あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第十一話 ギルドの緊急クエスト その2

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「あら!? エリザベスさん、今日はけっこう戦果ありますね」
 オレがアーティファクトの腕輪から出した素材を、さもリズ姉が持ってきたようにギルドのカウンターに出した。その素材の数々を見て、ギルド受付嬢のレベッカが嬉しそうに言う。
「ええ、まあね。ちょっとガイドを雇ってね。そのおかげかな」
 レベッカが嬉しそうに言ってくるので、リズ姉はてれたように鼻の頭をかきながら、言葉を濁した。オレのような子供に戦闘を手伝ってもらったとは言いにくいのだろうな。
 公には十五歳未満の未成年はダンジョンの出入りは禁止されている、シェルパであれば一応入っても良い事にはなっているが、それでも本来は戦闘禁止である。
 だからオレはカウンターの下で、レベッカには見えないように隠れて話を聞いている。
「ヒャッハ~♪ いよ~愛しきエリーちゃん。今日は大量の骨持ってんじゃン、どうしちゃったのかな~」
 そんな時、横からリズ姉の骨を手に取って声をかけてきた男がいた。リズ姉はそいつを見て眉根を寄せるが、当の本人は気づかずにご機嫌だ。
 いつも魔物の特異発生ポイントを横取りしようと、オレ(ジーン)の後を付回していた奴、オレが出禁になったときもいた男だ。名前は確か……ヒャッハー?
「エリーちゃんは相変わらず色っぽいんだな」
「他の三人はいないのか、よくわかんないけど」
 そしてその取り巻きのAとBとC。
「ちょっと、エリーとは呼ばないでって、いつも言ってますよね」
「え、そうだっけ。わりいわりい、でもエリーちゃんってカワイイよね、名前も顔も」
 『わりい』と言いながら全然悪いと思っていないヒャッハーのニヤけた顔つき。リズ姉の表情がさらに曇る。
「ヒアー・ハートさん、換金前の素材です、勝手に持っていかないでください」
「まさか、横取りとかするわけないじゃん、レベッカちゃんも人聞き悪いな~」
 ヒャッハーじゃなくって、ヒアー・ハートだつたか。もうヒャツハーでいいんじゃないか?
 ヒャツハーが無造作に弄んでいた骨を、レベッカは奪い取るように取り返し、さっさと査定するため、大量の素材を入れたカゴを引きずって奥に引っ込んでしまった。
 レベッカもリズ姉もコイツの事はあからさまに嫌いなようだが、こいつは気が付かないのか、ずっとニヤニヤしている。
「でもよ、あんな大量に骨があるって事はよ、早くも中層デビューってか。さっすがオレのエリーちゃん、ヒャッハー! 」
「ちょっ、声大きい、やめてくださいよ」
 リズ姉はヒャッハーが大声を立てるのを制止するが、そいつは聞く耳を持たない。
「でもさ~、こっからが大変なんだぜ。中層は魔物も強くなって来るんだ。準備は出来てるのか。いろいろアドバイスしてやるぜ~。オレ達ゃこのギルドで唯一十五階層まで潜ってる。つまりオレ達がこのダンジョンで一番中層に詳しい、最強のパーティってわけさ」
 今はな――、とオレは心の中で付け足す。
 オレがこのギルドを出禁になる前は、二十階層までは一人行っていた――割に合わないからやめたけど――。パーティー『鬼殺し』に入っていた時はもっと深くまで潜っていた。
 最近は、九階層に【マッドキャタピラ】の特異沸きスポットを見つけたのでそこに入り浸っていたが。
 まあ、オレが一番深くまで潜っていたし、一番詳しいのもオレだ。
 しいて言うなら、以前のパーティーメンバーのジェシカやギルマスたちの方が詳しいかも。……いや、あの脳筋バカのギルマスは絶対覚えていないな。ジェシカも現役じゃないし、他のメンバーは散り散りになって他のダンジョンに移ったり引退したりしてるから、実質一番詳しいのはやはりオレだ。
