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131 鈍感な俺
しおりを挟む昨日の夕飯時のこと。
ジルベルトのことを根掘り葉掘り聞いてくるセオドル兄様に、俺は兄様が恋のライバルだと判断し、正々堂々立ち向かった。
セオドル兄様にだけ、肉野菜炒めを食べさせないという、究極の嫌がらせをしてやったのだ。
泣いて縋り付くセオドル兄様に、ジルベルトを諦めさせた俺は、完全勝利した。
兄様がジルベルトを想っていることは、本人には絶対に教えるつもりはない。
そう思っていたのに……。
褒めて欲しくて仕方がなかった俺は、恋人の顔を見た瞬間に得意げに報告していた。
「セオ兄様になにかされそうになったら、すぐに俺に言ってくれ。ジルのことは、俺が必ず守るからな!」
手が早いから、ジルベルトも気を付けてくれと話すと、目も覚めるような空色の瞳は、びっくりするほどキラキラに輝いていた。
喜んでいることが伝わってきて、俺はふふんと胸を張った。
「っ…………クッソ可愛い、なんだこの生き物。まごうことなき天使だろっ。ここは天界だったのか……?」
「ん? なに?」
「ゴホン……。いや、さすがリオンだな。すごく頼もしいよ。守ってくれて嬉しい」
恋人が心の狭い野郎だと気付かずに、可愛い可愛いと愛でているジルベルトは、すごくピュアだと思った。
仕事中も終始ご機嫌なジルベルトは、休憩時にすぐさま俺を寝室に招き入れる。
昨日とは打って変わって、恋人をかまうジルベルトは、どうやら俺がイチャイチャしたいぞビームを送っていたことに気付いたらしい。
ジルベルトとは以心伝心していると思う。
以前までは全く触れ合うことがなかったのに、今は当たり前のようにくっついていることが、未だに夢なのではないかと思うが、幸せいっぱいだ。
過去の時間を埋めるように、たくさん話して、触れ合って、想いを伝えあっている。
……いや。
正確には、ジルベルトが俺に気持ちを伝えてくれている。
ヘタレな俺は、十回好きだと言われて、ようやく『俺も』と返すのがやっとだ。
ソファーに座るジルベルトの足の間にいる俺は、背後からぎゅうぎゅうと抱きしめられていた。
にまにましていると、ジルベルトの手が俺のシャツのボタンを器用に外していく。
「ジル?」
「ちょっとだけ……」
「ンッ!」
背中に吸いつかれて、たまらず声が漏れる。
慌てて両手で口を塞ぐ俺は、ぷるぷると震えながら背を反らす。
逃げるなとばかりに体を引き寄せられて、舐めたり吸ったりを繰り返される。
「んんぅッ……」
口に押し付けている俺の手の上に、ジルベルトの手が重なった。
背中に吸い付いていたジルベルトが、俺の耳元に顔を寄せる。
「静かに……。リオンの可愛い声は、誰にも聞かせたくない」
「っ……んッ!」
耳に色っぽい声を吹き込まれて、ぶるりと震える。
ちゅうっと吸われては、傷を癒すようにぺろぺろと舐められる。
いくら休憩中とはいえ、ジルベルトの行動に驚きを隠せない。
なにがあったんだと思考を巡らせつつ、必死に声を押し殺す。
……俺は、背中が性感帯だったらしい。
「んっ、んんんぅッ……ジルッ!」
「っ、は………。ごめん」
無理やり手を剥がして振り返ると、俺が酸欠になっていることに気付いた様子のジルベルトが、ハッと目を見開く。
違うんだと呟きながら、ふるふると首を振っているジルベルトは、明らかに様子がおかしい。
すぐに俺の服を整えてくれたのだが、落ち込んでいるような気がした。
何度も謝罪されるのだが、俺は気にしていないと金色の髪をなでなでする。
「なにかあったのか?」
「……いや」
「ジル?」
「もう休憩時間は終わりだな。ああ、そういえば、飛び出す絵本を作ってみたから、子どもたちに見せに行こうか」
明るい声色で話したジルベルト。
これ以上話したくないのだと察した俺は、なるべく笑顔を作って頷いた。
口頭で伝えただけなのに、出来上がった飛び出す絵本は、俺が求めていたそのもので……。
俺の恋人は天才だった。
子供たちも大喜びで、壊さないように慎重に触れながらも、何度も読んでいた。
その姿を眺める俺たちは、二人でほっこりする。
◆
ジルベルトと別れて部屋に戻った俺は、恋人の様子がおかしいことがどうしても気になっていた。
ジルベルトが悲しそうな顔をしたのは、俺とリュカが手を繋いでいた時……。
もしかしたら、俺の初恋の相手がリュカだと気付いているのかもしれない。
それで不安になっているのか……。
俺はなんて鈍感な男なんだと頭が痛くなった。
頭を抱えていると、テキパキと湯浴みの準備をしていたリュカに声をかけられる。
「リオン殿下、そろそろ湯浴みを……」
「ああ、リュカ。本当ごめん、これから湯浴みは一人でしたい」
一瞬固まったリュカだが、笑顔で頷いてくれた。
「リュカの仕事を奪ってごめんな」
「いえ、私も楽になります。リオン殿下の子守をする必要がなくなりましたので」
「オイ。俺はもう成人してるぞ! 本当は、全部自分で出来るんだからな?」
口を尖らせると、リュカはくすりと笑った。
「お傍に置いてくださって、感謝しております」
珍しく俺を敬うような発言をしたリュカは、あとは一人でどうぞとさっさと部屋を出て行った。
リュカも自由時間が増えて嬉しいのかもなと、少しだけ寂しい気持ちになる。
でも、俺以上にリュカが傷付いていることに、この時の俺は、気付くことができなかったんだ。
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