あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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第二章 王都編

第三十六話 魔法騎士学校入学試験 その1

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「統一暦二百二十年頃、北の森のはずれにあるカイナの地にいたアロホアの民が、突然その西にあるライヒに向かって移動を開始します。この民族移動によって、玉突き的にライヒにいたシニの民が南と西に押し出されました。そして……」
 ディアは今、テティスの話す歴史の授業を子守唄がわりに、机に向かって船をこいでいる。
 さらに、JJはその隣で机に突っ伏して暴睡している。
 テティスの声には、催眠の魔法がかかっているらしい。
「……私の授業はそんなに退屈かしら」
「ああ、ほとんど拷問」
 ディアが眠い眼をこすって、何とか返事をする。
 ここはハミル辺境伯家の屋敷、テティスによるJJの試験勉強の真っ最中だ。
 王立魔法騎士学校は、やはり貴族や富豪の子弟が多いため、庶民の知識教養で授業についていくのは難しいため、テティスがディアにも授業を受けろと勧めたのだ。
 本来ディアはJJに付き合っているだけなのだが、立場は逆になっている。
 ディアはほとんど拷問のように、腕にペンを付きたてて、睡魔と闘っているのに対し、肝心のJJは起きる努力すらせずに机に突っ伏して暴睡している。
 なぜこいつは寝てる――。と、ディアとしては納得がいかない。
「――デッ!? 」
 ディアは無言でJJの頭を引っぱたく。
「って~な。ディアなんなんだよ」
 最近のJJは、ディアに対しては本当の家族、弟みたいな喋り方をする。リベルタがいるところではネコを被って子供っぽい喋り方をするが。
「アタシが、世界の昔話を聞いて眠いの我慢してるんだから、JJも起きてろよな」
 一方のディアも、JJの前では本来のヤンキー的な話し方になる。
「世界史だから。ちゃんとした授業だから」
 テティスが苦い顔をする。
「オレは良いんだよ、睡眠学習だから」
 そう言ってJJは側の何もない空間を指し示す。
 普通の人には何も見えないが、ディアには、そこに強く光る玉が見え、強い精霊がいることは分かる。
 精霊に愛されている証拠なのだが、果たして何の精霊なのか、そこまでは分からない。
「スイミングガクシュー……、泳ぎを習うのか? 何を言ってるのかサッパリだ」
 ディアが小首をかしげる。
「なぜ水泳? 土の精霊ノームのハリー爺さんだ。好奇心旺盛で人間の事を知りたがる珍しい精霊だ」
 どうやらJJは土の精霊に授業を受けさせているようだ。
「いや、ただの土の精霊じゃないから、ノームって四大精霊だからね。珍精霊扱いじゃなくって、もっと敬いなさいよ」
 テティスにもノームが見えるらしい。
「この爺さんが授業を聞いてるから大丈夫なんだよ。試験の時は爺さんに教えてもらえばいいんだから」
「それカンニングだから」
 テティスは王立魔法騎士学校の教師なので、突っ込みというか、一応JJを諌めるが、
「大丈夫だよ、どうせティー姉やディア以外には見える人いないんだし、精霊使いにとっては精霊の力も自分の力の一つだからね」
 JJはまるで、何処吹く風だ。
「どこからそんな屁理屈を……」
「大丈夫、ティー姉が黙ってれば誰にもばれないって」
「くっ……どこからそんな悪知恵を」
 テティスはちょっと悔しそうだ
「でも、ボクが入学しないと困るのは、誰かな~~ねえティー姉」
 JJは上目遣いにテティスを見つめる。
「問題な~~~しッ! 」
 テティスが丸め込まれた。
「それでいいのか? 教師だろ! それになんでアタシだけ拷問を受けなきゃいけないんだ」
 ディアがテティスに突っ込みをいれ、そのまま怒りの矛先をJJに向ける。
「――デッ!? 」
 ディアが再びJJの頭を引っぱたいて振り出しに戻る。
「JJ、ずるいぞ。私が起きているんだから、お前も起きていろよ」
「なんだよ、ディアも睡眠学習すればいいじゃん」
「だってアタシ、ノームの声聞こえないもん」
 ディアが拗ねたように言う。
「大丈夫だって、ディアもレベルが上がればハリー爺さんと契約できるようになるって。そうすればハリー爺さんの声も聞こえるようになるさ」
「そうなの? 」
「ああ、どうやらハリー爺さんはディアの事気に入ったらしくって、契約してもいいって言ってるぞ。ただ、まだレベルが低いらしいから、もうちょっとレベルを上げてからだな」
