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アルシア移住
異世人
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異世人達は五人。
若い夫婦と子供二人、青年が一人。
一様に堅い表情を浮かべている。
「え、あー、私は日本語がわかります」
わたしがそう言うと、子供以外の三人が一斉に喋りだした。
私は制止のため手を振って、説明を始めた。
「私は皆さんの質問に答えられません。なにも知らないからです。ただの一般人で、皆さんにこれからどうするのかを説明する為だけに来た通訳です」
さすが日本人、全員静かになった。
「メモを取っても良いですよ、紙とペンは……ああ、お持ちですか。では説明を始めますね。ここはアルシアという王政の国です。そして、ここは地名をグレディスと言いまして。いわゆる辺境、僻地です」
三人がメモを取り終えるのを少し待つ。
勤勉な日本人気質って、こういう時助かるわね。
「皆さんには王都に行っていただく事になっています。通訳は既に出発しているので、途中で合流できます。一ヶ月ほどの馬車の旅になりますが、王都に行かないとどうにもならない事が多いので……」
ご主人が手を上げた。
ああ、お名前を聞いておかなくちゃ。
「質問ですか? どうぞ。わかる範囲でよければ」
「なぜ王都じゃないと、どうにもならないのでしょう?」
「まずここには通訳がいないこと、教師もいないこと、後はこっちの人間の身体と貴方達の身体はちょっと違うので、生活が出来ません。貴方達に最適な道具や家具などは王都にしか無いので、王都に行くのは確定事項です」
「なるほど」
「お名前を記録しておきますね、愛称で良いです。正式な名前は喋れるようになってから伝える方がいいので」
家族の方はショウ、レーナ、マイ、ユウ。
青年の方はグリュックゼーリヒカ、と名乗った。
いや、青年よ、まるっきり日本人だけど?
鑑定したら鈴木春男だし、ベルウッドとかスプリングマンにしときゃいいのに……。
まあ、いいけど。
「この紙に、必要そうな言葉が書いてあります。番号を振ってあるので、番号カードも配りますが、まずはわたしが読み上げますので各自自分がわかるように、訳を書き込んでくださいね」
前以て領主側がピックアップした単語だ。
「一、"はい"、二、"いいえ"……十一、"具合が悪い"………二十六、"お手洗い"……ここからは兵士側から皆さんに伝えたい項目で、四十五、"もうじき宿につく"………五十七、"ここで待っていてください"…………」
六十七項目あるが、みんな文句言わずに書き込んでいた。
命綱みたいなものだからね。
召喚された人と違って、異世人は言語が通じないのが難点よ。
「あ、食べ物にアレルギーとかあります? 伝えておきます」
レーナがホッとしたように、子供が卵アレルギーだと伝えてきた。
「小さい方の子ね? 卵はダメと伝えておきます……ああ、ここにユウ、卵不可って書いておいて貰えます?」
私は公用語でレーナの用紙に卵のことを書き記した。
各自に一々書かせるのは、私が【読める書ける】のは知られたくないから。
私は用心深いエルフなのだ。
まだ色々聞きたそうな異世人達だが、私の仕事はおしまい。
深入りはしたくないのよ。
春男がどうしても確認したいことがある、と頑張るので三十分だけ個人面談。
領主同席だけど。
「質問ってか確認なんだけど」
「はい、知ってることならお教えしますよ」
「この世界に魔法はあるのか?」
「ありますが、異世人には使えないです」
「ええ!? そんなぁ……じゃ、じゃあスキル! チートスキルは!」
「そうですねえ、王都に行けばそういうのを鑑定する専門家がいますね。きっとあちらでわかると思います」
「じゃあ、奴隷制度は? 獣人とかエルフとか居たりする?」
「奴隷は犯罪奴隷ならいますね。ちなみに子供は奴隷になりませんし、親が奴隷になっても身内か孤児院に保護されます。若い女の子は奴隷になりたくないという理由で自主的に娼館にいったりするから、奴隷はほぼ男性ですね」
春男はショックを隠しきれない様子だ。
チーレム狙いなんだろうか?
みんな勘違いして最初はうっきうきなんだよね、特に男性。
「よく聞かれる質問なのですが、獣人は居ますけれど……人間の姿に耳とかしっぽがある訳じゃないです」
「えっ」
「あと、子供に見える大人は存在しないです。子供に見えたなら、それは確実に子供です。子供になんかしたら捕まります」
「…………」
「それと龍や魔物が人語を喋ったり人化することもあり得ないです。強い魔物がわざわざ人になる意味が無いので」
春男はふるふると震え、呟いている。
「異世界って……ロマンが……」
「それと……エルフには関わらない方が良いです。あ、マヨネーズは既に存在してます。唐揚げもポテトも」
「ええ!? エルフは……だって……ケモ耳……ハーレム……合法ロ……」
春男は虚ろな瞳でぶつぶつ呟いている。
春男、異世界に夢見過ぎよ。
かつて私もそうだったよ!
でも現実は世知辛いのさ……。
ステータスオープンも無駄だよ!
「異世界のエルフは存じませんが、こちらのエルフは見たら逃げるべき種族ですよ……これは覚えておいた方がいいです」
その後は領主に丸投げして、帰宅した。
何を話したのか確認されたけれどね。
「グリュックゼーリヒカさんは、魔法があるのかどうか気になってたみたいです」
そう言うだけに留めた。
明日は王都をゆっくり見て回ってのんびり過ごそうと思うわ……。
精神的にぐったりした。
堅実な人もいるけど、日本人は春男みたいに先入観バリバリの人の方が多い。
私もだったけど。
前世も今も女だから、ハーレム願望は無いし、ー理解不能だけどね。
(グリュックゼーリヒカってなんなの。
春男でエエやん)
こっそり鑑定しちゃったけど、家族の方は佐々木さん。
昌平、伶奈、麻衣、悠だった。
帰れるか帰れないかは本当にわからないから、王都でしばらく保護されてから自立かな……?
もう会うことは無いだろうけど、馴染めるといいな。
少なくとも他大陸ではそうだし、アルシアは法律が細かいから異世界転移対応もちゃんとしてあると思う。
(頻回になっているのは、あちこちでスタンピードが起きてる影響だろうか?)
私は帰宅してから、メイの部屋として擬装していた小部屋を片付けた。
ここは辺境に来たときの、ミシュティの部屋にしよう。
ベッドとタンス……家具はこのままでいい。
ミシュティが好きに整えるだろう。
若い夫婦と子供二人、青年が一人。
一様に堅い表情を浮かべている。
「え、あー、私は日本語がわかります」
わたしがそう言うと、子供以外の三人が一斉に喋りだした。
私は制止のため手を振って、説明を始めた。
「私は皆さんの質問に答えられません。なにも知らないからです。ただの一般人で、皆さんにこれからどうするのかを説明する為だけに来た通訳です」
さすが日本人、全員静かになった。
「メモを取っても良いですよ、紙とペンは……ああ、お持ちですか。では説明を始めますね。ここはアルシアという王政の国です。そして、ここは地名をグレディスと言いまして。いわゆる辺境、僻地です」
三人がメモを取り終えるのを少し待つ。
勤勉な日本人気質って、こういう時助かるわね。
「皆さんには王都に行っていただく事になっています。通訳は既に出発しているので、途中で合流できます。一ヶ月ほどの馬車の旅になりますが、王都に行かないとどうにもならない事が多いので……」
ご主人が手を上げた。
ああ、お名前を聞いておかなくちゃ。
「質問ですか? どうぞ。わかる範囲でよければ」
「なぜ王都じゃないと、どうにもならないのでしょう?」
「まずここには通訳がいないこと、教師もいないこと、後はこっちの人間の身体と貴方達の身体はちょっと違うので、生活が出来ません。貴方達に最適な道具や家具などは王都にしか無いので、王都に行くのは確定事項です」
「なるほど」
「お名前を記録しておきますね、愛称で良いです。正式な名前は喋れるようになってから伝える方がいいので」
家族の方はショウ、レーナ、マイ、ユウ。
青年の方はグリュックゼーリヒカ、と名乗った。
いや、青年よ、まるっきり日本人だけど?
鑑定したら鈴木春男だし、ベルウッドとかスプリングマンにしときゃいいのに……。
まあ、いいけど。
「この紙に、必要そうな言葉が書いてあります。番号を振ってあるので、番号カードも配りますが、まずはわたしが読み上げますので各自自分がわかるように、訳を書き込んでくださいね」
前以て領主側がピックアップした単語だ。
「一、"はい"、二、"いいえ"……十一、"具合が悪い"………二十六、"お手洗い"……ここからは兵士側から皆さんに伝えたい項目で、四十五、"もうじき宿につく"………五十七、"ここで待っていてください"…………」
六十七項目あるが、みんな文句言わずに書き込んでいた。
命綱みたいなものだからね。
召喚された人と違って、異世人は言語が通じないのが難点よ。
「あ、食べ物にアレルギーとかあります? 伝えておきます」
レーナがホッとしたように、子供が卵アレルギーだと伝えてきた。
「小さい方の子ね? 卵はダメと伝えておきます……ああ、ここにユウ、卵不可って書いておいて貰えます?」
私は公用語でレーナの用紙に卵のことを書き記した。
各自に一々書かせるのは、私が【読める書ける】のは知られたくないから。
私は用心深いエルフなのだ。
まだ色々聞きたそうな異世人達だが、私の仕事はおしまい。
深入りはしたくないのよ。
春男がどうしても確認したいことがある、と頑張るので三十分だけ個人面談。
領主同席だけど。
「質問ってか確認なんだけど」
「はい、知ってることならお教えしますよ」
「この世界に魔法はあるのか?」
「ありますが、異世人には使えないです」
「ええ!? そんなぁ……じゃ、じゃあスキル! チートスキルは!」
「そうですねえ、王都に行けばそういうのを鑑定する専門家がいますね。きっとあちらでわかると思います」
「じゃあ、奴隷制度は? 獣人とかエルフとか居たりする?」
「奴隷は犯罪奴隷ならいますね。ちなみに子供は奴隷になりませんし、親が奴隷になっても身内か孤児院に保護されます。若い女の子は奴隷になりたくないという理由で自主的に娼館にいったりするから、奴隷はほぼ男性ですね」
春男はショックを隠しきれない様子だ。
チーレム狙いなんだろうか?
みんな勘違いして最初はうっきうきなんだよね、特に男性。
「よく聞かれる質問なのですが、獣人は居ますけれど……人間の姿に耳とかしっぽがある訳じゃないです」
「えっ」
「あと、子供に見える大人は存在しないです。子供に見えたなら、それは確実に子供です。子供になんかしたら捕まります」
「…………」
「それと龍や魔物が人語を喋ったり人化することもあり得ないです。強い魔物がわざわざ人になる意味が無いので」
春男はふるふると震え、呟いている。
「異世界って……ロマンが……」
「それと……エルフには関わらない方が良いです。あ、マヨネーズは既に存在してます。唐揚げもポテトも」
「ええ!? エルフは……だって……ケモ耳……ハーレム……合法ロ……」
春男は虚ろな瞳でぶつぶつ呟いている。
春男、異世界に夢見過ぎよ。
かつて私もそうだったよ!
でも現実は世知辛いのさ……。
ステータスオープンも無駄だよ!
「異世界のエルフは存じませんが、こちらのエルフは見たら逃げるべき種族ですよ……これは覚えておいた方がいいです」
その後は領主に丸投げして、帰宅した。
何を話したのか確認されたけれどね。
「グリュックゼーリヒカさんは、魔法があるのかどうか気になってたみたいです」
そう言うだけに留めた。
明日は王都をゆっくり見て回ってのんびり過ごそうと思うわ……。
精神的にぐったりした。
堅実な人もいるけど、日本人は春男みたいに先入観バリバリの人の方が多い。
私もだったけど。
前世も今も女だから、ハーレム願望は無いし、ー理解不能だけどね。
(グリュックゼーリヒカってなんなの。
春男でエエやん)
こっそり鑑定しちゃったけど、家族の方は佐々木さん。
昌平、伶奈、麻衣、悠だった。
帰れるか帰れないかは本当にわからないから、王都でしばらく保護されてから自立かな……?
もう会うことは無いだろうけど、馴染めるといいな。
少なくとも他大陸ではそうだし、アルシアは法律が細かいから異世界転移対応もちゃんとしてあると思う。
(頻回になっているのは、あちこちでスタンピードが起きてる影響だろうか?)
私は帰宅してから、メイの部屋として擬装していた小部屋を片付けた。
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