嫌われ王子様の成長 〜改心後、暴君の過去が役に立つこともある〜

ぽんちゃん

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103 兄弟じゃなかったら

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 情けなくも逃げ出した俺は、イケメンにされて嬉しいトップ五のうちの、バックハグと頭ぽんぽんのおねだりをして、慰めてもらっていた。

 仕事を後回しにして、俺の愚痴を延々と聞き続けてくれるファーガス兄様は、世界で一番優しい人だと思う。

 「一つ、気になることがあるんだが」
 「はい」
 「ジルベルトへの好意と、リュカへの好意は、同じ気持ちなのか?」
 
 今まで黙って話を聞いてくれていたファーガス兄様からの質問に、俺は目を瞬かせる。

 「それは……。自分でもわからないです。でも、ジルベルトは俺のことを完全に許したわけではないと思うので、恋人になりたいとか、そんな風には……」
 「なるほどな? リオンの本命はリュカか」
 「っ……」

 まだなにも言っていないのに、俺の顔を覗き込んだファーガス兄様は、ふっと笑う。

 「ち、違いますっ!」
 「リオンはわかりやすいな?」

 何度否定しても、くつくつと笑っているファーガス兄様に、俺はぷくっと頬を膨らませた。

 そんな俺の顔を見てまた笑ってくる。
 なんて意地悪な兄様なんだっ!
 不貞腐れる俺に、すまないと謝罪をする兄様だが、俺を揶揄って楽しんでいるらしい。
 それでも沈んでいる俺に、とことん付き合ってくれる兄様が大好きだ。

 優しく微笑む兄様から顔を背けた俺は、今も包み込んでくれている腕をぎゅっと掴んだ。

 「で、でも、兄弟じゃなかったら、俺の本命は、ファギー兄様だったと思います……」
 
 恥ずかしすぎるが俺の本心を告げると、背後から息を呑む音がした。
 振り返ろうとしたのだが、強く抱きしめられる。

 「私も同じ気持ちだ」
 「っ…………や、やったッ! 来世では、恋人になってるかもですね?」

 舞い上がっておかしなことを言ってしまったが、お世辞でも嬉しいと、にまにまする。
 だが、どうしてかファーガス兄様が、なかなか俺から離れない。

 もしや、弟から好きだと言われて照れてる?
 ……なんて可愛いんだっ。
 
 照れた顔が見たいと思ってしまう俺は、強引に振り返った。

 目尻を赤らめる麗しいお顔を拝んだのだが、さっきまでとは違って、なんだか苦しそうに見えた。

 「兄様……? ひゃッ!?」
 
 ゆらゆらと揺れている深海色の瞳を見つめていると、急に抱き上げられる。

 無言のファーガス兄様は、寝台まで一直線に向かっていた。
 ぽすりと優しく寝かされて、ファーガス兄様の謎な行動に唖然とする。

 そんな俺に覆い被さるファーガス兄様は、険しい表情で唇を噛んでいた。

 「っ、駄目だ……」

 なにかを呟いた兄様に見下ろされる。
 綺麗な瞳に見惚れていたのだが、目は伏せられた。

 「ふれあいの練習、ですか?」
 「…………」
 「ファギー兄様?」
 
 おずおずと頬に触れてみると、ゆっくりと瞼が持ち上がる。
 獲物を見つけた肉食獣のようなギラギラとした瞳に、俺の体は無意識にぶるっと震えていた。

 頬に触れていた俺の手を取った兄様は、俺の指に口付ける。
 色っぽい仕草にごくりと唾を呑むと、兄様が俺の指を喰んだ。

 ふれあいの練習だと察したのだが、ぺろりと舌で舐められて、手が震えてしまった。

 「ぁッ」
 「…………続けても良いか?」
 
 腰に来る美声にぞくりとする俺は、ギラつく瞳を見上げて小さく頷く。
 ただ、指を優しく舐められているだけなのに、肌が粟立つ。
 早く唇にも触れて欲しいと願っていると、口をふさがれていた。
 
 「んっ……」
 
 首に腕を回してしがみつくと、俺の口内に熱い舌が侵入してくる。
 ゆったりとした口付けに溺れていると、どんどん激しさを増す。

 「はぁっ……ん、……っ……んぁっ……」
 「……っは」
 
 口付けの合間に漏れる艶やかな息遣いに、ドキッとする。
 気付けば、互いを求めるように深い口付けを交わしていた。

 息も絶え絶えになっていると、唇を離した兄様は、俺の口の端を拭ってくれる。
 ふれあいの練習なのに、体が昂っている俺は、とろんとした目で兄様を見上げた。

 「っ……リオン、いいか?」

 ぽつぽつと俺のシャツのボタンを外すファーガス兄様。
 それをぼうっと見ていたのだが、今日はキスより先に進む気なのだとわかり、俺は慌てて兄様の手を掴んだ。

 「嫌か?」
 「っ、ちがいますっ。そうじゃなくて……」

 目を伏せて、ぶんぶんと首を振る。

 口付けだけで蕩かされているのに、これ以上されたら、俺は十中八九醜態を晒してしまう。
 恥ずかしいし、情けない姿を見られたくない。

 そう思って恐る恐る見上げると、どこか悲しげに微笑むファーガス兄様。
 ぎゅっと胸が締め付けられて、俺は兄様の頬を撫でていた。
 
 「俺が……兄様に、触れたいっ」
 
 届くかどうかもわからないような小さな声だったが、切れ長の目がカッと見開かれる。

 なぜか今にも泣き出しそうな顔になったファーガス兄様は、唇を噛み締めた。
 手を伸ばして、そっと唇に触れると、熱っぽく見下ろされる。
 
 「っ、ファギー兄様の唇に、傷がついちゃう」

 ふっと笑みを溢したファーガス兄様は、俺をキツく抱きしめた。

 「なんていい子なんだ……」
 
 耳元で聞こえた声に、ぶるりと震える。
 またしても誤解されているのだが、ファーガス兄様に好かれるなら良いかと、俺は大きな体を抱きしめ返した。
 






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