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104 怖い ※

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 尊敬する兄に裸を見られることが恥ずかしくて、上掛けを頭まで被る俺は、一糸纏わぬ姿でファーガス兄様に抱きついていた。

 そんな俺に、可愛いと呟くブラコンの美丈夫は、全身が触れ合っている状況でも、気分を害してはいないようだ。

 胸元に頬ずりをしてみると、優しく包み込んでくれる。
 引き締まった身体は、腹筋も六つに割れており、見事な肉体美である。
 普段は机に向かう姿しか見たことがなかったから、少し意外だった。

 「心地いいな」
 「はい……」

 俺の頭に頬を寄せたファーガス兄様が、うっとりと呟く。
 その声にドキドキしている俺は、なんとか返事をした。

 「そろそろ、リオンの体を見たいんだが」
 「っ、それはダメです」
 「恥ずかしいか?」
 「だって……兄様、すごくいい身体してるから……。お、俺は、見せられない、です」

 ぽろりと本心を告げる俺に、ファーガス兄様が小さく笑った。

 「それを言うならリオンだろう。吸いつきたくなるような綺麗な肌だ」

 指先で背中をツーッと撫でられて、兄様に俺の昂りを押し付けてしまう。
 だが、兄様のご立派なアレが俺の腹に当たって、恥ずかしすぎて顔から火が出そうになった。

 「~~っ、い、一旦、離れてくださいっ」
 「なぜだ?」
 「なっ、なぜって……。それは、その……に、兄様のおっきいの、当たってるから……」
 「っ……あまり煽らないでくれ」

 離れて欲しいとお願いしたはずなのに、なぜかぎゅうっと強く抱きしめてくるファーガス兄様。

 ……実は、あまのじゃくな性格なのか?
 意外な一面だと思っていると、腹部が濡れていることに気付いた。
 
 グイッと胸元を押して見下ろすと、兄様の性格のように真っ直ぐとそそり勃つ陰茎からは、透明な蜜が溢れていた。
 そっと太い陰茎に触れると、ピクピクッと生き物のように動く。

 「くっ……」
 
 ゆっくりと竿を扱くと、色っぽい吐息が聞こえた。

 透明な汁が漏れる先端に、ごくりと唾を飲む俺は、気付けばそこに顔を寄せていた。
 ぺろりと舐めると、少しだけ苦い味がする。
 ハッとして離れようとしたのだが、兄様が俺の頭を優しく撫でた。

 きっと気持ちが良いんだと感じ取った思った俺は、思い切ってぱくりと先端を咥える。
 やり方はイマイチわかっていないが、口の中で亀頭を舐めたり吸ったりしてみた。

 じゅぷっと厭らしい水音がして、その音を俺が出しているんだと思うと、カッと体が火照る。

 「んっ……」
 「っ……リオン、もっと奥まで……」
 「んんッ、ほっきくて、むり、だぉ……」

 わしゃわしゃと頭を撫でられて顔を上げると、頬を上気させているファーガス兄様と視線が交わる。

 熱を孕んだ深海色の瞳が、激しく揺れ始めた。
 怒っているようにも見えて、ぶるりと震える。

 すると、軽く舌打ちをしたファーガス兄様が、俺の後頭部に手を回す。
 奥まで咥えるように、グッと力を入れられて、ぐぷぐぷと飲み込んでいく。

 「んッ、んんぅっ……」
 「っ……」

 無言のファーガス兄様が怖くて、俺の目からぽろぽろと涙が溢れた。

 必死に涙を止めようとしたけど、なかなか止められない。
 口内の太い陰茎が苦しいからじゃなくて、いつもと違う兄様が怖かった。

 気持ち良くしてあげたいのに、俺は兄様の陰茎を咥えながらしゃくり上げてしまう。
 無言で俺を見下ろしていた兄様が、夢から醒めたかのように、ハッと息を呑んだ。
 
 「…………リオン?」
 「ふぇっ、ひっく……うぅ……ッふぅぅ……」
 「リオン! すまないっ、苦しかったか?」

 ファーガス兄様が慌てて腰を引き、俺の口から兄様の陰茎がズルリと引き抜かれた。
 口の中に何もなくなり、俺は声を堪えることができずに本気で号泣していた。

 「すまないっ、本当にすまなかった」
 「やっ、こわい、にいさま、こわい、こないで」
 
 怖いと連呼する俺に、ファーガス兄様は呆然としていたが、すぐに俺を抱きしめようと動く。
 俺はそんな兄様をぺしぺしと叩いて、近づかないように抵抗した。

 「リオン、許してくれ。怖い思いをさせてすまなかった、謝る。もうしないから」
 「やだ、にいさまきらい、あっちいって! おれに、さわらないで!」

 腕をぶんぶんとさせて必死に抵抗していたが、泣きじゃくる俺は、ファーガス兄様に強く抱きしめられていた。

 「本当にすまなかった。リオンが可愛すぎて、何年かぶりに、もう、すぐにでも出そうだったから、つい……」
 「………………え?」

 何年かぶりに? 出そうだった?

 ファーガス兄様の言葉に驚いて、止めどなく流れていた俺の涙が簡単に引っ込んでいた。

 「でも、兄様、俺に怒って、舌打ちしてた……」
 「は? 私がリオンに怒るわけないだろう。舌打ちしたのは、無意識のうちに……その、すまなかった……」

 誰にも言い負けないファーガス兄様がしどろもどろになる姿にも驚いたけど、それ以上に不能だと言っていた兄様が、俺の口でイキそうになっていたという事実に驚いた。

 「怖がらせてすまなかった。もう寝よう。リオン、一緒に寝てくれないか? 私はリオンに嫌われたままでは、一人で寝れそうにない」

 切実な声で語るファーガス兄様に、俺は戸惑いながらもこくりと頷いた。

 いつもの優しい眼差しで、俺の涙を拭ってくれた兄様に安心していたのだが、兄様の陰茎は力なく垂れ下がっており、非常に申し訳ない気持ちになっていた。






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