前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃

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アルシア移住

圧倒的アイドル感

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 ミシュティの大きな目は、夜の繁華街のネオンのように青く輝いている。
 黒く縁取られたその瞳は、ぱっちりとしていて神秘的、と言うよりは夏の海。
 鼻は黒くしっとりと艶を放ち、鼻回りはぷっくらと可愛らしく盛り上がり、元気そうなひげがピーン!と伸びている。
 身長は百二十センチくらいだろうか?
 ……白いボディに明るいグレー、ミルクティーの模様がある。
 大きな耳はきれいな正三角形で、先の方にチョロっと飾り毛が揺れている。

 いや、外見ばかりに触れるのはハラスメントだ。
 お手々は真っ白で、コロリとした丸いフォルムで……尻尾は長くてフサフサだ。
 体型はムッチリしていて……もう……。

(触りたい触りたい!)

 ちなみに模様は時々移動するらしい。
 本人達にもわからない理屈で。
 ただ、縞模様になったりハチワレになることはなく、ミシュティの場合は斑が時々移動する程度らしい……。

 私達は冷静に雇用条件について、詳細を詰めていった。
 ・基本、ユーニウスがいるので休日無し
 ・島にはミシュティの家も建てる
 ・休憩は適当に取ってオーケー
 ・三日以上留守にしたい場合は事前連絡
 ・年給は初年度白金貨三枚、次年度四枚
 ・本採用の時に年給は再考。

「この内容ですと、かなり自由時間があると思うのですが……」

 ミシュティが不安そうに耳を倒してこちらを見た。

「そうねえ、朝晩のユーニウスのお世話さえちゃんとしてくれれば、後は好きにしてて良いのよ。島外に遊びに行っても良し」

「はい」

「ただ、島に誰かを呼ぶのは無し。ペットは自由に飼ってもいいけどユーニウスに危険がないようにね」

「はい!」

 契約は締結された。
 私は猫を手に入れ……いえ、ケット・シーと雇用契約を結んだ。

「いつから働けそう?」

「いつでも行けます!」

「じゃあ、工事が始まる四日後に出発してもらおうかしら。飯場を建てるらしいから、そこのコボルト達のお世話ね」

「まあ。私、お掃除もお料理も大好きなんです!お任せください!」


 私はミシュティに支度金としての金貨五枚を上乗せして、白金貨三枚と金貨を手渡した。
 ルイーダにも紹介手数料白金貨一枚を支払った。
 そして、ミシュティと一緒にここ掘れ組を訪問。

「ゴンタさん、この子はうちのメイドのミシュティ。飯場の食事やお掃除に連れていって下さい。あと、この子の好きな場所に好みの家を建ててあげて」

 預託金追加と言うことで、最上級硬貨であるフィアン宝貨を三枚追加。
 超高級店とか、ここくらいしか使い道の無い高額硬貨だ。

「ええ? こんなに? うちは動くお金が大きいから、まあ良いですけど。ケット・シーちゃんのおうちね、予算上限……え、無しでいいんですか?」

「私、小さい家が好きなので豪華なものは要らないです」

 ミシュティが希望を伝える。
 今後のスケジュールとおうちの詳細はゴンタさんに相談して決めるように伝え、四日後の朝にまたここに来るという約束をして、私は一旦辺境の家へ帰宅した。

 メアリだ。メアリの所に行かなければ!


 久しぶりにメアリを訪ねると、久しぶりだね、と歓迎してくれた。
 王都のお土産を渡し終え、いつもの雑談だ。

「……と言うわけでね、ケット・シー用のエプロンを縫って欲しいの。アルバイトって事で」

「子供用の型紙なら残ってるから、エプロンくらいなら作れるよ」

「デザインはシンプルで良いんだけど、レースじゃなくて布を寄せるタイプのフリルが欲しい。細かいのじゃなくて、ゆるい波打つ感じの」

「ふんふん、クラシカルなデザインのメイドエプロンだね?」

 私はアラクネ糸の白生地を一巻き取り出した。
 使いさしだけど、数枚は作れるはず。
 丈夫だし品の良い艶があって、お気に入りの生地だ。

「アラクネ生地かい! こりゃ失敗出来ないね」

 メアリは巻き尺で布を計り、五枚だねと言った。
 高級品だけど、扱いにくい生地ではない。
 メアリはリサイクル服をバラしてサイズ替えで縫い直したり、中々器用なのだ。

「イニシャル入れるかい?」

「そうねえ、Mでお願い」

 五枚のエプロンと小さめワンポイントの刺繍を全部まとめて、金貨一枚でやってくれる事になった。
 せっかくなので刺繍は全部色違いが良いな。
 私はアラクネの染色刺繍糸を、メアリに手渡した。
 赤、緑、オレンジ、黄色、青で。

 エプロンは制服だし、雇用主が用意すべきだ。
 そしてヘッドドレスは要らない。
 あの頭は隠すべきではない。

 メアリの家を出た後は、セバ爺の所からユーニウスを連れていって島で運動。
 ユーニウスはずいぶん可愛がられているようで、運動不足のわりには機嫌がいい。
 馬体も毛もツヤッツヤだ。
 三周走って、水遊びをしてたくさん遊んだ。

 セバ爺の所に戻ると、手が空いたところらしくお茶を出してくれた。
 ヒトを雇ったこと、ユーニウスは違う土地で暮らすのがメインになること……。
 年払いした金額はそのまま持っていて貰って、緊急的に数日預かって貰う事もあるかもしれない、という話をした。

「エエじゃろ」

 セバ爺は頷いた。

「運動させないと魔力が大きいから、過剰症起こす可能性もあるしな、しっかり動ける環境が一番だろうて」

 家に戻り、タマゴサンドを食べつつルイーダから貰ったミシュティのプロフィールをじっくり眺める。

 魔界の家妖精養成学校卒業。

 (家事のエキスパートだね、これは)

 卒業後は家業の魔馬牧場で魔馬の世話、調教助手、カフェの手伝いをしている。
 男性が少し苦手の為、女性雇用主か男性の少ない職場を希望。
 ※本人の苦手意識があるだけで、男性でも普通に応対可能なのは確認済。

 ──これは本当に素晴らしい人材だ。
 しかも可愛い。
 いや、外見をアレコレ言うのはハラスメントなのはわかっている。
 褒め言葉だって、過ぎれば嫌味やプレッシャーに感じるヒトいるしね。
 心のなかで愛でておくに限るわ。
 仲良くなったらちょっとくらいなら触らせてくれる可能性もあるし……。
 猫吸いチャンスもあるかもしれない。

 私はメモ帳に、猫吸い、焦らないときっちり記入した。
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