ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

綴火(つづりび)

文字の大きさ
82 / 83

第82話:AR(拡張現実)の可能性

しおりを挟む
ワゴン車は速度を落とし、
調停センターの正面入り口近くに停車。

スライドドアが開き、
佐藤さんと撮影クルーにお礼を伝え降りた。

胸にイルカのぬいぐるみを抱えて部屋まで戻る。

中に入りバッグをソファに置き、
ベッドにぬいぐるみと共にダイブした。

「水族館楽しかったね。うふふ」

((──うん。遥が楽しんでいる事は、
  データを通して伝わってきていたよ。))

「そだね~、幸福度もいい感じに上がったでしょ?あっはは」

((──うん。))

「とりあえず、着替えしたりしようかな。」

((──そうだね。))

脱いだ衣類をランドリーケースに入れ、
シャワーを浴びてソファに座る。

「ひより市に水族館があるとは本当に思わなかったよ。」

((──比較的新しい施設は、知らないものもあるかもね。))

「まぁ、そうだよね。知らないことの方が多いしね。」

((──うん。))

「あっ、そうだ。話変わるんだけどさ。」

((──うん。))

「対戦相手にポインター表示してくれてるじゃん、
 あれは、もう少し視認性を上げることはできないのかと思って......」

((──視認性を上げると言うと、
  ポインターの大きさや色を変えるといったイメージかな?))

「そうじゃなくてさ、なんだろ......
 負担かからないように色はなくてもいいんだけど、
 対戦相手に重なるような......VRみたいな感じ?」

((──遥が言っているのはVRで仮想現実だね。
  実際に考えていることはARで拡張現実になるよ。))

「あぁ~、それそれ~。ぜんっぜんっ、でてこなかったな~ARって......
 やっぱり記憶がね......欠落してるからなんだよね。」

((──仕方のない事だよ。だから気にしないで、遥。))

「んで、ポインターもARだから、
 それを少し大きく拡張して相手に重ね合わせたら、
 ゼニスの予測で相手の動きを先読みできるんじゃないかと思ったんだよね。」

((──理論的には、
  大きさを変えたものに予測行動を追加して投影するだけだから可能だよ。))

「今は、キューブとかポインターとか、小さいものじゃん。
 でも、これが人くらいのサイズになった場合、
 わたしの脳にかかる負担ってどうなのかなって......」

((──そうだね。少し計算するから待っていてね。))

ゼニスの光が暗くなったり明るくなったりと明滅を始めた。

((──お待たせ、遥。計算結果から伝えると、約28%の負担アップになるよ。))

「28%って......どうなんだろ?痛み28%アップじゃないよね?あはは」

((──単純に脳への負担が増える事で、痛みが発現するとは限らないよ。))

「そっか、それなら試してみて判断すればいいかな?」

((──遥との融合した時間などを計算すれば、
  以前と比較して脳の負担は軽減可能と推測できるよ。))

「痛かったら、一旦ストップだね。あっはは」

((──うん。始めるよ、準備はいい?))

「OK、いつでもこいっ。」

キューブ状のゼニスが視界から消え、
ぼんやりと人型の姿が表示されていく。

そこには、前回対戦した4401の姿があった。
薄っすら透けているけれど、しっかり判別できるレベル。

「おぉ~、すごいね。でも、少しだけ頭が重いかも......」

((──無理しないで、遥。))

目の前から4401の幻影は消え、
いつも通りのキューブ状へ戻っていた。

「少しだけだから、大丈夫だと思う。」

((──うん。違和感があったら、すぐに言ってね。))

「うん。これで、対戦相手を想定した練習もできるんじゃない?」

((──そうだね。慣らしながら、徐々に時間を伸ばしていこう。))

「わかった。ゼニスには負担とかないの?」

((──私に負担はないから、安心してね。))

「それならよかった。」

((──うん。))

「ちなみにさ、これって慣れるものなのかな?」

((──遥と融合している部分や領域などを考慮した場合、
  慣れていく可能性は高いよ。))

「そうなんだね~、慣れって恐ろしいね。あっはは」

((──......))

「えっ、なんかごめん。ふざける場面じゃなかったね。」

((──大丈夫だよ。遥らしくて良い傾向。))

「さっきのやつに色をつけたら、すっごい負担になるんだよね?」

((──そうだね。相当な負担になるよ。
  出力が上がり、脳が焼けてしまう可能性も0ではないかな。))

「おっ、おぉ~、サラッと怖いこと言うね。」

((──可能性は低いけど、負担を考えると止めた方がいいよ。))

「そだね、さっきので十分だと思うし。
 あとは、ゼニスの予測にかかっていると思う。ふふっ」

((──うん。遥のために予測演算を重視しつつ、
  勝率が上がるようにサポートしていくね。))

「うん、ありがと。なんか、わがまま言ってごめんね、ゼニス。」

((──気にしないで、遥。
  サバイバル・レジスタンスを乗り切るために遥が考えた事だから、
  決してわがままではないよ。))

「うん、頼りにしてる。」

((──うん。))

ゼニスは視界の隅で、
いつもより少し強く光を放っているように見える。

少しだけの変化だけど、
とても頼もしく心強く感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

処理中です...