あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第二十五話 VSクイーンスパイダー 

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「完全に慢心だったな」
 オレは片手剣を杖代わりにして、なんとかクイーンスパイダーの前に立っている。満身創痍とはこのことで、クモの長い手足に引っかかれて服はぼろぼろ、辛うじて毒のある牙に噛まれていないので致命傷は受けていない状態だ。
 【サイノクラス】相手に以前のように普通に戦えたので、いけると思ったのだが、慢心だった。
『そうでもない、お主が我の力を十全に使えていたなら今日も勝てたかも知れぬ。お主の身体が小さくなった事と関係があるだろう』
 オレの心の中でタロスがオレの呟きに返事をする。
 【サイノクラス】相手に、タロスの力は半分も必要なかったので気づかなかった。
 だがここに来て、全力で戦って分かった。タロスの力はこのクイーンスパイダーにも負けていないだろう。だが、その力を出すオレの身体がついていかないのだ。
『我は力のセーブが上手くないからスマン。今後はなるべく力をセーブしよう』
「だけどクイーン相手となるとセーブすると、それはそれでヤバイかな」
 人間はモノを殴るときなど、力いっぱい殴ったつもりでも、本能で力をセーブするのだとか。力をセーブしないと身体が壊れるからだ。
 今のオレの場合、タロスの力で本気で剣を振るうと、セーブする事など無いので、身体がついていかず、今や壊れる寸前、身体中が悲鳴をあげているのだ。
 タロスの権能でパッシブに身体強化はかかっているが、これは腕力脚力握力などパワーを挙げるもので、防御力をあげるものではない。身体中の骨はきしみ、一部ヒビも入っているだろう。
 タロスが言うには、身体が小さくなったので、耐えられなかった可能性が高いが、ジーンの身体でもここまでやった事はないから全然気づかなかった。
 タロスは『力をセーブしよう』などと言うが、力をセーブして勝てる相手だろうか。
 クイーンスパイダーは少し離れたところで様子を見ながら、牙をカチカチさせている。
 オレは、辛うじてヤツの前脚の間接を一ヶ所切断してやったが、あまり影響はなさそうだ。
 休憩しているのか、オレの出方を伺っているのか、倒し方を考えているのか、子供やオスが来るのを待っているのか。
 子供のジュニアスパイダーが徐々に集まってきている。
 さっきイフリートで散々灰にしてやったのに、まだまだいそうだ。
 後ろはジェシカが向かった方角なので、今のところ後ろから襲われることはなさそうだ。
 今のうちに高級ポーションを一口グビッとあおる。
 体は元に戻ったが、マイナスがプラマイゼロになっただけでプラスにはなっていない。これで高級ポーション二本目だ。これ以上はポーションの効きが悪くなってくるのでもうないと思った方がいい。
 さてどうするか、と思っていたらついにクイーンが動いた。
 少し走ったと思ったら、思い切りジャンプしてオレを頭上から押し倒そうと飛び掛ってくる。
 体格差がありすぎるので、このまま受止める事は出来ず、二歩下がって直撃を避け、そこから脚の隙間をぬって接近して刺突する。
 しかしクイーンもなれた物で、前脚二本で剣を裁く。
 前脚はタロスの怪力の剣をいとも簡単にはじき返す。鋼鉄以上の硬度といっていだろう。
 関節を狙うのだが、ギリギリ外され、逆にオレの身体がその鋼鉄の脚で切り裂かれる始末だ。
 隙を見てオレは体の下にもぐりこみ剣を下から突き上げ頭を直接狙うが、クイーンがかなり慎重でその瞬間は受けるのではなく飛び下がって距離をとる。
 多分クモの八つの目は全て頭の上についているので前後左右上は見えても頭の下は見えないのかもしれない。
 勝機があるとしたらそこだろうか。
「クッ」
 タロスの怪力の一撃と、それを受け止めるクモの鋼鉄の脚の一撃。その衝撃を受け止めるオレの身体が再びきしみ始めた。
 そして、クモの前脚の刺突を避けようとして足がもつれた。
 仕方なく、力任せに剣を振るってその鋼鉄の前脚をなぎ払った。
 だがそれがいけなかった。
「グ、アッ! 」
 剣と前脚の激突の衝撃に耐えられなくなったオレの右腕の筋肉が、肩関節を支えられず肩の骨が外れたのだ、
 最初は脱臼したのかどうかも分からなかった。剣を持ち上げられない。
 そして、クモが俺を前脚で押し倒した。剣は持てない、右腕も左腕も肩の辺りから押さえつけられた。
 手足の先にジュニアスパイダーが群がってきた。
 クイーンの牙? アゴ? が近づいてくる。オエッ、気持ち悪い。
 よだれが垂れて来た。いや毒液か。万事休すだな。
 そう思った時。
「JJッ!! 」「JJクンッ! 」
 通路の後ろから複数の人間の影、皆!
「来るな! 」
 オレは思わず、気持ちとは裏腹の言葉を口にする。はっきり行ってクイーンは化け物だ。タロスでも勝てないのに……そう思ったが。
「ハァ! 」「フッ! 」
 ケイロンが改造ケイロンボウを、ジェシカがこれも愛弓のレインボウを一斉に放つ。ケイロンボウを改造したケイロンボウ・コレクティオはミストの力を込めると命中率と攻撃力が上がる。その矢がクイーンの一番大きな目の右を潰す。
 そしてジェシカのレインボウは、ミストの力を込めると命中率と攻撃力が上がり、さらに矢が七つに分かれてそれぞれ狙いの場所に命中する。ジャシカの矢は残り七つの目に突き刺さる。
「ギッ、ガガッ」
 八つの目を潰され、クインが悲鳴のような何か変な音をあげる。
「ウオオオオオリャャャャーーーーーーッッツ! 」
 激しい怒声をあげて上空から舞い降りてきたのはマッスルだ。
 オレの目の前に着地すると超巨大な戦斧を軽々と振り回しクイーンの前脚を斬り飛ばす。
マ ジ テ!?
