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出禁 閑話 とある元受付嬢の日常
しおりを挟むはー、何で私がこんな裏方作業なんかしなきゃいけないのよ。
しかも、解体作業所の臭いオジサンや。事務の枯れたオジサン共に囲まれて……。
今やってるお仕事は、冒険者の持ってきたクッサイ魔物素材を解体をすること。それと素材を鑑定して、それをお金用意するメガネの枯れたオジサンに報告する事、ホントなんで私がこんな事を……。
昨日、サブマスのジェシカに事務所裏に呼ばれて職場の変更を言われたわ。
何で? って思って聞いたら、ジェシカの旦那のギルマスにちょっかい出した事が原因らしい。
ハッ? ギルマスに手を出して職場変更って、職権乱用もいいところだわ。何様なのかしら、何か勘違いしてるんじゃないかな、
何で私があんな筋肉ラブな男に手を出さなきゃいけないのよ。バカじゃないの。
そりゃ権力がありそうだから、ちょっとデートしたり、宝石貢がせたり、お礼にちょっとキスとか、もうちょっとサービスもしたけど、それって手を出したとかじゃないでしょ。プレゼントくれたから御礼をした、それだけよ。
パンを買ったら金を払う、服を買ったらお金を払う。何かを買ったら対価にお金を払うって当たり前よね。
だから何かもらったら対価を払うのも当然よね。
デートで奢ってもらったらキスでお返し、宝石をもらったらHでお返し。ほら全然変わらないじゃない。
何でジェシカはあんなに怒ったのかしら。イミフだわ。
それだって、奥さんのジェシカが王都に行って寂しいって筋肉が言うから、慰めてあげただけなのに。私の方こそボランティア代金もらいたいくらいだわ。
それとジェシカが言うには、私の香水がちょっときついんですって、何を言ってるのやら。これだから冒険者上がりのオバサンは嫌いなのよ。
血生臭いダンジョンで魔物斬りすぎて鼻がバカになってるから、こんな臭い職場でも平気でいられるんでしょうけど、私には無理だわ。
この香水でようやく正気を保っていられる感じ。
あとジェシカが何か言ってたわね。……ビーンだか、ジーンだか言う中年を追い出したとか。誤解もいいところよ。
あれはヒアー・ハートが教えてくれたんだけど、あの中年のおじさんは魔物の素材を独り占めするドッキンホー違反な男なんですって。だからテンチューを加えるんだっていうから手伝っただけよ。よくわかんないけど。
ジーンに『貴方はダンジョン出禁です』って言ったら超ビックリして、メチャメチャ慌ててて、超受けたんですけど。
ああそういえば、そのジーンを追い出すために、筋肉に書類を書かせたっけ。
あの筋肉、寝てる間に書類を書いてるって言ってたから、ほんとに出来るか、ギルマスの部屋で居眠りしてる時に、ヒアーと試したっけ。
ヒアーが『書類かけ』って言ったら、ホントに書類書いちゃって超面白かったわ。
誤字脱字で読めなかったから、清書してサインだけ書き直させたけど。
今の私は、受付からだいぶ離れた裏の解体所で、ハイドってハゲオヤジに魔物素材を解体しろって、ムチャブリをされてるわ。
包丁も持ったことが無い私に、出刃ナイフ持たせて素材がダメになっても知らないから。
魔物素材ってホントクッサイの。香水もいつもの三倍は使わないと臭すぎてどうにかなっちゃう。この香水代経費で落ちるかしら。
ホント最近ついてないわ。
やっぱり私って自分で言うのもなんだけど美人だから、その組織の顔? 代表? 看板? みたいなポジションにいる方がいいと思うのよね。
受付かもしくはギルマスとか?
