あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第九話 中層進出 その4

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 戦闘開始後、およそ四半刻。
「ネイサンッ。浄化の魔法、もう一回出来るッ!? 」
 リズ姉が切羽詰った声で、ネー姉に問いかける。
「ハァハァ、ちょっと待って、まだミストが回復してない~」
 ネー姉が、息を切らせながら答える。
「アイリス、ちょっとこっちを手伝うといいッ」
 赤姉が振り向く事も出来ずに聞いてくる。
「無理、こっちも大物が来てるのッ、セイッ」
 アイ姉が魔物と斬り合いながら答える。
 ウーン、意外とまずいかなあ。と、オレはここに四人の姉ちゃん達を連れてきたことを少しだけ後悔した。

 最初に、ネー姉の浄化の魔法で、約二十体の【スケルトン】を骨にしたお姉ちゃん達は、残り十体ほどを、リズ姉が槍、赤姉が大剣を振り回し、オレとアイ姉は精一杯応援しながら、順調に倒していったんだけど……。
 その群れを倒しきろうかというその時、急激に新たな【スケルトン】の群れが、奥の穴から沸いて出た。
 リズ姉と赤姉の、【スケルトン】の群れを倒すペースが少し遅かったようで、これが躓きの始まりだった。
「ネイサン、浄化の魔法をもう一回」
 魔物に押され始めたリズ姉が、形勢逆転を狙ってネー姉に魔法の援護を求めたんだけど、
「え、今? わ、わかったわ~」
 と、あわてて詠唱した浄化の魔法は、最初の魔法ほどの威力はなく、かなりの数の【スケルトン】を残してしまった。
「も、もう一回ッ! 」
 そりゃ無茶だろ。ベテランだって連発はきつい。だから、
「今すぐは無理~」
 やっぱりね。
 後はもう、【スケルトン】達に追い込まれまくっている状態だ。
「アイリス、はやくこっち! 」
「あたしも、それどころじゃない! 」
 一方、背後を守るアイ姉にも魔物が押し寄せていた。
 最初は、二足歩行のウサギの魔物【ラビットウォカー】が現れるだけで、簡単に退けていたが、突然大物が現れた。
 サイの魔物【サイノクラス】だ。
 サイは鼻の先の皮膚が角質化して硬く尖って角となるが、【サイノクラス】は皮膚全体が角質化し、肩にも尖った角が複数あるのが特徴だ。
 そしてそれをアイ姉の細剣で倒すのは至難の技だ。
 細剣で倒すとしたら、突進してくる【サイノクラス】をギリギリまで引き付ける勇気、弱点である目や口内、喉元をピンポイントで切りつけるか、皮膚に対してはほとんど垂直に剣を突き刺す高度な技術が必要だ。
 中層初心者のアイ姉が細剣で戦うのはちょっと荷が重すぎたようだ。
 剣を突き刺そうとしたものの角度が悪く、愛剣が真ん中からポッキリ。
「アーーーーッツ!! あたしの愛剣“ミーティア(流星)”がッ! 」
 【サイノクラス】の皮は確かに硬いし、アイ姉の腕がイマイチだったとしても、それでもこうまで簡単に折れてしまうとは、剣が安物過ぎる気がする。
 名前付けるほどの剣か? その安物。
 アイ姉の悲劇に気づいたネー姉が、とっさにフォローに入って【サイノクラス】の相手をする。そして、横目でその惨状を見て愚痴をこぼす。
「アイちゃ~ん。だからさっさとまともな剣に買い換えれば良かったのに~」
 どうやら以前から問題のある剣だったようだ。
 ネー姉は魔法を打てないので今は短剣で戦っている。短剣でも大変そうだが、アイ姉みたいに武器が無いよりかはましだな。
「だってお金なかったんだもん。だれか余った武器貸して~」
「「「余分は無いッ」」」
 みんな貧乏でサブウェポンはないようで、情けない言い訳をするアイ姉に他のお姉チャンたちの声は冷たい。それを聞いたアイ姉が半泣きでオレを見つめる。
「JJく~ん、なんか武器ないの~」
「う~ん、あるとすれば、弓かオレの片手剣かあとはナイフだけだけど。アイ姉使える? 」
 オレは一応、マジックリングから取り出した弓と剣を、アイ姉に差し出す。
「失礼ね、JJくんが使えるなら、私だって――ッ!?」
 アイ姉はオレからひったくる様にして片手剣を受け取る。が、その重さに驚きすぐに顔をしかめる。
 刃渡り、柄の長さは片手剣で間違いないが、その身幅は大人の手五本の指ほどの幅がある、つまりファイブフィンガードソードだ。さらに肉厚でかなり重い。斬るというより鉈や斧のような斬撃用の武器のように叩き斬るように使う剣だ。
 それでいて柄の長さは両手剣ほど長くないので、両手で持とうとしても持ちづらく扱いづらい。
「け、剣は無理、アホみたいに重すぎ。弓だったらいけるかな」
 元もと、腕の力がないから細剣使ってるって言ってたしね。アイ姉が片手剣を突き返して弓を奪い取る。
 弓は赤姉の使っていたケイロンボウコレクティオ。
 弦を放す時に胸をこするので女性なら胸当てが必須になる。アイ姉はライトアーマーの胸当てをつけているので問題はなさそうだ。無くても問題なさそうな大きさだけどね。
 などと不用意なことを思っていたら、
「キミ、なにかすっごく失礼なことを考えていない? 」
 おおっと、読心術のスキルか何かあるのか? 
「そうじゃなくって、この弓、かなり腕の力が必要なんだよ。引ける? 」
 咄嗟にごまかす。
 元の持ち主はヴィリス族のジェシカだ。
 ヴィリスは体格的には痩身で腕も細いが、見た目に反してその筋力は強い。パッシブで筋力強化スキルがあるらしい。この弓も腕の力が強くないとまともに弦を引くことは出来ない。
「う、ぎぎぎぎぎぎ……」
 赤姉が簡単に引いていたので、自分でも出来ると思っていたんだろうな。
 アイ姉にはこの弓は使えなかった。
 ナイフは短すぎてサイノクラス相手では論外だ。
 こうして、アイ姉は武器を失い、ネー姉はかろうじて短剣で戦っているが、【サイノクラス】の動きを牽制しているだけで勝てる見込みは無い。
 赤姉とリズ姉が【スケルトン】を殲滅してネー姉を助けない限り【サイノクラス】は倒せないだろう。
「しかたないな、即席のメイスだけど使ってみる? 」
「メイス!? あるならちょっと貸して――って、骨ッ!? 」
 オレの手渡した武器を見て、アイ姉の言葉が途切れた。そう、メイスって言ってるけど単なる骨だ。
 ネー姉が浄化した魔獣【スケルトン】の大腿骨を拾って、その端に滑り止めの革紐を巻いただけ。長さ一マイトル程の即席メイスの出来上がりだ。
 それでも、魔獣の骨はミストを込めると打撃力が上がり、また骨そのものの強度があがったりして中々便利な武器になる。実際に武器をなくした冒険者はたまにやるんだよね。
「まあ、これも重いけど、両手で振り回せるよ」
「もうヤケクソよッ!」
 アイ姉は即席メイス持って、【サイノクラス】へ突進する。

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