 などと思っていたら、ヒャッハーの仲間も乗ってきた。
「これから中層メインなんだな。だったらオレら『モブキラーズ』と一緒に行こうなんだな」
 ヒャッハー達のパーティ名『モブキラーズ』って言うのか。ザコ狩り専門パーティなのだろうか。
「そうだな、合同パーティで一緒に潜れば色々アドバイスしてやれるんだな。なあヒアーもそれがいいだろ、よくわかんないけど」
「ああ、色々教えてやるぜ、朝も昼も、その後夜もな」
「地下でも、地上でも、ベッドでも、だぜい」
「けっこうです……」
「まあそういうなって、オレに任せときゃエリーの親父の事も、ネイサンの兄きのことも考えてやるぜ。な」
 リズ姉の親父にネー姉の兄貴ねえ。弱み握られてる感満載だな。
「はあ……他のみんなが何ていうか――」
「問題ないって」
「「ヒャッハーッ!! 」」
 リズ姉が明確な断り文句を言わないばかりに、コイツら賛成してくれたと勘違いして喜んでいる。
 明らかに嫌がってんだろ。気づけよ。
 そろそろリズ姉が可哀相になってきた。子供の姿であまり目立ちたくないが、なんとか助け舟を出してやれないかなと思っていると、
「ちょっと、そこで何してるのよ! 」
 なんだか怒っている受付嬢の叫び声がする。
 そうだ、ヒャッハーに言ってやれ、人に迷惑をかけるなと。
「人の男にナニ手を出してるのよ」
 そっち?
 ヒャッハーに怒ってるのかと思ったら、リズ姉に対して怒っていた。しかもリズ姉が手を出したと勘違いして。
 カウンターから顔半分出して見てみると、キツイ香水がプンと匂った。あの勘違い受付嬢ニーナ。こいつヒャッハーの彼女だったのか。
「え? いや別にそんなことは……」
 突然の言いがかりに、戸惑ったリズ姉が言いよどんでいると、言い訳したと受け取ったニーナがさらに罵倒する。
「言い訳するな、汗臭いゴリラ女のクセに泥棒ネコのまねごとか、この胡散臭い女ギツネめ」
「ハァ!? 何トンカチな事言ってるの? 鼻だけじゃなく、目も耳もバカだったのね。私は声をかけられただけよ、ちゃんと話を聞きなさいよ。まったく盛りの付いたメス豚はこれだからやんなるわ」
 さすがにカチンと来たリズ姉も反論する。うん、負けてないね。
「なんですって、メス豚はともかく鼻がバカってどういう意味よ」
 メス豚は認めるのかよ。
「そのままの意味よ、こんなクッサイ香水身体にぶっかけて。あんたは、匂いで虫を引き寄せて食べる食虫薔薇か!? 鼻バカじゃなかったら、息出来ないわよ。ってか、近寄んないで私も息できないから」
「キー、なんですって~。どこの馬の骨ともわからない泥棒ネコのくせに。そういうあんたは、こんな良い匂いが分からないなんて女として致命的よ。だから男にモテないで、女だけでモグラみたいに地下にもぐって冒険者やってるのね、やだやだモグラ女は」
 ゴリラに豚に馬、猫、モグラ……他にもいたっけ? 一体ここには、何匹の動物がいるのか。
「私は、バカで弱い男が嫌いなだけ。香水つけなきゃ男も寄ってこない食虫薔薇女とは違います」
「なにを~このモグラ女!」「近づかないで食虫薔薇!」
 女同士の罵りあいに集まってきた野次馬冒険者や、他の受付嬢もドン引きだ。もはやどうやってこのケンカを終わらせればいいか、オレにも分からない。
「もうしかたないわ、あんたみたいにギルドの和を乱すようなモグラ女このギルドにはいらないわ! 」
 あれ、もしかしてマズイ? アレ言うのか。
「あんたなんか、このダンジョン出禁――ッ!? 」


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