冒険者の若い子も、化粧にひびが入ったようなお局がカウンターにいたんじゃ面白くないだろうし。私がいないとね。
やっぱりギルマスに言って受付に戻してもらおうっと。
※
はあ、何で私がギルマスの仕事をしなくちゃいけないのかしら。
確かに普段のギルマスの仕事を見てたら、出来るって一瞬思っちゃったけど。
ただ良く考えてみると、あれはサブマスのジェシカさんがいたから出来たんであって、私が一人で出来るもんじゃないでしょ。
「ギルマス代行、この書類どうすればいいですか」
ギルマス代行!? 変な呼び方やめて欲しい。
万が一、その呼び方がみんなの頭の中に浸透すると、本当にずっとギルマスの仕事させられちゃうから。
「いつもどおりレベッカでお願いします。えっと、ああこれなら解体部のハイドさんに聞けばいいわ」
受付の子がいつもギルマスに回しているという書類を持ってきた。これはギルマスの仕事じゃないわね。
「そうなんですか」
「そう、いつもジェシカさんから『解体部に持って行って』って頼まれてる書類だから間違いないわ」
多分、何も分からないギルマスが知らずに受け取って、それが慣例になっちゃったのね。で、ジェシカさんがフォローして、私がハイドさんに届けてると。
「ギルマス補佐、これはどうすれば」
また変な呼び方、補佐でも無いから。とにかく止めて。
「領主様から、今度ウチで行われる武闘会の会場について問い合わせが」
「レベッカでお願いね。それはサブマス案件だから、ジェシカさんが戻ってきたら応対しますって返事出しておいて。書類はそっちのデスクに」
ジェシカさんのデスクの書類入れに入れてもらう。
「次期ギルマス、マッドキャタピラの買い取り価格について問い合わせが」
何、次期って? どっからそんなガセネタが。なんだか外堀から徐々に埋められていく感じ。
「た、只のレベッカよ。買い取り価格なら、臨時クエストで値上げしたから昨日発表した告知文を見て答えてあげて」
ふう、仕事の中身は簡単だけど、私の立場を誤解している人が多くて疲れる。
「レベッカさん、こんな書類が」
「だから、その言い方は……あってるわ」
「……どうかしましたか? 」
「いえ、なんでも。えっと何ナニ、ジーンさんの出禁解除の嘆願書? 」
「若手冒険者一同って連盟で出されたんです。ジーンさんけっこう若手に人気あるみたいですね、私知りませんでした」
若い受付嬢が不思議そうな顔をしている。
そうなのよ、ジーンさん自分で自分の凄さひけらかす人じゃないから知らない人多いのよね。特に若い人は八年前の奇跡の生還を知らない人も多いみたい。
でも、出禁解除だったら解決済みだわ。そっかでもみんな知らないのね
「分かりました。広報文を書きますからちょっと待ってて。すぐ皆に発表してください」
「へへへ」
何か嬉しそうに笑ってる? どうしたのかしら。
「なんです? 」
「今日は仕事がスムーズに進んで残業がなくなりそうで嬉しいんです」
「いつもこうならいいのにね……ってそういうわけには行かないわ」
って、私は自分が言ったことに驚いてすぐに否定する。だっていつもこうだって事は、私がギルマスになるって事だから。それはありえないわ。
「ええ~、レベッカさんギルマスになってくださいよ~。あんな人に出来るくらいだから簡単ですって」
こらこら、ギルマスをあんな人呼ばわりしない。
広報文をチャチャッと書いて掲示板に張り出してもらう。
これを機会に、みんなにジーンさんを見直して欲しい。そしてジーンさんも、早く帰って来てくれるといいな。。
私がジーンさんに出会ったのはもう十年も前で――ッ!?
「次期ギルマス内定のレベッカさん、こんな書類が」
その言い方……。もうなんでもいいや。いや、よくないけど反論するのも疲れた。
「なにこの書類。ニーナさんから? えっと『若い冒険者にギルドの魅力をアピールするには私を受付に戻すしかありません、さっさと受付に戻してください』……本人に差し戻して下さい」
ふう、ギルマスって意外と大変な仕事かも。
これじゃジーンさんとの思い出に浸る暇もないわ。……って、そんな片思いの女の子みたいじゃない。
そうじゃなくって、ジーンさんは私の尊敬する人で……と、ともかく。ジーンさん早く帰って来てくださいね。
あそうそう、JJくん喜び勇んでダンジョン入ったけど大丈夫かな。
サブマスもギルマスもいるから大丈夫だといいけど、無事にトゥインクルガールズノメンバー助けて戻って凝れますように。
あと誰かいたような……、ま、他のダンジョン入ってる人も無事に返ってこれますように。
あとギルマスの仕事は絶対にいやだなあ。
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