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第一章 『始まりの一ヶ月』
10.『チュートリアルの終わり』
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ミノタウロスを倒した帰り道。
既に辺りは暗くなっていた。
俺は魔力切れでしばらく眠っていたようで、師匠におぶられていた。下級魔法を放つほどしか魔力がなかったのに、上級魔法を無理矢理放ったのだ。身体はその大きな疲労感には耐えられない。師匠も隠し技を使って疲れているだろう。メリナはあまり魔法を使っていないので自力で歩けているが、それでも先程の戦いで体力を多く消耗しているのは皆、同じだ。
王城に着いたのは八時を回る頃だった。
ユミたちが俺たちの帰りが遅いことに心配して捜索隊を出そうとしていた時だった。
魔力が枯渇していた俺と師匠はすぐに医務室へ運ばれた。メリナも検査を受けたが、大きな外傷は見られず、客人として客室へと案内された。
そして今は翌日の朝。
俺は外傷が多かったが、国の優秀な治癒術師の治癒魔法で今では昨日の戦闘が嘘のように傷が癒えていた。大きな疲労感は治癒魔法ではかき消えなかったのは仕方がない。
メリナは早朝に自分の店に戻り、俺が起きた時には既にいなかった。俺が起きたのは十時だったが。師匠は魔力を使い果たしたようで王城の客室で眠っている。
朝早く、国王が王の間に集まるよう、勇者に収集をかけた。もちろん、俺は遅れた。
「今回、集まってもらったのは他でもない。ユウヤくんがボスモンスター、ミノタウロスに接敵したことだ」
国王がいつにも無く、真面目に話す。国王が真面目に話すときは内容が重要なことであるときだけだ。それが今だ。
「本来、ミノタウロスは王都近くのダンジョン内に潜んでいるモンスターで滅多に外には出てこない。それが森にまで出てきた」
「それって、つまり?」
アカリが国王に尋ねる。
「魔王軍の幹部が近くに来てるということだ」
国王が重々しく答え、爪を噛む。
周りからはどよめく声が聞こえる。
魔王軍幹部は聞いた話だと、王都近くの関門を占拠し、そこに駐留している。あの森は関門から少し離れたところだ。
あとは国王が言ったのと同じ。幹部が王都に近づいている。
「ミノタウロスが幹部の魔力に反応し、外に出てきたというのが今回の原因だろう。自分より上のもの恐れるのはどの生き物も共通する性質だからね」
「幹部が攻め込むのは間近ですか。それまでにできるだけ戦力を固めないといけませんね」
リツが今すべきことを簡単にまとめた。
リツの言う通りだ。戦力が足りない。ましてや、俺は昨日、ミノタウロスと戦闘を繰り広げた。治癒魔法は傷は回復しても、体力は戻らない。師匠も寝たきりだ。
幹部に対抗できる大きな戦力が二つも削れた状況だ。魔王軍が攻め込むには絶好の機会だ。
なんとか戦力を集めないといけない。
「そうだ、ユウヤくん。今、街の魔道具店の方に滋養効果のある漢方薬を頼んでるんだ。そこなら、ユウヤくんの体力も治ると思うよ」
「あ、それならユウヤ。キミ、この前女の子を助けただろ? そのときにその子からもらった地図を頼りに行けばいい。今日、城内にいたからそのときにお願いしておけば良かったな」
(その漢方薬の魔道具店ってメリナの店か。なら、俺が出向かないとな。昨日、メリナがいなかったら死んでたかもしれないし)
昨日の戦闘を思い出す。師匠が上級魔法を放ち、メリナが足止めをする。そこに俺が魔法を放つ。
おそらく、メリナがいなければここまでウマくはいかなかっただろう。メリナが氷柱でミノタウロスを撹乱して、その欠片がミノタウロスの足止めをした。メリナの機転の効いた足止め方法だった。
このお礼を言いたい。ただ一心だ。
「それじゃ、戦力回復も期待できるし、次の話に移ろっか」
「幹部の話だけじゃなかったのか?」
「実はもう一つあってね。まぁ、これも幹部に関することではあるんだけどね」
国王がスコットさんに資料を渡され、それを俺たちに見せる。
「これは今、この国を騒がせてるS級犯罪者の三人の情報だ」
S級犯罪者という聞き慣れない単語を出してきた。
文字を見るだけでも普通の犯罪者ではないことはわかるが。
「S級犯罪者というのはこの国で最も出没率、犯罪件数の高い犯罪者のことを指すんだ」
「そいつらがなんだって言うの?」
