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出禁 第十七話 ――Said ロック&ナナイ その1
しおりを挟む「ハァハァ、ロ、ロク兄ちゃんこの道で本当に合ってるの」
「ハァ、分からない。分からないけど、さっきのまっすぐ行く道は魔物がいたから、ハァ、こっち行くしかないよ」
ロックとナナイの二人はダンジョンの中で、思い切り道に迷っていた。
どこをどう進めば良いか、ロックは必死に考える。もちろん答えは無い。
なぜこんな事になったのか。今になって思えば、自分が浅はかだったとは思っているが、ここまで危ないとは思わなかった。何故かといえば……。
※
あのとき、あんな話を聞いたのが間違いだった。
JJがフラウを訪ねて宿屋まで来たときの事だ。
JJとフラウがこそこそと廊下で話をしている声が、部屋の中にいる僕とナナイの耳にかすかに届いた。
安宿だから壁が薄かったのだ。
JJは、子供だか大人だかよく分からない奴で、注意が必要だと思ったから、内緒話に聞き耳を立てていた。
「……なんかエッチな事させるんやないやろな、もしくは女衒に売り払うときになにかオプションがあるって言って高く売り払う気じゃ……」
「女衒って……」
聞いた感じだと、JJがフラウになんだか怪しそうなヤバイ話を持ち込んでいるらしい。
JJの親戚とか知り合いとかいうジーンという男は、先日訪ねてきた筋肉の塊=女衒に借金をしているらしいと、フラウが言っていた。
女衒の事はよく知らなかったけど、借金のかたに女性を怪しい店に売り払ったりする奴らの事らしい。
JJが僕たちに親切にししてくれたのも、恩を売ってそれをタネに僕たちをゆする気なんじゃないかとフラウは言っていた。
昨日こいつと一緒にいちゃいけないと思って逃げ出したけど、今日またあっさりと見つけられた。
JJの家からそれほど離れていなかったせいもあるけど、簡単に見つけられたのはショックだった。
僕たちが買ってもらったタオルなどを持ってきたと言っていたけど、本当は僕たちの様子を見に来たのだろう。
何処に逃げても無駄だ――、と言われている気がした。
今はフラウと内緒話をしている。という事はフラウも一味かも知れない。
そう考えれば、僕たちの事をすぐに見つけられたのも簡単だ。フラウが密告したのかも知れない。
「面倒事を引き起こした一番の現況が誰なのか、思い出してみるか、それとも無理やり教えられたいか」
JJはヤバイ筋の人間のような口を利き方をした。見た目どおりの子供じゃない気がする。
話しの内容がよく分からなかったが、途中フラウが脅されているようなセリフが聞かれた。仲間割れでもしたのだろうか。
「……もうホントに堪忍したって~な」
フラウの声は半泣きだ。と思ったら傍らに居たナナイが廊下に飛び出していった。
「こらJJッ、フラウ姉ちゃんをいじめちゃメッなの! 」
ナナイはフラウに懐いていたから、フラウを庇おうとしたようだ。
「大丈夫、フラウおねえちゃんは苛められてないんだよ~、ちょっと悪い事したから押し置きうけるかって、お話してるだけだからね~、部外者はアッチ行ってろよね~」
「部外者じゃないもん」
「イタッ」
ナナイがJJの脚を蹴飛ばす。ナナイは恐いものなしだな。
「あのなあ、冒険者をダンジョンまで探しに行かなきゃいけなくって、それにはフラウの協力が必要なんだよ、頼むから静かにしてくれ」
「誰よ」
あまりJJの機嫌を損ねないようにしないと。
今はまだ自由にされているけど本気になったら、すぐに捕まってナナイは遠くの街に売られ、僕は大きな川に簀巻きにされて沈められるに決まってる。
僕はナナイを引き戻すため廊下に出る。
「お前には関係ないだろ、お前の知らない奴だよ。リズ姉とかネー姉とか」
「ネーネーって変な名前」
そうか、僕ら以外にも色んな女の人に目をつけてるんだ。
「やっぱり女の人を探してるんだ」
思わず口から出てしまった。まずい僕がコイツの目的に気が付いたと気づかれたらどうしよう。
「ネー姉は別にただのあだ名っていうか、本当はネイサンって……まあ、これもちょっと変な名前だけど、普通の女のお姉ちゃんだよ」
ネイサン? 姉さんじゃ無くってネイサンって言った?
