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第二章 王都編
第三十四話 王都初日 ~リベルタ母娘の引越編~ その1
しおりを挟む「この辺りでしたら静かで、それでいて表通りの商業地区も遠くないですし、ハミル様のお屋敷へも、魔法騎士学校へもそれほど遠くないのでとても便利です」
オレとリベルタ、ディアの三人は、貴族が乗ってもおかしくないような豪華な馬車に乗せられ、辺境伯家が紹介してくれた王都商業ギルドの案内の女性職員と一緒に、引越し先の物件めぐりをしていた。
ただ、辺境伯家がどう言ったのか知らないが、紹介してくれる家はどれも裕福な家族とその召使達が住むような家ばかり、つまりお屋敷だ。
リベルタが敷地の一角にある離れを見て、
「あら、この部屋なんか手ごろでよさそう」
なんて言ったら、
「そこは住み込み女中の部屋です。皆様にはこちらに住んでいただかないと」
と、背後の三階建ての屋敷を指差されてドン引きしていた。
「親子三人で暮らのにはぴったりだと思いますよ」
ブッ
女性職員はオレ達を見て微笑む。
オレをリベルタの子供で、一緒に住むものだと思っているらしい。オレは引きつる笑顔で無言を通した。
オレがジーンに戻って、リベルタと結婚してディアと仲良くなって、親子三人で暮らせるなら、それが一番いいけど。
「親戚の子でたまたま一緒にいるだけです」リベルタは冷静に反論。
「将来はそうなるけど、今はまだそこまでは……、友達以上恋人未満かな」ディアは、何かわけの分からない事を言っていた。
小声でよく聞こえなかったのでスルーした。
「もっと手ごろな物件って無いかしら」
リベルタが困った顔をして聞き、案内の女性職員も困った顔をして小首をかしげる。
「これ以上小さい物件ですと、辺境伯様のお屋敷からかなり離れてしまいますよ」
辺境伯家が、屋敷の近くで探せとか、余計な条件をつけたんだろうな。
「別に、辺境伯家の近くじゃなくっていいよね、お姉ちゃん」
オレはリベルタを見て言うと、リベルタが「そうよね」と首肯し、その隣のディアも、コクコクと大きく頷いていた。
結局、商業ギルドの女性が渋々妥協して、辺境伯家からけっこう離れていて、だけど商店街のすぐ裏という便利な、そして日当たりのいい場所に部屋を借りる事ができた。
ここは近くに乗合馬車の停車場があって、この馬車に乗れば辺境伯家の近くまでは、乗り換え無しで行けるので、ギルド職員としてはギリギリ妥協できる範囲だったのだろう。
「日当たりがいいのと、けっこう眺めもいいじゃろ」
「すごい、王都が一望できるわ」
貸し部屋の大家が、リビングダイニングの壁にある大きな鎧戸を二つ開けると、とたんに外光が入って部屋が明るくなった。
一つは腰高の窓のようなものだが、一つは外のベランダへと続く出入口だった。
ディアがベランダに出て感激した声をあげた。
「一望は無理じゃが、まあ見晴らしはいいぞい」
一階は大家が経営する定食屋で、二階が大家の自宅。その三階の2LDKが今いる部屋だ。
周りには大きな建物は少ないので、ベランダから見える景色は開放感がある。
洗濯物もよく乾きそうだ。
「キッチンも広いし加熱用の魔法道具まで付いてるのね」
「トイレとお風呂も別々になっています。また最近流行の水の魔石と火の魔石を使った魔道具付きなのでお湯もすぐに出て、とっても便利になっています」
リベルタと女性職員が、部屋を内覧しながら楽しそうに会話を交わす。リベルタもけっこう気に入ったようだ。
リビングダイニングは吹き抜けになっていて、天井は屋根の形に添って斜めになっている。ここの部分は屋根裏がない分、天井が高く開放感がある。
三角屋根の天辺近くの壁にも明かり取りの小窓があって、採光は悪くない。
なかなかの優良物件なのに、商業ギルドの口利きなのでけっこう安く借りられた。そして大家が経営している定食屋でリベルタが働く事もその場で決まった。
辺境伯家の援助もあるので、リベルタが働けばなんとか母娘二人生活できそうだ。
それではさっそく、オレはその場でリベルタたちの引越し荷物を、空間拡張倉庫機能の付いたアイテムBOXのマジックリングから出していく。
このリングに仕舞えば移動している時に食器が壊れる事もないし、時間停止機能もあり容量も無限なので、何でもかんでも突っ込んで運ぶ事も出来る。
「そうだJJくん、ディアの荷物は、そっちじゃなくってこっちの部屋に出してもらえるかしら」
オレがディアの家具を小さな部屋に出そうとしたところ、リベルタが隣の大きな部屋から声をかけてきた。
「あれ、こっちの部屋はディアの部屋にするんじゃないの」
「だって、ディアと私は一緒の部屋よ。そっちの部屋はJJくんの部屋じゃない。小っちゃい方の部屋で申し訳ないけど」
リベルタはさも当たり前のように言う。
それってつまり、リベルタと半同棲? 部屋は別々だから。
「それってつまり、JJと半同棲? 部屋は別々だから」
ディアもなんか小声で言っている。よく聞こえなかったけど驚いているようだ。
「あれ、それともこっちの大きい部屋で、ディアと一緒の方がよかった? 」
「ブッ」
噴出したのは、ディアだ。「同棲? 同棲だよね? JJと同棲、JJと同棲」
やはりよく聞こえないが、なんだか、真っ赤な顔をして小声でブツブツ言っている。まあ深くは考えないでおこう。
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