あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第二十六話 ダンジョンの暗闇に咲く一輪の花 その4

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「ほなお寝んねしよか」
 パチンと指を鳴らす音がして、リズ姉とネー姉がカクンと糸が切れた操り人形のように地面に崩れ落ちそうになって、フラウに支えられた。
「JJご苦労はん。あとはウチがやっとくさかい」
 なんだかフラウに胡散臭い笑顔で礼を言われると、騙された気になってくるのは気のせいだろうか。
「詳しく聞いてないけど、お姉ちゃん達はやっぱりヒャッハーを陥れようとしてたのか」
「いやあ、どうやろか」
 胡散臭い。
 胡散臭いがはっきり言わない所を見るとそうなんだろうな。ジェシカがそれっぽい事言ってたし。
 で、ロックとナナイ兄妹の味方であるフラウは、そのお姉さんのネー姉、とその仲間は見捨てられない。だから何かすると思うんだ。人間の倫理には縛られない妖精だからなおさらね。例えば、ジェシカたちの記憶をあやふやなものにするとか……。
 フラウは怪しい笑みを浮かべるのみだ。
「ああ、その記憶の操作なんだけどな、少しお願いがあるんだ」
 オレはもう一つ思いついたことをお願いする。
「なんや、あんまムツカシイ事はできんで」
「フラウって、とことんオレに冷たいよな」
 今までの事を思うとつい愚痴がこぼれる。
「そんな事ない思うけどな。まあだとしたら、最初の出会いが悪かったんやろな。鞭で縛られ、ナイフで脅され……」
「その前に変な薬を飲まされて、な」
 ふふふふふと不気味に笑って顔を付き合わせる二人。
「まあええわ。それで、お願いってなんや」
 不毛だと思ったのか、フラウが顔を背けて肩をすくめる。
「ジェシカがオレの正体に気がついた。ジーンだってばれた」
「ふうん、それで」
「ジーンってバレたらもう、オレはこのダンジョンにはいられない」
「そんな事ないやろ」
「いや、ジェシカがオレを子供だと思っているからこそ、オレも“お姉ちゃん”呼び出来たんだ。もうどの面下げてジェシカに会えっていうんだ。オレが耐えられない。もう自殺するしかない」
「大げさちゃうか」
「頼む。オレはまだ死ぬわけにはいかない。花を見つけないと。ジェシカの記憶を操作してJJとジーンは別人だって思い込ませてほしいんだ」
「……しゃあないな、やっとくわ」
 最後はフラウが諦めて、記憶操作を請け負ってくれた。
 助かった。
「それじゃあ、記憶操作が終わったら皆を起こしてギルドに行くから教えてくれ」
 自分で言ってみてひどい言葉だな、記憶操作って。今後はなるべくお世話にならないようにしよう。
「あ、その前にJJ、手を出してくれんか」
 ん、なんだろ。
 オレが手を伸ばすと、フラウはそのままオレの腕を掴んで、何だか黒い袋にオレの腕を挿しこんだ。
「お、おいコレって何のマネだ? 」
「ウチからのプレゼントや」
 何を考えているのか怪しい笑みを浮かべるフラウ。
 腕を突っ込まされた袋を見ると見覚えがある。三十センチマイトル四方の布袋で上辺を紐で絞られるようになっている。
 フラウと会った時に、若返りの薬が出てきたあの袋!?
 因縁の袋になぜオレが腕を入れなければいけないんだ。
「もう一度願って見んか、今JJに必要な物が出てくるかもしれへんで」
 えっ、何に? 袋に? フラウにじゃないよな? 本当にちゃんとした物が出てくるのか?
「ちゃんとしたもん出てくるって、ウチをを信じるんや」
 世界中で一番信用ならない奴に信じろといわれても。
「無理だろ~~~~~~~ッ! 」
「何でや~~~~~~~~ッ! 」
 と、そこで今まで黙っていたケイロンが、一歩前に出た。
「JJ、この袋は鏡と同じだ。疑う心が混じれば出てくるものはおかしな物になる。心の底から信じてみるんだ」
 なんだかケイロンが哲学的なことを言ってるぞ。
「こういうアーティファクトはそういうものなのだ。利用する物の心を読みとり反映させるのだ」
 そ、そうか。うん、ケイロンが言うなら信用しよう。オレは目を瞑って心から念じる。
 オレに必要な物、オレに必要な物。
「JJってホントイケズやの」
 うるさい、俺は集中してるんだから。
 オレに必要な物、フラウを殴る物。あれ?
 イヤイヤ違うだろフラウが変な事言うから。……年齢を元に戻す薬。
 まあ、それでもいいが元に戻るだけであまりプラスになるとも思えない。
 じゃあ何か……花だ。
 “フローラアルジーナ”ダンジョン病を治す薬の原料……、いやもう花よりも薬そのものでいい。ダンジョン病を治す薬が欲しい
 オレは額にしわが刻まれるほど強く念じる。と指先に何かが当った。
 思い切ってそれを巾着袋から引き抜く。
 それは、形はゆりの花と同じだった。花弁は透明で黄色から濃いオレンジ色へのグラデーションも美しい花だ。まるで色つきのクリスタルガラスか、もしくは薄く削られたメノウのような、まさに宝石のごとき美しさだ。
 ダンジョンの中層にしか咲かないとされる花。
“フローラアルジーナ”だった。


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