あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第二十二話  ヒアー・ハートの絶望

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 オレの名は、ヒアー・ハート。
 家名は母親の実家の名を名乗っているが、本当は貴族のボウ男爵の息子だ。
 なんで貴族の息子なのに、バカ女どもに騙されてこんな薄暗いダンジョンの中でウロウロしないといけないんだ。
 ここは、廃坑のダンジョンだから基本的には通路は平らで歩きやすく、スキル“夜目”があるから歩くのは困らねえ。だけど十字路に差し掛かったらどっちに行って良いか判らねえのが最悪だ。看板のようなものもねえし。
 さっきからだいぶ歩いているが、上り階段が見つからねえ。
 聞いた話では、ダンジョンの中心あたりには、下層を貫いて浅層まで登れる階段があるはずだ。誰にも知らされていないが、オレは親父のコネで引退した冒険者から聞いたことがある。たぶん、あのオッサン冒険者は知ってたはずだ。知ってて、自分だけ稼ぎやすいように隠していたんだ、卑怯な奴だ。
 階段までいければ、生きて帰れる可能性は高い。なんせオレは今このダンジョンで最強なんだからな。
 地図もないし、どこをどう歩いていいかもサッパリだが、オレは運がいいはずだ。男爵の息子に生まれた事自体運がいい証拠だ。必ず生きて帰れるはず。三年前のあの時だって生きて帰れたからな。
 ホラミロ、見つかったぜ、ヒャッハー! 
 上り階段だ。これで中層までいけるぜ。
 下層は魔物が強えとか言ってベテランは皆逃げちまったらしいが、どうって事は無かったな。多分オレの強さに怯えて、魔物は皆逃げちまったんだな。
 これからは、ジーンのオッサンにデカイ顔させねえぜ。オレが最強だ。あ、いや、あいつはもうダンジョン出禁だったな。 
 ダンジョンの中央に位置するこの階段は、大きな円筒形の縦坑の吹き抜けになっている。
 中央は吹き抜けになっていて、マジックアイテムで作ったエレベターがある。……あると聞いていたが、今はエレベーターの箱をつるすロープしか見えない。その周りを螺旋階段のようにグルグルと階段が下から上へと続いている。
 まあ仕方ねえ階段を上るか。
 疲れがたまって、足が重いがなんて事はねえ。これでオレは生きて帰れる。
 一緒に潜った女共の事は、貴族のオレを逃がすため犠牲になったとか言っておくか。オレが「そんな事言わずに頑張れ」って言ったけど、女は「貴方の重荷にはなりたくないの」とか言って、最後はオレの手を振りほどいて魔物の群れに飲み込まれて……。く~、吟遊詩人に話したら、売れる詩になるに違げえねえ。
 それにしても足が重いな。体力を回復させるポーションとか持ってくればよかったぜ。そういうのは雑用の三人に任せていたからな。
 ン!?
 オレの目の端に何かが過ぎった。
 “夜目”のスキルは昼間のように明るく見えるが、色はモノクロ、全体的に薄く緑色に見えるという変な特徴がある。そのためか何か視界の端を過ぎったとしてもよっぽど見慣れたものじゃねえと、咄嗟には何だかわからねえ。
 何か魔物ならやべえから、しっかり確認しないと。
 オレは何かを確認するためそいつが動いた先、足元を見る。
 オレの足元がモゾモゾと動いていて、膝の辺りまでその何かうもれて見えなくなっている。
 クモだ――ッ!?
「ギャーッ、ウワーーーーッッツ、く来るなッ!! 」
 小さなクモ――それでも手の平サイズのクモ――が、オレの両足に何十、いや何百匹とまとわりついている。
 足が重たいのはコイツらのせいだったのか。
 オレは全力でクモを蹴散らし、クモを踏みつけ、階段を駆け上ってクモを引き剥がす。だがオレが踏みつけたクモがブヨブヨグニョグニョと走るのを阻害し、上手く走れない。
 足が重い、息が続かない。頭が朦朧とする。これはまさかクモの毒か?
 いや噛まれた感触はない。……というかクモがオレの体の半分近くを覆っているのにその感触が無い。神経をやられている!?
 生きながら食われるッ!?
 ちくしょう、まともに歩けねえ。
 そしてついに体のバランスが崩れ、オレは階段の手すりに体を預ける。だが手すりは木製で腐っていたのかオレの体重を支えられずにすぐに崩れ、中央のエレベータが通る吹き抜けに落ちちまった。
 けっこう高い所から落ちた。……ようだが痛みがねえ。クモの毒にやられて何も感じられねえ。
 ああ、もう動けねえ。
 オレの視界を動き回るクモが埋めていく。気持ち悪い。
 ああ、こんなの絶えられねえ。さっさと救出に来い、オレを置いて地上に逃げた雑用係共め何してる。
「だ、誰か助けやがれーーーーーーーーーーーッ!! 」
 チクショウ、……誰も来るわきゃねえか。

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