まさか僕たちの小姉ちゃんの事じゃないだろうな。
「ネイサンって名前の人なの? ……幾つくらいの人? 」
なるべく自然体で聞いてみる。声は震えていないだろうか。
「えっと十七歳って言ってたかな……もしかし……」
十七歳、年齢も同じだ。
「ここにいたんだ……」
ここ二年出稼ぎに出てから音沙汰が無かったと思っていたけど、こんな所で冒険者していたんだ。たまに仕送りがあるだけで音信不通だった……こんな所に。思わず声に出ていた。
「お姉ちゃんの名前を変な名前って言うなーッ! 」
突然、止める間もなくナナイがJJに飛び掛っていったが、すぐにパンチを受け止められる。ナナイは小姉ちゃんの事が大好きだったんだけど、それなのに変な名前と言われて怒ったようだ。頼むから悪い奴を怒らせるような事はしないで欲しい。
ちなみに名前は駄洒落だ。僕は六番目の子供でロック、ナナイは七番目の子供、小姉ちゃんは三番目の子供でネイサンだ。
「……って、お前達の姉ちゃん!? 」
ヤバッ、JJに気づかれた?
いや、今のやり取りだけでは確信はもてないだろう。
「ハハハッ、ナナイがなんか勘違いをしてるようで、人違いだよ」
モガモガと怒っているナナイを部屋の中に連れ込む。なんだか引きつった笑みになった気もするが怪しまれなかっただろうか。
「ロク兄ちゃん、なんで止めるのよ」
部屋に入って扉を閉めた後、ナナイが僕に食って掛かってきた。
「シッ。バカッ、なんで小姉ちゃんの事JJにばらすんだよ。アイツは女衒の手先なんだぞ。きっと女衒に借金をしていて女性を探すように言われてるんだ」
「そういえば、いつもかねカネ金々いってたね」
そう、JJはいつもカネが無いって言っていた。だけど僕らを家に泊めて食事をさせて、タオルなんか生活用品まで買ってくれた。それはつまり……。
「先行投資だな」
「センコートーシ? 」
「多分僕らに恩を売っておいて、後でそれをカタに僕らを売り払おうとしてるんだ。だけど僕は男だし、ナナイはまだ小さい。だから――」
「だから、小姉ちゃんを? 」
「シッ、声が大きい。……小姉ちゃんはおっとりした性格だから騙されやすいし、美人だから目をつけられたんだ」
「小姉ちゃんを助けなきゃ」
「だけど今は、ダンジョンの中にいるらしいから」
「迎えに行きましょうよ。外で待ってたらJJに捕まっちゃう。小姉ちゃんマジメだから私たちがお世話になったって聞かされたら本気にしちゃうよ」
世話になったのは本当だが、だからといって小姉ちゃんが犠牲になる必要は無い。
「う、うん。まあそうなんだけど、……そうは言ってもなぁ」
小姉ちゃんがいるのはダンジョン。はっきり言って僕らが行っても大丈夫なのか。
入るのをためらう僕にナナイは特上の笑顔を見せた。
「だってアタシより小さいJJが行けるくらいなのよ、多分簡単なダンジョンよ、ロク兄ちゃんなら楽勝でしょ。だっていっつも森で狩をしてるから」
そうだな。ナイフも持っているし、やってみるか。それにシェルパの話をしたとき、危なくないのか聞いたらJJは『楽勝だ』みたいな事言ってたような。
「よし、JJより先に小姉ちゃんを探し出そう」
そして僕らはダンジョンに向かった。
門番小屋はあったが、監視する人も出入する冒険者もいなかったので簡単にダンジョンに入れた。
「よし、行こう」
そこまでは順調だったのに。
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