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出禁 第九話 中層進出 その5
しおりを挟む「まあ、これも重いけど、両手で振り回せるよ」
「もうヤケクソよッ!」
アイ姉は即席メイス持って、【サイノクラス】へ突進する。
「アイ姉! その武器は【サイノクラス】にはあまり有効じゃないよ、【スケルトン】に使って! 」
「それを早く言いなさい! 」
アイ姉は即座に反転してリズ姉たちの元へ向かう。非力な彼女は重たい即席メイスを両腕で振り回す。まあ今日のところはこれでいいか。
「ちょ、アイリス行かないで~、JJく~ん、助けて~」
ネー姉が半泣きでオレを見つめる。
まあサイの魔獣を短剣だけで相手するの無理だよな。
本来は【サイノクラス】のような皮が厚い、体格のいい魔獣は大きめの戦斧か大剣の斬撃武器、もしくは魔法で攻撃する方がいいのだが、生憎と大剣を持つ赤姉は【スケルトン】を相手に苦戦していて、こちらに来る余裕はなさそうだ。
「ここまで連れてきた責任もあるからな」
オレは仕方なく、自分の剣を握り締めて前に出た。サイノクラスはちょっと様子見で離れた所で立ち止まる。
「これからの事はこのパーティだけの秘密ね」
「へえ!? 」
半泣きで、オレの横に立ったネー姉が不思議そうな顔でオレを見るが、オレはスルーして精霊にささやきかける。
「わが呼びかけに応じ、憑依せよ<タロス>」
精霊使いのオレの切り札の一つだ。
精霊使いの戦い方は、普通は精霊や妖精に自分のミストを与え魔法を使わせる。
色々な精霊や妖精と契約できれば、普通の魔法使いには使えない様々な魔法が使えるのだが、それでも精霊に魔法をつかわせるだけだと近接戦闘が出来なかったり、連発出来なかったり、緊急の時に間に合わないなどデメリットも多い。――まあ、これは普通の魔法使いも一緒だけど――、だから精霊使いのオレも、基本的にはソロには向かない。
中層くらいは問題ないが、下層で闘うには不安があった。そのためオレは精霊にこの身体を貸し与え、精霊の力を使って剣で戦うことが出来るように、精霊と特殊の契約をした。コレこそがオレ独自の精霊魔法だ。
この切り札を手に入れたことで、オレはソロでも下層でも戦えるようになったのだ。
今回は体が小さくなってこの切り札が使えるか、試してみたくてやってみた。
オレが一瞬目を瞑ると、身体の中に何かが、何ともいえないゾクリとする何かが入ってきてオレは身震いをする。
『久しぶりに呼ばれたと思ったら、今回の獲物は【サイノクラス】か、小物だな』
『まあちょっと事情があってね、次は大物の時に呼ぶよ』
『かまわん、それよりもっと我を呼ぶのだ』
心の中に何かがささやきかけてくる。これが幻獣<タロス>だ。
ちゃんと使えそうだな。
オレの見た目は全然変わらないが、力がみなぎってくるのが分かる。
<タロス>は精霊や妖精というよりも巨人族の幻獣だ。その力はすさまじい。
『「ハッ! 」』
突進してくる【サイノクラス】に対し、こちらからも跳躍して間を詰め、接敵直前でサイドステップ、【サイノクラス】の突進を避け横に回りこみ、抜く手も見せずにファイブフィンガードソードをその首に叩き込む。
オレの横を数歩通り過ぎた後、サイノクラスの首がぽとりと落ちる。
なぜ、オレがこの鉈のように重く身幅のある片手剣を使っているかといえば、この幻獣<タロス>の怪力に耐えられる剣が必要だからだ。
大剣や戦斧でも良かったのだが、ダンジョンの狭い通路では大剣は取り回しが難しく、また戦斧にしても重さ大きさ値段的に丁度いいものが無かった。
サイノクラスを片付けたオレはネー姉を振り返る。
ネー姉はオレの戦闘を見て口ポカン状態だ。
「ウサギが来たら、それはお願いね」
「……(コク)」
「【サイノクラス】がまた来たら教えてね」
「……(コクコクコク)」
ネー姉が無言で頷く。
大物が――といっても<タロス>には小物だが――居なくなったので、背後の守りはネー姉に任せて、オレはリズ姉、赤姉、アイ姉の元へ赴く。
元もと斬撃で使えるような剣なので、【スケルトン】相手の攻撃も得意だよ。
「お姉ちゃん達お疲れ様。ちょっと休んでていいよ」
そう言ってオレは、ボンコレクターと化すべく、【スケルトン】の群れへと踊りかかった。
『「ハッ! 」』
ダークミストの影響で強度の高くなった骨たちを、一振りで只の骨くずにして、瞬く間に動く骨はいなくなっていく。
「うっそ」
「信じられない」
「デタラメだ」
アイ姉、リズ姉、赤姉の三人のお姉ちゃん達が呆然とオレの戦いを見ている。
リズ姉たちが散々てこずっていた三十体を超える【スケルトン】を、オレは一分とかからず只の骨に変えてやった。
まあ、オレの力じゃなく幻獣<タロス>の力だから自慢にもならないんだけどね。
幻獣<タロス>がいれば下層深層も目ではないと思うのだが、実は欠点もある。<タロス>を憑依しておけるのは、せいぜい大ロウソク五本分(大ロウソク二十四本で丸一日)くらいだ。そして次に呼べるのは丸一日後。
つまり、朝召喚してお昼まで戦ったら、身体から離れてしまう。そして翌日の昼過ぎまで召喚出来ないのだ。下層、深層は広いから日帰りで攻略できるような所じゃない。仲間がいるとか、他にも下層で戦える違う精霊とか、作戦や工夫がないと、とてもじゃないが下層ではやっていけない。
少し休んで態勢を整えた三人の姉ちゃんは、その後散発的に発生する【スケルトン】を各個撃破でたおしていく。これは安心して見ていられた。
背後にでてくる【ラビットウォカー】はネー姉が倒し、たまに大物が来た時だけ、オレが<タロス>の力で倒した。
こうしておよそ一刻ほど、お姉ちゃん達とオレはボーンコレクターと化して休みもなく戦い続けた。
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