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56 楽しい時間
王宮に戻り夕食の席に着くと、ちょうどセオドル兄様だけ席についていたので、俺はジルベルトとのことを話した。
ジルベルトが使用人たちから暴行を受けている件を話した時、セオドル兄様は全く驚いていなかった。
理由を聞けば、「あいつの顔を見ればわかる」と真剣な表情で語っていた。
俺の兄様は、洞察力が鋭い。
「リオンはジルベルトと婚約する気はあるの?」
「……はい、ジルベルトが望めばですが」
なにか言いたげにしながら、ふぅんとだけ返したセオドル兄様。
「そういえば、朝と髪型が違うね? 可愛い」
「あ! そうなんです! ジルベルトが結ってくれたんですよ! 人がやっているのを見ただけで出来ちゃうらしいです。天才だと思いません? あいつめちゃくちゃ器用で! 絵の才能もあるんですよ! ……って、ちゃんと聞いてますか?!」
リュカに視線を向けて、「やばっ」と口にするセオドル兄様。
何がやばいのかさっぱりわからない。
「リオンはジルベルトのことが好き?」
「え? 好きですよ?」
「あ。そ、そうなんだー、へぇー」
「自分から聞いておいて、全然興味なさそうですね?」
あはははは、と空笑いするセオドル兄様は、今日はいつもと様子が違う気がする。
「ジルベルトと婚約したとして、その時アーノルドが癇癪を起こさないか心配なんですよね」
「はぁ、リオンはどこまでも優しいね? 放っておけば良いのに」
「優しくはないですよ。ただ、ジルベルトに危害を加えられたら困るなって……」
「そっか。リオンはジルベルトのことをかなり気に入ってるみたいだね?」
「俺、頑張り屋さんが好きなんで!」
ニヒッと笑うと、セオドル兄様は複雑な表情で俺を見ていた。
「セオ兄様? 何かありましたか? いつもと違って真面目な雰囲気だから、違和感が……」
「失礼だね、リオン? じゃあさ、アーノルドは俺が貰っても良いのかな?」
「え! セオ兄様が、アーノルドを?! そっか。セオ兄様は可愛い子がタイプですもんね! なんで今まで気づかなかったんだ! 俺って馬鹿! セオ兄様ならアーノルドも喜ぶと思います!」
名案だと拍手を送る。
これでアーノルドの件は万事解決。
セオドル兄様はちょっと浮気性だけど、お姫様扱いは俺よりも格段に上手。
あとは、アーノルド自身が、セオ兄様に飽きられないように頑張れば良いだけだ。
「え……リオン、それ本気で言ってる?」
セオドル兄様がカラトリーを置いて、俺の方を向いて座り直した。
俺も真似して、食事そっちのけでセオ兄様と向かい合う。
「大真面目です。逆にセオ兄様は、本気じゃなかったんですか?」
「あ……そうか。ごめんね?」
「何に対する謝罪です? それで、アーノルドのことは任せても良いんですよね?」
「えぇ~~」
「セオ兄様っ!!!!」
めんどくさ~い、とふざけるセオ兄様の額を指でピンと弾いた。
「自分の発言に責任を持ちましょうね」
「もぉ~~リオンが別人になっちゃったぁ!」
泣き真似をするセオ兄様を見ながら、けらけらと笑っていると、ハロルド兄様が食堂に顔を出した。
「二人で何やってるの? 仲良しだねぇ」
「ハル兄様!」
「おお、リオン! 今日の髪型も可愛いね! 世の中の全ての人間がリオンに求婚しそうで、心配になるよ……」
「ふふっ、ジルベルトに結ってもらいました」
「え? ジルベルト?」
セオドル兄様にした説明をもう一度繰り返していると、ファーガス兄様も遅れて食堂に来る。
同じように髪型を褒められて、俺は自慢げにジルベルトのことを語った。
その度に、セオドル兄様がため息を吐いていたけど、セオドル兄様はジルベルトのことが苦手なのだろうか?
ジルベルトは可愛い系じゃなく、カッコイイ系だから、セオドル兄様のタイプではなさそうだけど。
「いつのまにジルベルトと仲良くなっていたんだい? アーノルドは良いの?」
「アーノルドは、セオ兄様担当です!」
「ぐぇっ……」
ハロルド兄様に聞かれて俺が得意げに答えると、セオドル兄様がおかしな声を出す。
いつものことだから気にしない。
「上手い具合に話が進んで、なんだかすっごくハッピーです!」
「はぁ……リオンは可愛いなぁ」
ハロルド兄様がうっとりとため息を溢し、王子様スマイルを披露する。
その様子を、ファーガス兄様が優しく見守っている。
俺の兄様達は揃いも揃って本当にイケメンすぎるぜ!
目の保養だと拝んでいると、セオドル兄様に「リオンが変なことしてるぅ」と腕を指先でツンツンと突かれて揶揄われた。
兄弟での楽しい食事の時間が、今の俺の最大の癒しの時間だ。
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