出した。
・① 収束(Concentration)
魔力を体内で集束・圧縮し、魔法行使のための状態に整える。
(魔力の制御・準備段階)
・② 構築(Formation)
術式や転移座標など、魔法の設計図を魔力で編み込む。
(魔法の骨組みを作る)
・③ 始動(Initiation)
構築した術式に起動の命令を与え、魔力を流し始める。
(スイッチオン段階)
・④ 展開(Deployment)
構築した魔法を現実に広げ、世界へ作用させる。
(魔法効果を「外」に接続する)
・⑤ 発動(Activation)
展開した魔法が実際に効果を発揮し、現象が起こる。
(結果が現れる・転移なら移動が完了する)
「──この④の展開で躓いてるのよ、今の私達」
「何かで阻害されてるってことか?」
「そうね、それか空間自体が閉鎖されてて干渉を受け付けないか」
(──そもそも、普通のダンジョンとは何か違う気がするけれど)
二時間ほど休憩を取り、何度も転移を試みてわかったのはここが『閉鎖空間』ではないことだった。
魔力展開の瞬間に、霧散してしまう。
「──何らかの阻害、で間違いないわね」
私達が考察をしている間、パンジーちゃんはドッグフードを食べて毛布の上で居眠りをしていた。
彼女が疲れてるのは、間違いない。
「何故パンジーちゃんがカエルに干渉できたのかは、だいたい推測がついてるんだけど。まずはこのフロアを離れた方がいいと思うの」
フレスベルグが立ち上がり、ゆるゆるとストレッチ始めた。
「そうだなぁ、ヤベェのはこのフロアだけかもしれないからな」
フレスベルグは私とティティを見て、照れたようにはにかみながら言った。
「今回は俺が先に降りるから!」
(──いや、君、ずっと一番で行ってるよね?)
私達は警戒しつつ、階段を降りていった
五層目(仮)は、爽やかな針葉樹の香りが漂う明るい場所だった。
木の密集している箇所はほとんど無く、光が差し込む雰囲気のいい森林。
本音を言えば、もうちょっとパンジーちゃんを休ませたいところだ。
「転移してみるねェ~! って、やっぱりダメみたい」
ティティは大袈裟に両手を広げ、首を振った。
兎、栗鼠、鹿────
このフロアには『動物』しかいないのかしらね?
魔物は全く見当たらない。
柔らかな落ち葉を靴底で感じつつ、野営に向いてそうな場所を探す。
一時間ほど探索して、少し開けた場所に各自魔導テントを設置。
パンジーちゃんは私のテントがいいらしい。
毛布を隅に敷いてやると、コロリと転がって眠り始めた。
「フレスベルグ、ティティ。私はちょっと周囲を見てくるわ」
魔道具の焚き火風置物に夢中の二人を置いて、私は歩き出した。
──もちろん偵察の意味合いが大きいのは確かなのだけれど。
歩きながら、自分の考えを整理したかったからだ。
(……何かがおかしい。だとすれば──私が考えるべきことは、ひとつ)
森を歩きながら、ぶつぶつと呟く。
「転移が効かない、結界でもない、魔力も正常」
「考えろ、私。……考えるのが、私の生きる理由でしょう?」
(──ここは、本当に、ダンジョン?)
或いは──最初からどこにも無かった場所?
0
あなたにおすすめの小説
ガチャで大当たりしたのに、チートなしで異世界転生?
浅野明
ファンタジー
ある日突然天使に拉致された篠宮蓮、38歳。ラノベは好きだが、異世界を夢見るお年頃でもない。だというのに、「勇者召喚」とやらで天使(自称)に拉致られた。周りは中学生ばっかりで、おばちゃん泣いちゃうよ?
しかもチートがもらえるかどうかはガチャの結果次第らしい。しかし、なんとも幸運なことに何万年に一度の大当たり!なのにチートがない?もらえたのは「幸運のアイテム袋」というアイテム一つだけ。
これは、理不尽に異世界転生させられた女性が好き勝手に生きる物語。
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~
Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。
うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。
でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。
上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。
——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~
楠富 つかさ
ファンタジー
都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる