前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃

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アルシア移住

いよいよ着工

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 勝手に決めた休暇最後の日は、朝からユーニウスの運動の為にひよこ島へ。
 しっかり走らせ、馬体を水洗いして乾かした後は自由時間。

(この島のほぼ中心地に温泉が出来るとなると──)

 工房は西の端の方なので、自分の家は温泉の東側に建てよう。
 そんなに立派なお屋敷は要らないけどほぼ永久に使うことを考えると、ゲストルームが幾つかあった方がいいだろう。
 出すのは温泉の湯殿まで完成してからでいい。
 工事の邪魔になったら困るしね。

 ユーニウスは好きにしていいと理解したのか、機嫌よくブラブラと歩いて行って何か一心不乱に食べている。
 近くまで行って確認すると、ペパーミントだ。
 ちょっと見ない品種かな?
 ペパーミントはすぐ交雑するし、繁殖力も強いし凄く種類が多いから品種なんて有って無いようなものだけど。

 ユーニウスが夢中になっているペパーミントは、ちょっと甘味があるタイプのようだ。
 ミントの清涼感に混じって微かにプルナに似たフルーティーな香りもある。
 ユーニウスにとっては、オヤツみたいなものだろうか。

 私はペパーミントの群生地に継続的な緩い成長魔法と制限を掛けておいた。
 これ以上増えることは無いけど、食べられちゃっても翌日にはまた生えているようにね。
 ユーニウスのお楽しみは大事にしてやらないと。


「いい気持ちだわ」

 白い砂浜を裸足で歩くのは、の気持ちがいい。
 青い海、白い砂浜。
 空は不思議なラベンダー色。
 私はこの世界が大好き。
 まだまだ楽しんで生きていきたいわ。

 ……そう言えばこの辺りにはリヴァイアサンが棲息してるはずだ。
 まだ生きてると思うんだよね。
 龍種は長生きだから。

 上空に浮上して、海域チェック。
 やっぱり生きてる!
 ひよこ島まで距離があるとはいえ、リヴァイアサンが本気を出したら数分の距離だ。
 雌だからそんなに気性も荒くないし、子育て中でもなさそうだからそんなに警戒しなくてもいいとは思うけど……。

 コボルト達には伝えておいた方がいいかもしれない。
 ミシュティの転移能力がどれくらいか聞いておかないとだ。
 メモにミシュティ、転移能力と記して。
 メモ帳を買いに行こうと思ってたのを思い出した。
 買うなら都会の王都一択だ。
 私はお気に入りを見つけるべく、王都の家に転移して街に繰り出した。


 ぶらぶらと店を見て回るのは楽しい。
 最初のそれっぽい店に入ってみると、ペンの専門店だった。
 エルフのままなので、若干店内に緊張が漂っている。
 済みませんねぇ……とちょっと思いながら見て回る。
 色とりどりでとても華やか。
 ペンは何本か持っているけれど、もう一本くらいあってもいいはずだ。
 主流のタイプは魔力でペンに内蔵されたインクを押し出すタイプ。
 後は純粋に、ペン先の軌跡通りに魔力を焼き付ける魔力ペン。
 これはサインだったり紙に書くタイプの魔方陣の清書に使われる。
 私は補充しなくても使える魔力ペン推し。
 可愛らしいガラスの小花が付いている黄色い魔力ペンを買って、お店を出た。

 噴水広場から南門まで眺めると、雑貨屋さん発見。
 中に入ると奥の方にノートやメモ帳がある。
 仔細に眺めていると、店員さんから声を掛けられた。

「そこにあるメモは全部一点ものでして、人気があるんですよ」

(フランツ!)

 ここはフランツの雑貨屋さんだったのか。

 一点もののメモをジューンが買う。
 エイプリルが無意識にメモを出す。
 フランツ、あれ? そのメモ帳って……?

(ダメだ、これは必ず正体がバレるやつだ)

 私は愛想良く微笑み、また来ますねと言って店から逃げ出した。
 二重生活をしている間は、量産品がいいな。
 気を付けててもうっかりって絶対あるもの。
 次に見つけたお店で一番安いメモ帳を購入し、私はユーニウスを迎えにひよこ島まで戻った。

 遠くから私を見つけたユーニウスは凄いスピードで走ってきた。
 速い。
 勝手に居なくなった私の肩に不満そうに顔を擦り付けてくる。

「ごめんごめん、ほらビスケットあげるから」

 大好物らしい執事長のビスケットを食べさせてから、セバ爺の元へ。
 もちろん自宅に転移してから、ユーニウスに乗って行った。
 私は慎重なエルフだからね。

 商店街の拠点まで徒歩で移動したのだが、途中にある質屋さんが犬の散歩に行くところだったらしく、ゴールデンレトリバーっぽい犬と歩いていた。
 メアリの家の近所にも居る。
 人気犬種だからね。
 もちろん、どっちの犬も絶対私の方を見ない。
 まあ、飼い主もこっちから遠ざかるのに必死みたいだけど。
 数ヶ月も何も問題起こさず過ごしてるのに、まだ怖がられている。
 そろそろ慣れて欲しいなぁ……とは思う。


 ここ掘れ組は朝からバタバタしていたらしい。
 ミシュティは既に到着しており、私を資材置場に案内した。

「ジューン様、こちらがとりあえず一回目に持っていく資材だそうです」

「じゃあ、回収しておくわ。そうそう、ミシュティ。あなたの転移ってどれくらいの規模なのかしら」

「行ったことがあれば、どこでも転移できます。今まで距離のせいで行けなかった場所もありませんし、五十人程度なら一緒に動かせます」

「ええ!? 物凄く優秀よね? ほんとにうちのメイドでいいの?」

「ジューン様のところがいいです。転移は得意なんですけど……実は時空庫が全然ダメで。同じ時空系魔法なのに、私の場合ほぼ転移に全振りみたいで……」

 転移が使えれば、時空庫もセットみたいなものなんだけど。
 ミシュティは転移に特化しているようだ。
 時空庫大きいけど転移が出来ない人も居るから、そう言うことなんだろう。
 マジックバッグを持てば困ることもないし、問題はない。

「容量はどれくらい?」

 ミシュティは恥ずかしそうにモジモジしていたが、小さい声で教えてくれた。

「時間停止型ではあるんですけど……コケットくらいなんです……」

 ニワトリ一羽分!

 マジックバッグを作って持たせれば、全く問題はないからワンコケットでも良い。

「自分の時空庫には私物をいれてね。マジックバッグは後日支給するから、問題ないわ。転移に関しては、私が居ない時のコボルトの移動をお願いすると思うからお願いね?」

「はい! おまかせください!」

 可愛らしいケット・シーは、元気の良い返事をした。
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