「レベル? 」
 現代魔導科学や錬金術でも、根本的なレベルが上がる仕組みはわかっていない。
 だが、魔物は死ぬ瞬間に、ミストもしくはミストに関する何かを放出させるらしく、それを取り込むことで、人は肉体や精神、魔法的な様々なものが強くなっていくらしい事までは分かってきた。
 そして成長した値を、ギルドにある錬金科学で作られた魔道具で測定し、総合的に判断してレベル分けが行われる。
 このレベルというものは、あくまでも人間の都合で分けて決めているものだが、最近は土の精霊ハリー爺さんもJJから教えられてレベルについては理解しているらしい。
 ハリー爺さんが言うには、ディアは肉体的精神的にはまだ弱いと言うことらしい。
「だったら丁度良いわ。王立魔法騎士学校にもダンジョンはあるから、比較的安全にレベルは上げられるわ」
「学校にダンジョンがあるのか」
「ヤバッ」
「そりゃそうよ。魔道士や騎士を育てる学校よ。安全にレベルを上げられるようになってるわ。授業でもダンジョンに入るわよ」
「安全に? パワーレべリングでもさせるのか」
「貴族の子供の中には、それをする子も多いわね。学校でも貴族子弟に怪我させたくないって配慮する先生もいるわ。でも精霊魔法的にはあまりお勧めはしないかな」
 魔物と戦う事で、経験は得られるがそれだけではレベルは上がらない。魔物にトドメを刺す事で肉体や精神、魔法的部分が強化されレベルが上がる。
 逆に言えばレベルだけ上げるなら、魔物にトドメをさせれば、それでレベルは上がるらしい。
 そのため、貴族の子弟は危険が少なくレベル上げるために、配下の騎士に、または立場の弱い庶民の生徒に魔物と戦わせ、最後のラストアタックだけ自分で行う、パワーレべリングを行う者が多い。
 ただし、物理的に肉体などは強くなるが、それでは経験というものが少なく、精霊を使役し魔法を使わせる精霊魔法使いにはお勧め出来ないとテティスは言う。
 魔物にトドメをさす事はもちろん、魔物を倒すまでの過程だったり、またそれ以外の良い事も悪るい事も含めた様々な経験、そしてそれを乗り越えた経験をした上でレベルを上げないと、高位の精霊は認めてくれないのだとか。
 土の精霊のハリーがディアを気に入ったのは特別だろう。
 ちなみに、ジェシカやマッスルが作ったパーティ、『鬼殺し』に所属していた頃のJJ(当時はジーン)は、それほどレベルの高い冒険者ではなかった。
 当時のジーンは名もない下位の精霊を使った斥候、もしくは短剣などで戦う露払いが本職で、大物と戦う際のメインはジェシカやマッスルなどが担当していた。そのためJJは経験は積めたがレベルはあまり高くならなかった。
 JJのレベルが上がったのは、マッスルと一緒に下層に落ちた後だ。
 何が何でも自分で戦わなければならなくなってから、急激にレベルが上り、そのお陰で下層で『タロス』や『イフリート』と契約でき、大物の魔物を狩れる様になり、またレベルが上がるようになったのだ。
「だからディアさんには、実戦できちんと戦ってレベルを上げてもらいたいかな」 
「ああ、わかった。つまり学校のダンジョンでレベルを上げれば、土のノームと契約できて、勉強しなくてもカンニングし放題で問題なしってわけだな」
 ディアは晴れ晴れとした笑顔を見せた。
「うん。認識はあってる」
「認識はあってるけど。……えっと、話がずれてるような、元に戻ったような、っていうか問題は大いになあるような……」
「それじゃココにいる必要もないから帰るな」
 釈然としないテティスを置き去りに、ディアはさっさと部屋を飛び出していく。
 元々授業に追いつけるようにと、JJに付き合って勉強していただけだ。土のノームと契約して、授業やテストの時に教えてもらえればそれで済むとわかったディアは、躊躇なく家路についた。

「JJくん、どう勉強はかどって……どういう状況?」
 シャーロットが、自分の家庭教師の勉強を終えてJJの様子を見に、というか遊びに来た。
 だがちょっと、というかだいぶ様子がおかしい。
 広い部屋の中で机に突っ伏して暴睡するJJと、何もない空間に向かって、暗い顔をしてブツブツと何かを呟いているテティス。
 どう見ても、シャーロットの知っている勉強中の教師と生徒の姿ではなかった。
 もちろんシャーロットには土の精霊は見えなかった。
 


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