110 / 211
110 情けない自分
しおりを挟む「わかったよ、ジルベルトと婚約する。それで良いんだろ?」
そう問いかけた俺の顔は、きっと酷く醜く歪んでいると思う。
「……リオン殿下、誤解しています」
「はあ? なにが誤解なんだよ。一から説明してやろうか? お前がジルベルトと一緒に居たいから、俺とジルベルトを婚約させようとしてるんだろ? だから俺はジルベルトと婚約するって言ってるんだろ! 俺はお前の大切なジルベルトを守る。これで満足か?」
無抵抗のリュカを睨み続けていると、俺達の間に大きな体が割り込んできた。
「一体何があったんだ?」
「っ、ファギー兄様……」
優しく腕を取られて、俺はリュカの胸ぐらから手を外した。
「とりあえず、私の部屋に行こう」
ファーガス兄様の声に周りを見れば、使用人達が集まってきていた。
俺が騒いでいたから、誰かがファーガス兄様を呼んできてくれたのかもしれない。
申し訳ない気持ちのまま、俺はファーガス兄様に付き添われて、大人しく兄様について行った。
◆
俺とファーガス兄様とロバート様の三人が、先程まで笑顔で食事をしていた卓で、難しい顔で座っている。
ちなみにリュカは、セオドル兄様の部屋に避難したらしい。
「騒ぎを起こしてしまって申し訳ありませんでした……」
「いや、かまわない。だが、何があった?」
「……リュカが、俺とジルベルトとの婚約話ばかりするからムカついて……。俺はジルベルトに、もう少し時間をくれって言ってるのに……」
膝の上に置いた拳をぎゅっと握りしめる。
暴力を振るうつもりはなかったが、リュカの胸ぐらを掴んでしまった。
冷静になった今、後悔の念に駆られる。
「私も最初から聞いていたわけではないが、リュカは誤解だと言っていなかったか?」
「はい。それは、二人が恋仲だから……」
「それが誤解なんじゃないか? 二人にそう言われたのか?」
「いえ、聞かないように避けていたので……」
唇を噛み締めて情けない面をする俺に近寄るファーガス兄様は、俺の頭を優しく撫でる。
「二人が想いあっているなら、応援しないとって思っていたんですけど……。今日のリュカはしつこくて……我慢が出来なくなって……」
「なんでだろうな?」
「多分、兄様とのことを聞かれて、俺が話さなかったから……それで機嫌が悪くなって……」
ふむ、と考え込んだファーガス兄様。
「どう見ても二人は友人関係だと思うがな?」
「前も言いましたけど、ジルベルトの怪我の薬を俺が塗るって言っても、ジルベルトは俺じゃなくてリュカが良いって言ったんですよ? そのあと二人が、めちゃくちゃ仲良くなってるしっ!」
少し首を傾げながらうんうんと頷いてくれるファーガス兄様。
話を聞いてくれる兄様の優しさに、俺は愚痴が止まらなくなった。
「ふとした瞬間に、二人が見つめ合っていたり、息ピッタリで俺の名前を呼んでくるんです。まあ、ジルベルトは俺なんかよりめちゃくちゃカッコイイし、リュカが一目惚れしても仕方ないんですけどね? それでも、俺の前でしか笑わなかったリュカが、ジルベルトと肩を組んで笑ってて……」
思い出しながら話していると、どんどん悲しい気持ちになって、ぽろぽろと涙が溢れていた。
「リュカが……。最初にリュカが、ジルベルトと婚約した方が良いって言ったんですよっ?! さっきもしつこいから、俺はジルベルトと婚約する! って宣言したのに、不満そうな顔するし……っ! もう意味がわからないっ!」
発狂して泣き叫んだ俺は、暫くグズグズと女々しく泣いていた。
そんな俺を二人が優しく慰めてくれる。
せっかくの二人の時間を俺に割いてしまって、本当に申し訳ない。
俺が泣き疲れた頃に、今まで黙っていたロバート様が口を開いた。
「リオンちゃんは、ジルベルトのことはどう思っているんだ?」
「好きです、友人として……」
過去に俺がしでかしたことを思えば、それ以上の感情は持ち合わせてはいけないと思う。
そうと告げると、顔を見合わせた二人が、困ったように笑う。
「侍従のリュカのことは?」
「……好きです」
「友人としてではないんだな?」
「…………はい」
少し考えた俺だが、すぐに頷いていた。
だって、こんなに胸が痛くなるのは、きっと俺がリュカのことを、恋愛対象として好きだから……。
85
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
悪役の僕 何故か愛される
いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ
王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。
悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。
そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて…
ファンタジーラブコメBL
不定期更新
異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた
はちも
BL
異世界転生した元腐男子の伯爵家三男。
病弱設定をうまく使って、半引きこもり生活を満喫中。
趣味と実益を兼ねて、こっそりBL漫画を描いていたら──
なぜか誠実一直線な爽やか騎士の幼馴染にバレた!?
「……おまえ、俺にこうされたいのか?」
そんなわけあるかーーーっ!!
描く側だったはずの自分が、いつの間にか翻弄される立場に。
腐男子貴族のオタ活ライフ、まさかのリアル発展型BLコメディ!
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる