あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第十四話 レジェンド待望 その1

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 現状が一ミリも変わっていないのに、ちょっとだけ心がホッコリしてオレは自分のアパートに帰って来た。
 その時オレの部屋のドアの前で何かがムクリと起き上がった。
「あー、やっと帰って来た」
 オレの部屋の前で膝を抱えて座り込んで待っていたのは、ギルド職員のレベッカだった。
「コラ、待ちなさい」
 条件反射的に逃げようとして襟首を掴まれて捕まった。
 本気を出せば逃げ出せるのだが、レベッカに怪我をさせるわけにもいかず大人しくする。
「お姉ちゃん、なんで僕の部屋で待ち伏せしてたの」
 襟をつかまれて宙ぶらりんの状態で、あくまで可愛い子ぶって聞いてみる。
「ジェシカさんから、キミを捕まえて連れてくるようにって言われてきたのよ」
「ジェシカさんって? 」
 知ってるけど、知らんぷりして一応聞く。
「サブギルドマスター、ギルドで一番偉い人よ」
 レベッカも気づいていたんだ、ギルマスのマッスルより、サブギルのジェシカの方が偉いって事に。
「君を捕まえるの大変だったんだから」
「捕まえるって人聞きの悪い……」
 レベッカは、聞きたくも無いのに詳しく話をしてくれた。
 つまりレベッカに言われてオレを探し回ったが見つからず、マッスルがオレ(ジーン)の部屋を訪ねた時にオレ(JJ)の名前を聞いたので、しかたなくこの寒い季節に部屋の前の廊下でオレを待っていたのだという。
 寒い中待たされて機嫌が悪くなったことから“捕まえる”といった人聞きの悪い言葉になったようだ。
「キミはいったい何をしたの? 」
「……何にも? 」
 そう何にもしていない。
 ダンジョン出入り禁止になったが、それはジーンとしてであり、JJは関係ない。
 無届けシェルパとしてダンジョンに入ったがそれはもう過ぎた話で、今日は裏切られてダンジョンに入っていないので、ここまで追いかけられて、捕まえられる筋合いじゃない。
 オレの方こそ聞きたい。オレは何をした?
 仕方なくレベッカに連れられギルドに行く。逃げられないようにしっかりと手をつないで。美人と手をつなぐのは嬉しいけどちょっと恥ずかしかった。