「実は勇者たちには魔王軍以外にもこの三人を捕まえてほしいというのもあるんだ」
国王が勇者の仕事と無縁の要求をしてくる。
おちゃらけた国王にしては珍しい。
「そういうのは衛兵とかにやらせればいいだろ。なんで幹部と対峙するのに他のことに手を回さなければならねぇんだ?」
「まあまあ、よく聞いてくれたまえよリュウジくん。コイツらは国の衛兵じゃ歯が立たなくてね。ついで程度でいいからやってくれたら嬉しいんだ」
別に俺たちはそこまで急ぐ必要はない。ゲームでもメインクエストさえ進めていれば、サブクエストも達成なんて必要ではない。
だが、それは人によって変わってくる。
サブクエストもクリアしてコンプリートを目指す者もいる。それがゲームだ。
これの場合は違ってくる、俺たち仲良し三人組はいいとしても、他の勇者たちが前の世界に残してきたものがあるかもしれない。
ゆっくり進めてもいい俺たちと早めに終わらせたいかもしれない他の勇者たち。ここをどう動くかが今後の展開にも深く関わってくる。
「一応、紹介はしていくね。まずは……」
ここから長い説明が続いた。
一人目の連続殺人鬼『赤フクロウ』は特定の夜にしか現れず、音を立てずに獲物を狩り、その返り血を浴びているところから付けられた名前だ。これまで被害に遭った人数は数十人。三人のS級犯罪者の中で早めに捕まえておきたいそうだ。
二人目が怪盗『黒ウサギ』。ウサギのようにすばしっこく、黒衣に身を包んでいることから付けられた名前だ。世界各国の高価な魔道具を盗んでは威力を弱めた安価な物に変えているという非常に迷惑な奴だ。
三人目は爆弾魔『青ガラス』。あらゆる施設を爆破し、ものが崩壊していく様を見るのが好きという変態だそうだ。青、正確には紺の瞳をしており、カラスの生態である様々な場所に適応するところが似ており、様々な場所で目撃されるところから付けられた名前だ。
と、長々と語られた。
今後、敵対する可能性もあるので、気を付けてくれ、とだけ言われたが、どれも会いたくない気もする。わけはわからないが。
「まぁ、今はユウヤくんは漢方薬を取りに行って、他の勇者たちは幹部や犯罪者の情報集めってことにしよう。では、解散」
まだ、色々とわけのわからないことが多いが、これから本番戦が始まることになるのだろう。
既に辺りは暗くなっていた。
俺は魔力切れでしばらく眠っていたようで、師匠におぶられていた。下級魔法を放つほどしか魔力がなかったのに、上級魔法を無理矢理放ったのだ。身体はその大きな疲労感には耐えられない。師匠も隠し技を使って疲れているだろう。メリナはあまり魔法を使っていないので自力で歩けているが、それでも先程の戦いで体力を多く消耗しているのは皆、同じだ。
王城に着いたのは八時を回る頃だった。
ユミたちが俺たちの帰りが遅いことに心配して捜索隊を出そうとしていた時だった。
魔力が枯渇していた俺と師匠はすぐに医務室へ運ばれた。メリナも検査を受けたが、大きな外傷は見られず、客人として客室へと案内された。
そして今は翌日の朝。
俺は外傷が多かったが、国の優秀な治癒術師の治癒魔法で今では昨日の戦闘が嘘のように傷が癒えていた。大きな疲労感は治癒魔法ではかき消えなかったのは仕方がない。
メリナは早朝に自分の店に戻り、俺が起きた時には既にいなかった。俺が起きたのは十時だったが。師匠は魔力を使い果たしたようで王城の客室で眠っている。
朝早く、国王が王の間に集まるよう、勇者に収集をかけた。もちろん、俺は遅れた。
「今回、集まってもらったのは他でもない。ユウヤくんがボスモンスター、ミノタウロスに接敵したことだ」
国王がいつにも無く、真面目に話す。国王が真面目に話すときは内容が重要なことであるときだけだ。それが今だ。
「本来、ミノタウロスは王都近くのダンジョン内に潜んでいるモンスターで滅多に外には出てこない。それが森にまで出てきた」
「それって、つまり?」
アカリが国王に尋ねる。
「魔王軍の幹部が近くに来てるということだ」
国王が重々しく答え、爪を噛む。
周りからはどよめく声が聞こえる。
魔王軍幹部は聞いた話だと、王都近くの関門を占拠し、そこに駐留している。あの森は関門から少し離れたところだ。
あとは国王が言ったのと同じ。幹部が王都に近づいている。
「ミノタウロスが幹部の魔力に反応し、外に出てきたというのが今回の原因だろう。自分より上のもの恐れるのはどの生き物も共通する性質だからね」