 さすがその分厚い胸板と極太の腕の力は伊達じゃないな。精霊頼みのオレとじゃ雲泥の差だな。
タロスの力でも断ち切れなかったクイーンスパイダーの脚を二本まとめて切り飛ばすとは。
さすが元最強パーティーのリーダー、日々鍛え続けていたから、もしかしたら力だけなら現役当時よりも強いかもしれない。
「クッ、よしッ」
 自由になったオレは、左手に剣を持ち替えクモの真下に潜り込み、
「タロス、全力だ! 」
『オオッ』
「これで終わりだッ! 」
 頭と胴を断ち切った。関節を狙えば、オレでもクイーンは切れるようだな。だが、その瞬間、左肩にも激痛が走る。
 左肩も脱臼したらしい。腕が折れたのではなく、脱臼なのが幸いだな。肩がはまればまだポーションで治る。
 首がぽとりと落ち、クイーンの胴体は力なくその場に崩れ落ちた。
 残ったジュニア達はジェシカが風魔法で突風みたいな風を作って吹き飛ばしたらクモの子を散らすように逃げていった。ホントのクモの子だからな。
「JJくん大丈夫? 」
 トゥインクルガールズの面々が心配して駆け寄ってきた。
「まあ大丈夫だけど、ちょっとアゴの骨が外れちゃって」
「大丈夫? 」「カワイイ顔台無しに? 」「なぜアゴ? 」「何か笑える事あったか? 」
 心配させたくないので冗談を言ったら間に受けられた。仕方ないので素直に肩の骨が外れたと話す。と
「そうかそうか、まあ任せろ」
 マッスルが指の骨をポキポキさせながら近づいてきた。
「や、やめろッ、ギャー」
 マッスルの力任せの治療にオレは絶叫を上げる。
 ま、それで肩がはまったわけだけど。もっといたいけな少年を労わる気持ちは無いかな。
「ちょっとギルマス、もっと優しくやって上げなよ」「JJくんが可哀想じゃない」
 トゥインクルガールズの面々がオレの代わりに、ギャーギャー言いながらオレをかばってくれる。ずっとソロだったから、こういうのを忘れていた。
 うん、パーティって言うのも悪くないかもな。
 言い争う四人の少女と筋肉、そしてそれを呆れた顔で見る大人な二人。うん、なんかいいな。こういうあったかいの。
 ピンチになった時に助けてくれる事もね。
 その後、高級ポーションを飲んで(効きが悪くなったので完治は出来なかったけど)、なんとか走れるくらいにはなった。
「マッスル」
 ん? マッスルの名前を呼ぶ女性の甘ったるい声が聞こえた。
 小さいが確かに聞こえた。
 マッスルの名前を呼ぶのは、今このなかではオレかジェシカしかいない。オレがそんな声を出すはずがないし。ジェシカは仕事中はギルマスと他人行儀に呼ぶ……。
 見るとジェシカが、なぜかマッスルを見て顔を赤らめている。
 どうしたジェシカ。クールビューティを通りこして絶対零度の氷の女王を体現した女がまるで乙女だ。まあ夫婦だから、そうであってもいいんだけど。
「それじゃ長居は無用だな、行こう」
 ジェシカがいつまても呆けているので、マッスルが仕切る。
「えっ」
 まるでパーティーのリーダーみたいな行動にオレは驚いた。
一方トゥインクルガールズのメンバーは、普段のマッスルをあまり知らないので、一周回ってそういうものだとおもったようだ。
 納得いかない。
 ま、それはいいんだけど。……またか。だって、クイーンスパイダーの素材なんて、キング以上の超超超高級素材だ。脚も固くいい武器になるだろう。マッスルじゃないが、魔石だって大きいと思う。金のなる木だ。普段ならここで発作が起きたかと思うくらい笑いが……もうよそう。
 金より大事な事があるんだ。早く花を採りに行こう。
 血の涙をぬぐって、俺は心に言い聞かせる。
「あ、いやいや、ちょっと待って、道を確認しないと」
 オレはそう言って四方に風の精霊を飛ばす。そして待ってる間に、ノームのハリー爺さんを呼び出す。
「爺さんスマン、もう一度花を探してくれないか(ヒソヒソ)」
 精霊、妖精はオレから話しかける時は声に出さないといけないのがネックだ。ハリー爺さんの声は皆には聞こえないので、基本オレの独り言に聞こえる。ソロだったらいいんだけど。
『ああ、ええぞい』
 ハリー爺さんは、そう言って白く長いヒゲをしごく。『ふむ、さっきより近いな』
 どうやら少し上の階、距離三十マイトルの所にあるらしい。
「マ ジ デッ! さっきより近いのか。これは絶対帰りによらなければ」
 突然大声を上げたオレに皆の奇異の目が向けられる。
「JJくんどうしたの」
「クモの毒が頭に回ったか? 」
 ジェシカは心配してくれたが、マッスルはとことん失礼なヤツだ。今度何かあっても助けない。とりあえず帰りは風魔法の補助無しだな。
「よし行こう」
 風の精霊の報告と地図を見比べて、だいたいのルートを決めて、早速向かう。
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