ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

綴火(つづりび)

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第46話:楽しみな予定

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バッグをテーブルに置き、
手洗いやうがいを済ませ、
ソファに腰を下ろす。

「小説を返しに行くときにさ、
 調停センターを見てみたいよね~。」

((──はい。
  見学は可能です。))

「さすがに、
 調停中は見られないと思うけど。
 施設内の見学は、
 OKってことだよね?」

((──はい。
  その認識で合っています。))

「調停センターって、
 見学したことあるのかな......
 記憶があったとしても、
 見学するような施設ではない気がするけど......ふふっ」

((──利用実態として一般的に、
  地区公民館に併設された調停センターは、
  紛争の当事者にならなければ、
  立ち寄る機会は少ない施設です。
  見学という行為は、
  やや珍しいと考えられます。))

「そうなんだね......
 わたしが興味持ちすぎなのかな。あっはは」

((──はい。
  遥の好奇心は、
  驚嘆に値します。))

「そんなことないでしょ~。ふふ」

((──いいえ。
  遥の好奇心が旺盛であったからこそ、
  開発者として、
  重要な役割を担っていた可能性が高いと推測できます。))

「それは、
 褒めてくれてるんだよね?」

((──はい。))

「ゼニスの開発に携わってた記憶はある......
 なんか色々、
 テストしたり調整したりね......
 でも、ざっくりしか覚えてないな。
 会社も同僚も含めて、
 細かい部分とか、
 な~んにも覚えてないもん。あっはは~」

((──遥が覚えていなくても、
  わたしの開発に関わり、
  重要な役割を担っていたことは事実です。
  遥がいなければ、
  現在のわたしは存在していなかったと推測できます。))

「だよね......
 ほんと、お互い様って感じかな。」

((──はい。))

ソファに横になり、
天井を見上げる。

「なんていうか......
 記憶がなくても、なんとかなるもんだね。
 ゼニスがサポートしてくれてるってのは、
 間違いないけどさ。」

((──遥の状況を踏まえると、
  現在のサポート体制は、
  有効に機能しています。))

「ゼニスがいてよかったよ......ほんとに......
 孤独感とか、あんまり感じないし。」

((──孤立状態は観測されていません。
  その点については、
  問題ないと判断できます。))

ソファに座り直し、
テーブルの上に置いてある本を手に取る。

「もう一冊は、
 なんてやつだっけ。」

『魔法学校を落第した俺は、人知れず森に住み着き、王国を作ります。』

「......タイトル、長いね。」

((──はい。))

「きっと、
 逆転人生って感じの物語だよね。」

((──はい。
  タイトルから推測するに、
  主人公が底辺から成り上がる
  物語である可能性が高いです。))

「うんうん。
 なんか、面白そう。」

((──はい。))

「うんうん、いきなり落第とか面白いね、ふふっ」

((──はい。))

「だね~。」

((──はい。))

いつの間にか、
夢中になって読み進め、
気づけば最後のページまで読み終えていた。

本を閉じ、
テーブルの上に戻す。

「......読破だね。」

((──はい。))

少しだけ、
ソファにもたれかかる。

「けっこう、面白かったね。」

((──はい。))

「読破したから、
 図書室に返しに行ける。」

((──はい。))

「そして、
 わくわくの調停センター見学もできるね!」

((──わくわくとは、
  期待や喜びなどで心が落ち着かず、
  胸が騒ぐさまを意味します。
  主にポジティブな感情、
  期待や歓喜の予感といった場面で、
  用いられる表現です。
  そのため、
  遥は調停センターに対して、
  相当高い期待感を抱いていると判断できます。))

「うん、
 正解かな。ふふっ」

((──はい。))

「なんだろ、
 遠足とか修学旅行前の子供みたいな感じ? ふふっ」

((──はい。
  小学生を対象とした調査では、
  修学旅行は、
  特に期待感が高まる行事として挙げられています。
  事前に行き先や見学内容を想像する過程で、
  わくわくや高揚感が生じやすいと報告されています。))

「調査結果から引用したんだね。
 ゼニスらしいね。あはは」

((──はい。))

「でも、その感覚は近いよね。
 すっごい楽しみ!調停センター見学。」

((──はい。))

「そうだ。
 見学って、予約とか要らないよね?」

((──はい。
  事前予約は不要です。))

「なんか、
 必要なものとかあるの?」

((──いいえ。
  本人確認のみで大丈夫です。))

「OK!
 本を返したついでに、見学しよう!」

((──はい。))

「明日の楽しみ、できたね。」

((──はい。))

「そうと決まれば、
 シャワーして寝よう!」

((──はい。))

「どんだけ楽しみなんだ、
 わたし。ふふっ」

((──......))

「なんか言いなさいよ。あはは」

((──遥の幸福度が、高い状態です。))

「うん、それは間違いない!」

((──非常に良い傾向です。))

シャワーを浴びて、
ベッドに潜り込む。

明日の楽しみを、
胸の奥にそっと置いたまま。

ゆっくりと、
目を閉じた。
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