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22 イライラ
スッキリとした爽快な気分で朝を迎えた俺は、ぐっと両腕を伸ばした。
触り心地の良い寝巻きが視界に入り、いつ着替えたんだろう? と昨晩のことを思い出した。
いきなりリュカにキスされて、流れるように押し倒されて。
戸惑っていたくせに、気づけば強請るようにリュカの名前を呼びながら抱きついて。
それからあらぬところを弄ばれて、リュカの綺麗な手が俺の白濁まみれになって……
「ッ、ぬおわああぁぁぁぁ~~っ!!!!」
何をやっているんだ俺はっ!
大声で叫びながら頭を抱えていると、慌てた様子のリュカが顔を出した。
「リオン殿下?! なにが?!」
「っ、リュカ……」
「どうされたんです?!」
俺に駆け寄り、何事もなかったことを確認したリュカは、驚かせないで下さいと溜息を吐いた。
いつも通りのリュカに、俺だけ意識して恥ずかしがっていることに居た堪れなくなる。
「なんでもない」
なんだかムカついて、むっとしながら素っ気なく答えてしまう。
昨日のことを思い出せば、リュカはなんだか手慣れているようにも感じたし、きっと俺だけじゃなくて、他の人ともあんないやらしいことをしているんだろう。
そう思うと、どんどん苛々が増していく。
リュカは俺専属の侍従なのに。
他の人とリュカが交わっていることを想像すると、胸がぎゅっと締め付けられた。
別にリュカと恋人同士なわけでもないのに、なんでこんなにイライラするんだろう。
だからやりたかなかったんだ。
流されて気持ち良くなっていたくせに、自分のことを棚に上げてリュカを責めるようなことを考えてしまう俺は、やっぱり性格が悪い。
うじうじとしながら、リュカとろくな会話もせずに身支度を整えた。
他の人と会話をすることもだるく感じて、俺は部屋で軽めの朝食をとった。
「セオドル殿下とジルベルト様とのお茶会には参加しますか?」
業務連絡のように淡々と話すリュカに、俺はリュカの顔も見ずに頷くだけで言葉を発しなかった。
時間になったら迎えに来ると告げたリュカは、静かに部屋を出て行った。
「なんなんだよ、もう……」
安定の素っ気無い態度に腹が立つ。
これじゃあ、まるで俺がリュカに恋してるみたいじゃん?
しかも片思い!
リュカは、全然俺に興味ない感じだし?
じゃないと昨日あんなことしておいて、次の日普通に接するとか出来ないはず!
腰まで真っ直ぐに伸びる黒髪を、がしがしと掻き乱す。
今日は髪に触られるのも恥ずかしくて、結わなくて良いと言ってしまっていた。
だって昨日みたいに慈しむように触られたら、俺はどうにかなってしまいそうだったんだ。
でも俺の心配を他所に、リュカは全く気にしていなかったけどな!
クソッ、髪が鬱陶しい!
部屋で一人悶々としていると、あっという間に時間が流れて、リュカが迎えに来た。
俯いたままリュカの後について行き、庭園に向かうと、すでにジルベルトが待っていた。
「ジルベルト、来てくれてありがとな」
「っ……」
そういえば、ジルベルトは行くなんて一言も言っていなかったけど、こうしてちゃんと顔を出してくれたことに嬉しくなって、俺は自然と微笑んでいた。
なぜかジルベルトは俺から視線を逸らして、口許に手を当てていたが。
まあ、十年間険悪な仲だったんだ。
少しでも目を合わせてくれるだけで、進歩したと言って良いだろう。
綺麗に整備された花を愛でながら席に着くと、ちょうどセオドル兄様が侍従を引き連れて現れた。
その中に、昨日セオドル兄様と睦み合っていた侍従はいなかったので、ほっと胸を撫で下ろした。
「リオン、昨日はごめんね? 会いに来てくれたんでしょう?」
「……ええ、まあ。お忙しそうだったので」
「ふふっ、見られちゃったかな?」
何が楽しいのか、にこにことするセオドル兄様をキッと睨みつけた。
可愛い顔して、あんな激しい抱き方をするセオドル兄様。
睨み続けていると、ジルベルトが俺の顔を覗き込んでくる。
ジルベルトの金髪が目に止まり、尻を叩かれて悦んでいた侍従の姿と重なって、かぁっと頬に熱が集まった。
「可愛いねぇ、リオンは」
「うるさい、です。そんなことより、昨日の子は……大丈夫なんですか?」
「ああ、彼なら異動になったよ」
「……は?」
「だって、つまらないんだもん」
頬杖をつきながら、俺の顔を凝視するセオドル兄様に、頬がピクピクと引きつった。
そんなセオドル兄様は、俺たちの会話についていけない様子のジルベルトにちらりと視線を向けた。
「ジルベルトは俺と婚約したいの?」
「え?」
「親の指示?」
「は、はぁ……」
セオドル兄様の質問に曖昧な返事をするジルベルトは、俺のことを心配そうにチラチラと見つめていた。
「俺はいろんな子と楽しみたいタイプだから、君一人を大切にすることは出来ないと思うけど、それでも良い?」
「……え?」
「だから、婚約したら一応君を抱くけど、俺サディストだから、優しく出来ないけど……良い?」
引きつった表情で口を閉ざしたジルベルトを、にまにまとしながら見つめるセオドル兄様に、俺の血管がプッツンと切れた。
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