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109 衝突
しおりを挟む夕方まで寝ていて元気が有り余っている俺は、さっそくカール君にもらった紅茶を飲もうとしたのだが、リュカに奪い取られてしまった。
『毒が入っている可能性がありますので』と言われてしまえば、俺はなにも言えなくなる。
まあ、確かに可能性はゼロではないかもしれないけど。
仲良くなったと言っても、少し話しただけだしな?
俺はカール君に貰った紅茶を渋々諦めて、リュカに紅茶を淹れてもらった。
うん、美味しい。
「先程のロバート様との会話のことですが。リオン殿下は、ファーガス殿下と致したのですか?」
「ブフ──ッ!!!!」
「……汚いですよ」
俺が紅茶を口に入れた瞬間を狙ったのかはわからないが、素晴らしいタイミングで話をぶち込んできたリュカ。
思わず紅茶を吹き出して、着替えたばかりの部屋着を汚してしまった俺は、再度着替える羽目になった。
もう一度着替えた俺は、少し冷めてしまった紅茶を飲んだ。
リュカからの質問を無かったことにしたかった俺は、「冷めても美味しいな!」と、リュカの淹れてくれた紅茶を大袈裟に褒めた。
「お褒めにいただき光栄です。それで、リオン殿下はファーガス殿下と、どのようなことをされたのですか?」
「…………」
俺のいじめっ子侍従は、先程の質問をなかったことにはしてくれないようだ。
リュカにはなんでも話したかったけど、ファーガス兄様とロバート様の個人的な秘密の話だ。
話したいけど話せない。
そんな思いからか、自然と俯いてしまう。
「ごめん。話せない……」
リュカにはジルベルトがいるんだから、俺が誰と何をしようとどうでも良いだろ?
そんなことを考えていたからか、少し突き放した口調になってしまう。
返事がなくて、チラリと視線を上げる。
なんでも話していた俺がリュカに話さなかったからか、酷く傷ついた顔をしているように見えた。
だが、リュカが頭を下げ、表情が見えなくなる。
「個人的なことを聞いてしまい、申し訳ありませんでした」
業務連絡のような淡々とした返事に、俺は溜息を堪える。
ゆっくりと顔を上げたリュカは、いつも通りの無表情だった。
以前なら「どうしたんです? 私で良ければ話を聞かせてください」って、優しく聞いてくれていたのに。
今そう言われても話せないのだけど、それでももう少し気遣って欲しかった。
そんな我儘なことを考えていると、リュカがジルベルトに会いに行こうと言い始めた。
勝手に一人で行けば良いだろう。
なんでわざわざ俺を誘うんだよ?
意味がわからない。
実はジルベルトとお付き合いしてます! とか、そんな報告か?
まじでいらないから! もう知ってるし!
ファーガス兄様とロバート様の仲睦まじい姿を見て、幸せをお裾分けしてもらったばかりなのに、リュカのせいで全てが台無しだ。
……別にリュカのせいではないけど、憎たらしくて仕方がない。
「リオン殿下? 聞いておられますか?」
「……うるさいな、聞いてるよ!」
「どうしたんです?」
「どうもこうもない。ジルベルトに会いたいなら一人で行けば良いだろ?」
吐き捨てるように言うと、無表情のリュカが俺の手を取った。
「触んな!」
「……何か誤解しています」
「誤解? 俺は何も誤解していない! 離せ!」
俺の手を握るリュカの大きな手を外そうとするが、骨が折れそうなほど強い力で握られる。
どんだけ馬鹿力なんだよ!
キッと睨みつけたのだが、リュカが怯むことはない。
「話を聞いてください。ジルベルト様との婚約についてです」
「っ、今話さないといけないことなのか?!」
「ですから、そのことについてジルベルト様からお話が……」
「俺は! 少し時間をくれってアイツに言っただろ?!」
「リオン殿下、落ち着いてください」
落ち着いていられるか!
ジルベルトジルベルトってうるさいんだよ。
リュカの口からジルベルトの名前が出るだけで吐き気がする。
俺は怒りに任せて、気づけば大声で怒鳴っていた。
これ以上惨めな姿を見せたくなくて、俺はリュカに手を握られたまま廊下に出た。
「出てけ!」
「っ、リオン殿下!」
「うるさい! 黙れ! 聞きたくない!」
「お願いします、聞いてください!」
「ジルベルトジルベルトうるさいんだよ! そんなにジルベルトが好きなら、俺の侍従なんかさっさと辞めて、ずっとあいつの傍にいたら良いだろ?」
息を荒げながら告げると、リュカはあんなに強く握っていた俺の手を、いとも簡単に離した。
揺れる新緑色の瞳を見つめて、なにを戸惑う必要があるのだろう? と、溜息を吐く。
「最初からジルベルトにつけてやれば良かった。気が利かない主人で悪かったな」
「っ、私は、生涯リオン殿下の侍従です!」
「うるさい! 心にもないことを言うな! さっさとジルベルトのところに行けよ!」
「っ、ですから! リオン殿下がいなければ、話が進まないのです!」
話が平行線のまま、ジルベルトとの婚約話ばかりしてくることに苛ついて、俺はリュカの胸ぐらを掴んで壁に押し付けていた。
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