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129 ライバル発見
しおりを挟む優しさの塊、もとい、俺の恋人のジルベルトは、自分も昂っていたのに、俺の体を清めてくれ、体調は大丈夫かと心配してくれる。
もう、優しいの一言では片付けられないくらい優しいのだ。
移動するにも常にお姫様抱っこだし、情事が終わった後も、ジルベルトは俺を愛でながら愛の言葉をどストレートに伝えてくる。
アフターフォローがえげつないくらい完璧なのだ。
好き……。
すっごく好きっ。
俺の王子様に腕枕をしてもらい、心地良さそうに目を伏せている俺は、心の中で恋人に告白しまくっている変人だった。
「リオン、愛してるよ」
さらっと愛の言葉を告げられた俺は、うっとりとしながらジルベルトを見上げる。
こんなイケメンが俺に愛を囁いているだなんて、夢でも幸せすぎるだろう。
改心した俺への特大のご褒美である。
「リオン?」
「おっ、おれも……あ、あいしてる……」
「っ、本当?」
顔を覗き込まれて、恥ずかしい気持ちを全力で堪える俺は、こくりと頷いた。
「ぅん。じゃないと、あんなとこ、触らせないし……」
空色の瞳をキラキラとさせて、嬉しそうにはにかむジルベルト。
こっぱずかしくなる俺は、どこを見て良いのかわからずに、きょろきょろと視線が彷徨う。
そんなダサい俺の髪を愛で続けているジルベルトがくすりと笑った。
馬鹿にしているのかとムッとする俺は、ジルベルトの頬を抓ってやる。
もちろん、すっごく優しくだ。
「そっ、それに! あんなところで感じるなんて、愛の力としか思えない!」
堂々と告げて、フンッと生意気な顔をすれば、逆にジルベルトはきょとんとした可愛らしい顔だ。
かっこいいのにかわいいとか、なんて罪な男なんだっ!
悶えていると、急にジルベルトが笑い出した。
「ぷっ、クククッ……」
「……おい。なにがおかしい」
「ふふっ、いや? 可愛いなって思って、クッ」
くつくつと笑い続けるジルベルトに、俺はぷくっと頬を膨らませてジト目を向ける。
笑いを堪えるジルベルトが、俺の顔を見てまた笑い出す。
俺は拗ねた顔をし続けているけど、内心ジルベルトの笑った顔が見れたことに喜んでいた。
「怒らないで? 本当に愛おしいと思ってるだけだから。リオンの言う通り、愛の力で気持ち良くなったんだよ。だから、恋人以外には触らせないように、約束して?」
「うん、言われなくても。ジルベルト以外は無理だ」
何も言わずに曖昧な笑みを返すジルベルトに、俺は首を傾げた。
「さっきは無理やりしてごめん……。リオンに俺だけを見て欲しかったんだ……」
「俺は、ジルベルトしか見えていないぞ?」
「……今はね」
なにかを呟き、悲しげな表情を隠すように、俺を抱きしめるジルベルト。
俺は爽やかな香りを嗅ぎながら、背中を優しく撫でる。
そして胸元から顔を上げた俺は、にこりと微笑んだ。
「大好きだぞっ、ジル……」
しんみりとしていたジルベルトに愛称で呼ぶと、ぱぁっと顔を綻ばせて喜んでいた。
それから触れるだけの優しいキスをしながら、俺はずっと「ジル」と呼び続けた。
◆
「おーい、リオン! どこ見てるんだ? 戻ってこーい!」
幸せなひと時を思い出していた俺の目の前に、手がヒラヒラと動いている。
気付けばセオドル兄様が、不思議そうな顔で俺を見ていた。
「ふふっ、セオ兄様、ごめんなさい。ちょっとジルのことを考えていました」
「ジル?」
「あ、ジルベルトです。俺、ジルベルトと恋人になったんですっ! ふふっ」
口許を綻ばせていると、兄様三人がこれでもかと目を見開いていた。
そりゃあ、驚くだろうな?
俺は昔からジルベルトを虐めていたのに、今じゃ恋人同士なんだから。
てへっ。
めちゃくちゃ愛されてるんだぞ!
俺の恋人は、アヘ顔の俺も最高に可愛いって言ってくれる、奇特な男なんだ!
「リ、リオン? 恋人はジルベルトだけなの?」
そう言って、きょろきょろと視線を彷徨わせるセオドル兄様。
俺はハッと鼻で嗤って、しらけた目を向けた。
「俺をセオ兄様と一緒にしないでもらえますか? 俺はジルに操を立てますよ」
絶句する三人を他所に、俺は黙々と料理を口の中に放り込む。
……食事中にする話じゃなかったか?
「あ、このことはジルパパには秘密でお願いします。ジルが、ジルパパに認められてから婚約の話をしたいって。真面目な頑張り屋さんなんですよ? 俺の恋人は……。くふっ」
「そ、そそそ、そうなんだぁ~! あははは」
「ええ。セオ兄様、ジルに惚れないでくださいね? 俺の恋人ですから」
「うっ、うん! もちろん!」
「……怪しい。ジルはめちゃくちゃ魅力的な男ですからね。兄様たちが惚れても仕方ないですけど」
そう言って肩を竦めると、セオドル兄様の頬がぴくぴくと引きつっている。
……まさか、すでにジルベルトに目をつけていたのか?
今更自分の婚約者候補だと言われても、絶対に譲らないぞと、俺はセオドル兄様を威嚇する。
「俺、セオ兄様がライバルになっても、負けませんから」
「うん。ちょっと落ち着こうか」
「セオ兄様には、金輪際、俺の手料理を食べさせません」
「っ、なんでそうなるのぉぉぉおおお~~~~っ!?!?」
茶色料理が大好きになっていたセオドル兄様の悲痛な叫びが、食堂にこだましていた。
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