「幹部が攻め込むのは間近ですか。それまでにできるだけ戦力を固めないといけませんね」
リツが今すべきことを簡単にまとめた。
リツの言う通りだ。戦力が足りない。ましてや、俺は昨日、ミノタウロスと戦闘を繰り広げた。治癒魔法は傷は回復しても、体力は戻らない。師匠も寝たきりだ。
幹部に対抗できる大きな戦力が二つも削れた状況だ。魔王軍が攻め込むには絶好の機会だ。
なんとか戦力を集めないといけない。
「そうだ、ユウヤくん。今、街の魔道具店の方に滋養効果のある漢方薬を頼んでるんだ。そこなら、ユウヤくんの体力も治ると思うよ」
「あ、それならユウヤ。キミ、この前女の子を助けただろ? そのときにその子からもらった地図を頼りに行けばいい。今日、城内にいたからそのときにお願いしておけば良かったな」
(その漢方薬の魔道具店ってメリナの店か。なら、俺が出向かないとな。昨日、メリナがいなかったら死んでたかもしれないし)
昨日の戦闘を思い出す。師匠が上級魔法を放ち、メリナが足止めをする。そこに俺が魔法を放つ。
おそらく、メリナがいなければここまでウマくはいかなかっただろう。メリナが氷柱でミノタウロスを撹乱して、その欠片がミノタウロスの足止めをした。メリナの機転の効いた足止め方法だった。
このお礼を言いたい。ただ一心だ。
「それじゃ、戦力回復も期待できるし、次の話に移ろっか」
「幹部の話だけじゃなかったのか?」
「実はもう一つあってね。まぁ、これも幹部に関することではあるんだけどね」
国王がスコットさんに資料を渡され、それを俺たちに見せる。
「これは今、この国を騒がせてるS級犯罪者の三人の情報だ」
S級犯罪者という聞き慣れない単語を出してきた。
文字を見るだけでも普通の犯罪者ではないことはわかるが。
「S級犯罪者というのはこの国で最も出没率、犯罪件数の高い犯罪者のことを指すんだ」
「そいつらがなんだって言うの?」
「実は勇者たちには魔王軍以外にもこの三人を捕まえてほしいというのもあるんだ」
国王が勇者の仕事と無縁の要求をしてくる。
おちゃらけた国王にしては珍しい。
「そういうのは衛兵とかにやらせればいいだろ。なんで幹部と対峙するのに他のことに手を回さなければならねぇんだ?」
「まあまあ、よく聞いてくれたまえよリュウジくん。コイツらは国の衛兵じゃ歯が立たなくてね。ついで程度でいいからやってくれたら嬉しいんだ」
別に俺たちはそこまで急ぐ必要はない。ゲームでもメインクエストさえ進めていれば、サブクエストも達成なんて必要ではない。
だが、それは人によって変わってくる。
サブクエストもクリアしてコンプリートを目指す者もいる。それがゲームだ。
これの場合は違ってくる、俺たち仲良し三人組はいいとしても、他の勇者たちが前の世界に残してきたものがあるかもしれない。
ゆっくり進めてもいい俺たちと早めに終わらせたいかもしれない他の勇者たち。ここをどう動くかが今後の展開にも深く関わってくる。
「一応、紹介はしていくね。まずは……」
ここから長い説明が続いた。
一人目の連続殺人鬼『赤フクロウ』は特定の夜にしか現れず、音を立てずに獲物を狩り、その返り血を浴びているところから付けられた名前だ。これまで被害に遭った人数は数十人。三人のS級犯罪者の中で早めに捕まえておきたいそうだ。
二人目が怪盗『黒ウサギ』。ウサギのようにすばしっこく、黒衣に身を包んでいることから付けられた名前だ。世界各国の高価な魔道具を盗んでは威力を弱めた安価な物に変えているという非常に迷惑な奴だ。
三人目は爆弾魔『青ガラス』。あらゆる施設を爆破し、ものが崩壊していく様を見るのが好きという変態だそうだ。青、正確には紺の瞳をしており、カラスの生態である様々な場所に適応するところが似ており、様々な場所で目撃されるところから付けられた名前だ。
と、長々と語られた。
今後、敵対する可能性もあるので、気を付けてくれ、とだけ言われたが、どれも会いたくない気もする。わけはわからないが。
「まぁ、今はユウヤくんは漢方薬を取りに行って、他の勇者たちは幹部や犯罪者の情報集めってことにしよう。では、解散」
まだ、色々とわけのわからないことが多いが、これから本番戦が始まることになるのだろう。
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