前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃

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アルシア移住

フェンリル

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(えぇー……テイムー!)

 私が知っているテイムだと【完全服従】状態の筈なのだけど。
 完全服従させて、使役する。
 これがテイマーとテイムされた動物、魔獣、魔物の関係。
 上半身を伏せ、高々と尻を上げてブンブンと尻尾を振っているパリピ犬はどう見ても、服従体勢ではない。

 私は目に魔力を集めるように集中して、パリピ犬を見た。
 パリピの周囲には、パリピの魔力が見える。
 当然ながら、団長の周囲にも団長の魔力が見える。
 フェンリルの幼体と人間の間にも、なにか魔力っぽい『塊』が見える。

 メロンパンくらいの塊だ。

 私は自分の集中を切らさぬよう注意を払いつつ、その塊の鑑定を試みた。
 これは──フェンリルのお願い……意志なのかしら?
 情報が引っ張れない。
 もっと深く、集中して、うーん……。

 ほぼ無尽蔵と言っていい、私の魔力を相当消費して、喪失感半端ない状態になったものの。
 どうにか『塊』がどういう性質のものか理解する事に成功した。

「殿下、これはテイムでは無いようです」

「確かにそういう雰囲気ではないな。そういうような感覚はあるのだが……」

 団長は困惑して、自分の手を確かめるように眺めている。

「えっと、これはおそらくですが」

 私はわかった事を説明した。

「このフェンリルの子犬は、殿下に契約を持ち掛けているようです。友達、というか相棒?従属ではなくて対等な感じの」

 子犬は尻尾を振っている。

「期限はちょっと詳細に読み取れなかったのですが……多分、貴方がこの世から居なくなるまでですね」

 団長は少し驚いたように眉を上げたが、そのまま尻を上げて待っている子犬を撫でることにしたようだ。
 団長と子犬の魔力が一瞬『塊』を包んだように見えたが、確認する間もなく霧散してしまった。

「フェンリルを鑑定してみましょうか?」

 フェンリル幼生体オス
 11歳
 契約主アルフォンス・グレイシア・アルシア

 ──属性とか他にも色々項目があるが、伝えるべき必要な情報はこれだけでいい。

 団長は鑑定魔法を使えない模様。
 カイさんは簡単な鑑定なら出来るそうだけど、ブロックされて見られなかったみたい。

「契約主がアルフォンス・グレイシア・アルシアとなっていますねぇ」

 どうするんだろうか。

 飼育禁止だよ?フェンリル!
 団長は厳かに状態を説明し始めた。

 なんとなくだがフェンリルら友好の意思を感じると。
 ちなみに撫でた時点で、契約が成立したようだ。

「水を差すようですが、いきなり街に連れ帰るのはダメですからね!」

 カイさんが真面目な顔をして言った。
 なにしろ飼育禁止だものねぇ。

「正確には禁止指定種の一般飼育は不可、だな」

(テイムしている場合は、禁止リストにあっても許可が出ることもあるのね~)

「このような事態になって申し訳ないが」

 団長は本当に困ったいうな顔をして、私に相談を始めた。

 このフェンリルを譲り受けても良いだろうか?
 許可や住居の用意が出来るまで、ここに住まわせておいても良いだろうか?

 ……というような内容だった。

 そうは言っても、飼い主じゃないのよ。

 私はフェンリル達とは契約してないし、もちろん私のものだとも思ってない。
 ただの仲良しさんなのだ。
 ペロティの方をチラっと見てみたが、全く興味がないようで知らん顔だ。
 やっぱりもう親離れの時期なんだろうか?
 メスの子犬も庭の片隅で穴掘りをしていて、見向きもしない。

 王族に恩を売っておくのも悪くないという下世話な気持ちもあり、私は快く団長にもう親離れの時期だから問題はないと伝えた。
 それに家でしばらく保護するつもりだったし、私にデメリットはないのだ。
 詳細は後日、ということでようやく団長と副団長は帰っていった。

 子犬は遠吠えも後追いもしなかったので、ちゃんとお話を理解したのだろう。
 私はいっぱい食べさせて、犬達の健康状態を良くすれば良いだけだ。
 それに国民証もすぐ入手出来そうな流れだし。
 今日は良い日なんじゃないかしら。

 私はペロティをブラッシングしながら話しかけた。

「ペロティ、息子が親離れするってさ。」

 いいんじゃないの、というのがペロティの見解らしい。

 全員にブラシをかけて夕食タイムだ。
 王子様の元に行くなら、このボサボサ感はいただけない。
 毛艶の悪さも毛量のボリューム不足も。
 飢餓が原因だから──もう少し今の生活を続ければ、改善されるだろう。

 幸い、討伐したものの使い途がなくて時空庫に放り込んであった魔物がいっぱいある。
 死にたてフレッシュなやつ。
 あとは魔力水。
 これは本当に美味しくないのだけれど、ペロティは子犬の頃から好きだったし
 魔物とか魔獣には人気の味みたい。
 馬とか猫みたいな魔力を持たない普通の動物には不評。
 たくさん飲めばきっと元気になるんじゃないかな。

 家の中に入り、お気に入りの堅めのソファーにお行儀悪く寝転んで一休みしたい。

「あ"ーーーー疲れたーー」

 この怠さは、魔力を一気に使いすぎたからだろうな。

 この世界の魔法には魔力を使うんだけど。
 魔法自体には設定された数値がない。
 同じ効果の魔法でも、使用魔力は人それぞれ。

 容量が100と30のヒトの場合、30のヒトがバケツに同品質の水を3回入れられるとして。
 100のヒトが同じバケツに10回水を満たせるかというと、答えは否となる。
 5回のヒトもいれば3回のヒトもいるということだ。

 ──30のヒト同士で比較しても、回数が違ったりするんだよね。
 3回満たせるのが平均値だとしても、品質が高くなったり4回、5回とバケツを満たせるヒトもいる。

 魔力容量が少ないから、ダメという事にはならない。

 要は精度と効率。

 名のある魔法使いは、総じて魔力の使い方が上手なヒト達だ。
 自分に合った方法で、魔力を効率的に使う事が出来るって事ね。

 詠唱呪文もそう。
 魔法には詠唱呪文が存在しない。
 自身の魔力を操作するために、勝手にそれぞれ唱えてるだけで……それでリズムを取ってるって感じだ。
 無詠唱のヒトは違うやり方で魔力の操作を行うので、どっちが正解とかそういう問題では無いのよ。

(数値化されてないのが凄く不便よねぇ)

 私だって、ステータスオープン!をしたかったわ。
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