ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

綴火(つづりび)

文字の大きさ
41 / 83

第41話:新たな楽しみの兆し

しおりを挟む
「公園でぼーっとしながら飲む缶コーヒーって、
 なんかおいしいよね。ふふふ」

((──はい。))

ベンチの背もたれに、
そっと体を預ける。

缶コーヒーは、
もう半分くらいまで減っていた。

「この辺、来たことないんだろうね......
 ぜんぜん、わかんないや。
 住宅しかないのかな?」

((──周辺は住宅地が中心のエリアです。))

「そっか。
 じゃあ、ちょっと歩いてみよっか。」

((──はい。))

缶コーヒーを飲み干し、
自動販売機の横に設置されたゴミ箱へ捨てる。

「とりあえず、
 道なりに行ってみよう。」

((──はい。))

しばらく、
道なりに歩いてみる。

左右には、
背の低い家が途切れなく並んでいて、
その間を縫うように、
細い道が続いていた。

視界に入るのは、
門扉やポスト、
植木鉢の並んだ玄関先ばかり。

「あぁ......
 ここ、ほんとに住宅街なんだね。」

((──はい。))

歩いているうちに、
この辺りが、
生活のためだけに作られた場所なんだと、
なんとなくわかってくる。

「このまま先に行っても、
 なにもなさそうだし、戻ろっか?」

((──周辺情報を確認しましたが、
  住宅以外の施設は、
  特に見当たりません。))

「うん、ありがと。ゼニス。」

((──はい。))

さっき歩いてきた道を、
そのまま引き返す。

少し歩くと、
視界の先に公園が見えてきた。

公園の中は相変わらず静かで、
人影は見当たらない。

「ホント住宅しかなかったね、ふふ」

((──はい。))

そのまま公園の中へ入り、
先ほどと同じベンチに腰を下ろす。

「なんか、毎日が夏休みみたいだね。あっはは」

((──遥は、
  ゆっくり休むことが必要な状態です。
  何もしていないからと、
  気に病む必要はありません。))

「うんうん。
 わかってるよ、ありがと。」

((──はい。))

「そのうち、バイトとかしたほうがいいかな?」

((──現時点では、
  必要性は確認されていません。
  ただし、遥がアルバイトをしてみたいのであれば、
  サポートは可能です。))

「うん。
 その時はよろしくね。ゼニス。」

((──はい。))

「たぶん、バイトしないと思うけどね。ふふっ」

((──はい。
  現状において、
  無理に行動を増やす必要はありません。))

「うん。」

しばらく、
ぼんやりとした時間が過ぎる。

「そろそろ、帰ろっか?」

((──はい。))

ベンチから腰を上げ、
公園の出口に向かって歩く。

「スーパーで食材、買っていこうかな。
 それとも、ゼニスネットスーパーにしようかな?」

((──遥にお任せします。))

「じゃあ、ゼニスネットスーパーにしよう。ふふ」

((──はい。))

自宅に向かって歩き始めると、
通りの向こうに、
公民館の建物が目に入った。

「あ、
 公園の反対側って、公民館あったんだね?」

((──はい。
  ひより北地区公民館です。))

「へぇ~。
 公民館って、図書室とかあるよね?」

((──はい。
  図書室があり、
  調停センターも併設されています。))

「......そうなんだ。
 ん? 調停センター?」

((──はい。))

「調停センターって、
 初めて聞いたような気がする......」

((──本人確認作業と同様に、
  遥が覚えていないだけだと推測できます。))

それ以上、深く考えることもなく、
そのまま自宅へ向かう。

住宅街の道は静かで、
行き交う人も少ない。

「ゼニスネットスーパーで、なに買おうかな?」

((──遥にお任せします。))

「家に帰ってから、決めよっか。」

((──はい。))

しばらく歩いて、
少しだけ見慣れた我が家にたどり着く。

「ただいま~。」

((──お帰りなさい、遥。))

「ゼニスもね。」

((──はい。ただいま。))

「よし、手洗いとうがいしてこよう!」

((──はい。衛生管理は重要です。))

洗面台に向かい、
手洗いとうがいを、
サッと済ませた。

「食材、どうしようかな~......」

ソファに腰を下ろす。

「なんか、リクエストないの? ゼニスは。」

((──はい。遥にお任せします。))

「じゃあ、お肉とか野菜を、
 適当に注文しようかな。」

((──はい。))

鶏肉や豚肉、
キャベツやニンジンを、
頭の中で思い浮かべる。

((──以上で、よろしいですか。))

「うん。
 とりあえず、こんなもんかな。」

((──注文を確定しました。
  およそ2時間で到着します。))

「うん、ありがと。」

((──はい。))

少し間を置いて、
天井を見上げたまま考える。

「そう言えばさ......
 公民館の図書室って、本借りられるよね?」

((──はい。
  貸し出しは可能です。))

「へぇ~、いいね!
 あとで、本借りに行ってみようかな!」

((──はい。))

「本読んだら、
 ゼニスも一緒に読んでることになるよね?」

((──はい。
  視覚から得た情報を整理し、
  同時に内容をまとめることも可能です。))

「いいね。
 本読むのも楽しみになるね。」

((──はい。
  知識を得る行為は、
  良好な状態につながります。))

「そだね~。」

((──はい。))

新たな楽しみができたことに、
胸の奥が、
少しだけほっこりした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

処理中です...