 ギルドに着くと午後三時という中途半端な時間にもかかわらず、なんだかギルド内が騒がしいかった。
 冒険者の数は少ないが、受付嬢や普段見かけないギルド職員があわただしく動き回っている。何かあったとしか考えられない。
「レベッカお姉ちゃん、何かあったんじゃないの? 」
 オレはレベッカに水を向けると彼女も驚いた顔をしていた。レベッカはすぐに、ここで待ってて――、と言い置いて様子を聞きにいなくなった。
 この隙に帰っても良かったのだが、家がばれているので、また後で来られても面倒だし、オレが逃げるとレベッカが責められかもしれないので止めておいた。
 ジェシカと直接会うのは超恐いけど、何の用事か一応聞いておきたい。そして何より、今ここで何が起きているのかを知りたかった。
 ふと、依頼票を張り出す掲示板を見ると、普段人だかりの絶えないはずのその周りは閑散としている。
 オレを出入り禁止にした通知文は、相変わらず張り出されたままだった。
 何かあったのか――、近くにいた数人の冒険者達が、知り合いのギルド職員を取り囲む。
「ちょっと問題がおきてね。口止めされて無いから言うけど、中層で冒険者がダンジョントラップに引っかかって下層に落ちたらしくてね。緊急クエストが出そうなんだ」
 事情を聞いた冒険者たちからどよめきが起こる。
 年に一、二回、落とし穴トラップに落ちる者がいて救出の話が出る。迷惑な話だと思いながら、他人事では無いので可能なら協力してやるかと皆思っているのだろう、冒険者の顔つきは真剣だ。もちろんクエストなので報酬も気になるところだ。
 それにしても落ちたのは下層か。
 オレはあの時の状況を身震いをする思いで、思い返す。
 八年前のあの時、オレと当時のパーティリーダー・マッスルは、地下十八階から二十四階の深層まで落ちたのだ。
 その時、オレとマッスルが落ちた後、落とし穴の壁が崩れて塞がってしまい、ほかの『鬼殺し』のメンバーはオレ達を追いかける事ができず、オレとマッスル二人だけで決死のダンジョン脱出行をする事になったのだ。
 あの時はオレはパーティの荷物持ちも兼ねていて、他のメンバー用の食料や様々な状況に併せられるようなアイテムをいくつもマジックリングに用意していたのが幸いし、なんとかダンジョンを脱出する事ができた。
 下層とはいえ、今回のメンバーはどれだけの用意をしているか……。
 ギルド職員が話しを続ける。
「落ちたのは『モブキラーズ』のリーダー、ヒアー・ハートと『トゥインクルガールズ』のメンバー四人だ」
 なんだと、よりによって昨日中層デビューしたばっかのあの四人か。
「トラップの場所は地下十四階層って話だから、多分魔物の【迷宮モグラ】が作った穴で、地下十八階辺り、下手すると二十階辺りまで落ちてるんじゃないかって、サブマスは予想している」
 モブキラーズのメンバーは、ヒアー・ハート以外の三人は穴に落ちなかったが、自分達だけでは何も出来ず報告のため戻ってきたのだという。
 まずいな。どう頑張っても無理だろ。
 確かヒャッハー達は、男四人のパーティで十五階層まで潜るのが最高だったんだろ。リーダーとは言えそんな男一人と、浅層しか知らない女四人が下層二十階……無茶だ。
 地下二十階と聞いて周囲の冒険者達も青くなり、静かだったロビーがざわつく。
「彼女達ってまだ新人だろ、それをつれて地下十四階って」
「モブキラー無謀」
「アホだ」
「ヒャッハーならいい気味だ」
「「「だなっ」」」
「やめろ不謹慎だ」
「そうよ、巻き込まれた女の子もいるからね」
「何とかならないのかしら」
「でもオレ達だって助けに行くのは……」
「無理」
「「「だな」」」
 事情を聞いた冒険者から諦めの声が上がる。
 無理も無い、ヒャッハーの話を信じれば、今いる冒険者の中で奴が一番深くまで潜っているのだ。今ここにいる冒険者は、いや現在このギルドに登録する冒険者全員が、地下十五階より下の下層は潜った事がないはずだ。
 そいつ等にとっては未知の領域で、魔物の強さも段違い。二の足を踏むのも当然だ。
 下層へ行った事があるベテラン冒険者は、下層の危険度と儲けを天秤に掛け、割に合わないと判断して、もっと稼げる他のダンジョンへ移っていった。
 今いるのは中層から浅層で狩りをする若手ばかり。
 残ってるベテランは、この街を離れられない理由のあるオレぐらいなものだ。……そのオレも出禁だけどな。
「そんな事言わずに、助けに言ってくれないか」
「そりゃ無理ってもんだぜ、地下二十階層だろ……」
 ギルド職員が冒険者を拝むが、冒険者の返答は渋い。
「もうじき、クエストとして発表されると思うから考えておいてくれ」
 考える時間が必要だと判断したのか、そう言ってギルド職員はカウンターの奥へと消えていった。
 冒険者達が顔を突き合わせて話しこむ。
「潜れる奴は誰かいないのか」
「ベテラン勢がいれば話が違うが」
「みんな出てっちゃったわよ」
「あれ、ベテランって誰か一人位いなかったっけ? 」
「そうよ、ジーンがいるじゃない」
「あのオッサンが? 」
「そりゃ確かにベテランだけど」
「無理言っちゃ可哀想そうだよ」
「バカね、あの人はこのダンジョン最強なのよ」
「は? 」
「マジで? 」
「なんだよそれ」
「罠で深層に落ちたギルマスをたった一人でかついで帰ってきたの、生きた伝説よ」
「ん、レジェンド」
「深層から? 」
「ウソだろ? 」
「マジ、カッケーッ! 」
「八年前だ」
「オレ子供の時その話聞いて、それで冒険者になったんだ」
「オレも。オレのヒーローだ」
「そんな事が」
「貴方にそれが出来て? 」
「無茶言うな」
「だったらジーンに頼めばいいじゃん」
「ジーンはどこ行るんだ」
「えっと」
「そういや最近見て無いな」
「バカ、……ジーンは出禁になってるぞ」
「「「「「アッ!! 」」」」」
「なんで出禁にしたんだよ」
「知らね~し」
「こないだ、ニーナがでかい声で宣言してたな」
「ヒャッハーも一緒にな」
「ギルドに抗議しよう」
「でもさ~、ジーンはこの話し受けるかしら」
「うん、ヒャッハーとギルドの為には働きたくないんじゃないか」
「「「「「……だよな~」」」」
 そこかしこでオレの噂話の花が狂い咲きしている。
 そんなに褒められるほどオレは強くないし、そこまで期待されているのにそれに応えられない自分に歯がゆく、オレは居たたまれない気持ちになる。
 こりゃジェシカも忙しくてオレみたいな子供は相手にしていられないだろう。帰るか。
 それにしてもヒャッハーはともかく、アイ姉たち四人は何とかしたいな。何とか助けられる方法はないだろうか。
 などと、考えながら出入り口に向かうと、後ろから襟をつかまれた。
 振り返るとレベッカだった。
「JJくん、どこにいくつもり? 」
「えっ、でもこんな騒ぎじゃ僕なんかの相手なんてしてられないでしょ。ダンジョンに入れない未成年だし、シェルパ登録もしてないし」
 むしろかまわれない方が、こっそりダンジョンに潜って……。
「そんなこと無いわよ。サブマスに話したら、むしろ丁度良かったって言って、すぐに連れてきてだって。キミ本当に何をしたの? 」
 さあ。でも、なんだろ。嫌な予感しかしない。


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