前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃

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アルシア移住

フレスベルグの魔臓

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渋々フレスベルグは自分の時空庫からアイテムを出し始めた。

 二時間後。

「どんぐりなんて何に使うの?木の立て札……これは魔王関係で使うのはおすすめしない……って百枚以上あるじゃないの! あとこの雑草なに? なんで石ころがこんなにあるの!?」

「怒らないって言ったじゃんか!」

「お、怒ってないわ……。この岩七個は必要あるの? このネズミの死骸は?」

「それはペットのハム太郎なんだよ、お別れしたくない!」

「そう、ならハム太郎は戻していいわ」

 フレスベルグは急いでハム太郎をしまった。

「この丸太は何に使うの? 衣類はしまっていいわ、あと書籍類も」

 フレスベルグは急いで衣類と本、書類をしまった。

「この袋に入った砂…全部ただの砂じゃないの!なんで八袋も……食べ物の空き箱……お菓子の包み紙は要らないでしょ、こういうのはゴミ箱に捨てなさいよ。このピカピカ泥団子は宝物なのかしら? 宝物ならしまっていいわよ」

 フレスベルグは急いで泥団子数十個をしまった。

「フレスベルグ。このまま要らないものを処分するか、容量を増やして全部戻すかの二択よ。あなたの魔力なら今の数十倍の容量があってもいいはずなんだから」

 フレスベルグは愁いを帯びた色気のある澄んだ瞳で私を見つめた。
 艶のある真っ黒なストレートロング。
 青みのある紫の瞳、物憂げな雰囲気の整った顔立ちに白い肌。
 黙っていれば、白皙端麗の青年なのに……。

「わかったよ、容量を増やす!」

「じゃあ空き箱とお菓子の包み紙以外、しまっていいわ」

 フレスベルグは急いで荷物を回収した。

(そんなにどんぐりと石ころ大事なのかい?)

 砂とか丸太とかも?
 地面に残ったゴミは、燃やしておこう。

「時空庫の魔方陣出してみて……間違いは無さそう……って名前のスペル間違ってる、ほらここ直して。あとここも直した方が良さそう」

「おお? ちょっと増えた体感はある」

「他人の容量は私にはわからないから、自分で確認するしかないのよ。さて、ちょっと魔臓と魔脈をサーチするわ……って脱がないで! 脱がなくていいから! 
 そのまま立っておいて…」

「魔臟はヒト型だと一センチ未満から三センチくらいのが一個か二個。破壊、欠損したら回復しない。ここまではいい?」

「うん」

「で、血管と繋がっているわけじゃないから……特に場所も決まってないし、何らかの要因で動く場合もある」

「お、おう……」

「魔族やエルフはもっと数があるでしょ、それに人と違って多少傷付いても再生する。あなたも多分十個以上はある」

「ジューンも?」

「似たようなものよ。ここからが大事だから良く聞きなさい。魔臟が離れて位置してた場合、魔臟同士を結ぶラインに魔脈が出来る」

 フレスベルグはノートをとって、真面目に聞いている。

「あなたの場合、パッと見たところ全部近くにある。魔脈が殆んど無い」

「無いとまずい?」

「そうねえ、広い一軒家にコンセントが一個個しかなかったら不便じゃない?」

「そりゃ不便だな」

「家の色んな場所にコンセントがあれば色々出来る。家中に電線があればどこにでもコンセントを設置して、使えるでしょ?」

「そりゃそうだよなー」

「魔脈は電線だと思っといてちょうだい。まあ……子供だとだいたい一ヵ所だから、まとまってても身体に不具合起きるわけじゃないのよ。……大人になるにつれ勝手に魔臟が分散していく筈なんだけど」

「…………」

「魂の年齢は除外しておくけど、この世界に姿は子供だけど成人年齢は過ぎているってヒト見たことあるかしら?」

「ないな……」

 そうなのだ。
 子供の姿をしている者は本当に子供しかいない。
 幼い容姿で実は大人です……ってのはあり得ないのだ。
 なので、フレスベルグは大人で間違いない。

「あなたはどんぐり収集家だとしても、大人よね」

「そうだなー大人だな」

「で、本題なんだけど。魔臟動かさないと魔脈が作られない理屈はわかった?」

「うん、よくわかった」

「普通は人為的に動かせないのだけれど、極稀にそういう固有スキルを持っている医者もいる。魔臟専門医ね」

「お、おう、すげえな?」

「私は固有スキルじゃないけど出来る」

「すごい!」

「なので、今からフレスベルグの魔臟を動かしまーす」

 フレスベルグは怖がりつつ、お願いいたします……と呟いた。



「ふぎゃぁぁぁ! 痛い! 痛いよジューーーーン!!」

「内臓だからね!」

「クッソ、ああああああ痛ぇえええ!! やめ、やめてもうちぬぅぅ!!」

 八時間かけて、フレスベルグの魔臟はいい感じに分散された。
 内緒だけど──魔臟専門医は一個動かすのに数ヶ月かけるのよね。
 フレスベルグは魔族だし頑丈だし、大丈夫。

 地面に転がったまま動けないフレスベルグを見下ろしつつ、聞いてみた。

「ねえ、魔脈が形成されるのにあなただったら数日必要だと思うんだけど、ネモかカルミラの家で静養する?」

「ううーー……い、行くならネモおじさん……」

 私は魔界のネモの家に転移し、事情を説明した。
 驚いたネモは、話を聞いて納得したらしく。

「そういうことならば、しばらく我輩が様子をみておくとしよう。数日経ったら魔脈を見てやればいいんだな?」

「そうね、そういうことでお願い。あとあの子ゴミ捨てないで時空庫に溜め込んでたから、ゴミはゴミ箱にいれなさいって説教よろしく」

「なんと……あれだけ言ってあったのに!」

「魔脈を確認したらもう一回見るから、呼んでちょうだい。じゃあまた」

 ようやく王都到着。
 すっかり夜になっていて、ユーニウスが不満げに飼い葉桶に頭突きしている。
 ごめんね、と撫でて執事長のビスケットをあげて飼い葉桶にたっぷりの草を入れた。

 ソファに腰掛けて、久しぶりにピーネを入れたケヴェを楽しみながら考える。

 ネモもカルミラも魔臟には興味なさそうだから、フレスベルグは見逃されちゃってたんだろうな。
 一ヵ所にドーン!と落とす攻撃魔法なら、魔臟が一ヵ所にまとまってても不具合無かったんだろうし。
 フレスベルグはガサツで不器用だと思ってたんだけど、ちょっと違うのかもね。
 魔脈がないから、不器用だったってことかな。
 まあ、デリカシー無くて考え無しでガサツなのには変わりはないけど。

 私は自分の爪を惚れ惚れと眺めつつ、自分の身体には魔臟が無いのはやっぱり誰にも言わない方がいいな、再認識した。
 私はこの世界で、きっと本当に特殊で異質な存在なんだと思う。
 細胞全てが、魔臟と同じお仕事をしているから。

 爪も髪も。
 つまり無限に再生するし、魔臟を狙う攻撃に関して弱点もない。

 それが幸せかどうかは別の話だけれど。
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