嫌われ王子様の成長 〜改心後、暴君の過去が役に立つこともある〜

ぽんちゃん

文字の大きさ
131 / 211

131 鈍感な俺

しおりを挟む

 昨日の夕飯時のこと。

 ジルベルトのことを根掘り葉掘り聞いてくるセオドル兄様に、俺は兄様が恋のライバルだと判断し、正々堂々立ち向かった。
 セオドル兄様にだけ、肉野菜炒めを食べさせないという、究極の嫌がらせをしてやったのだ。
 
 泣いて縋り付くセオドル兄様に、ジルベルトを諦めさせた俺は、完全勝利した。
 兄様がジルベルトを想っていることは、本人には絶対に教えるつもりはない。
 そう思っていたのに……。

 褒めて欲しくて仕方がなかった俺は、恋人の顔を見た瞬間に得意げに報告していた。

 「セオ兄様になにかされそうになったら、すぐに俺に言ってくれ。ジルのことは、俺が必ず守るからな!」

 手が早いから、ジルベルトも気を付けてくれと話すと、目も覚めるような空色の瞳は、びっくりするほどキラキラに輝いていた。
 喜んでいることが伝わってきて、俺はふふんと胸を張った。

 「っ…………クッソ可愛い、なんだこの生き物。まごうことなき天使だろっ。ここは天界だったのか……?」
 「ん? なに?」
 「ゴホン……。いや、さすがリオンだな。すごく頼もしいよ。守ってくれて嬉しい」

 恋人が心の狭い野郎だと気付かずに、可愛い可愛いと愛でているジルベルトは、すごくピュアだと思った。



 仕事中も終始ご機嫌なジルベルトは、休憩時にすぐさま俺を寝室に招き入れる。
 昨日とは打って変わって、恋人をかまうジルベルトは、どうやら俺がイチャイチャしたいぞビームを送っていたことに気付いたらしい。

 ジルベルトとは以心伝心していると思う。

 以前までは全く触れ合うことがなかったのに、今は当たり前のようにくっついていることが、未だに夢なのではないかと思うが、幸せいっぱいだ。

 過去の時間を埋めるように、たくさん話して、触れ合って、想いを伝えあっている。
 ……いや。
 正確には、ジルベルトが俺に気持ちを伝えてくれている。
 ヘタレな俺は、十回好きだと言われて、ようやく『俺も』と返すのがやっとだ。



 ソファーに座るジルベルトの足の間にいる俺は、背後からぎゅうぎゅうと抱きしめられていた。
 にまにましていると、ジルベルトの手が俺のシャツのボタンを器用に外していく。

 「ジル?」
 「ちょっとだけ……」
 「ンッ!」

 背中に吸いつかれて、たまらず声が漏れる。

 慌てて両手で口を塞ぐ俺は、ぷるぷると震えながら背を反らす。
 逃げるなとばかりに体を引き寄せられて、舐めたり吸ったりを繰り返される。

 「んんぅッ……」

 口に押し付けている俺の手の上に、ジルベルトの手が重なった。
 背中に吸い付いていたジルベルトが、俺の耳元に顔を寄せる。

 「静かに……。リオンの可愛い声は、誰にも聞かせたくない」
 「っ……んッ!」

 耳に色っぽい声を吹き込まれて、ぶるりと震える。

 ちゅうっと吸われては、傷を癒すようにぺろぺろと舐められる。
 いくら休憩中とはいえ、ジルベルトの行動に驚きを隠せない。
 なにがあったんだと思考を巡らせつつ、必死に声を押し殺す。

 ……俺は、背中が性感帯だったらしい。

 「んっ、んんんぅッ……ジルッ!」
 「っ、は………。ごめん」
 
 無理やり手を剥がして振り返ると、俺が酸欠になっていることに気付いた様子のジルベルトが、ハッと目を見開く。

 違うんだと呟きながら、ふるふると首を振っているジルベルトは、明らかに様子がおかしい。
 すぐに俺の服を整えてくれたのだが、落ち込んでいるような気がした。

 何度も謝罪されるのだが、俺は気にしていないと金色の髪をなでなでする。

 「なにかあったのか?」
 「……いや」
 「ジル?」
 「もう休憩時間は終わりだな。ああ、そういえば、飛び出す絵本を作ってみたから、子どもたちに見せに行こうか」

 明るい声色で話したジルベルト。
 これ以上話したくないのだと察した俺は、なるべく笑顔を作って頷いた。

 口頭で伝えただけなのに、出来上がった飛び出す絵本は、俺が求めていたそのもので……。

 俺の恋人は天才だった。
 
 子供たちも大喜びで、壊さないように慎重に触れながらも、何度も読んでいた。
 その姿を眺める俺たちは、二人でほっこりする。



 ジルベルトと別れて部屋に戻った俺は、恋人の様子がおかしいことがどうしても気になっていた。

 ジルベルトが悲しそうな顔をしたのは、俺とリュカが手を繋いでいた時……。
 もしかしたら、俺の初恋の相手がリュカだと気付いているのかもしれない。
 それで不安になっているのか……。
 俺はなんて鈍感な男なんだと頭が痛くなった。

 頭を抱えていると、テキパキと湯浴みの準備をしていたリュカに声をかけられる。

 「リオン殿下、そろそろ湯浴みを……」
 「ああ、リュカ。本当ごめん、これから湯浴みは一人でしたい」

 一瞬固まったリュカだが、笑顔で頷いてくれた。

 「リュカの仕事を奪ってごめんな」
 「いえ、私も楽になります。リオン殿下の子守をする必要がなくなりましたので」
 「オイ。俺はもう成人してるぞ! 本当は、全部自分で出来るんだからな?」

 口を尖らせると、リュカはくすりと笑った。

 「お傍に置いてくださって、感謝しております」

 珍しく俺を敬うような発言をしたリュカは、あとは一人でどうぞとさっさと部屋を出て行った。

 リュカも自由時間が増えて嬉しいのかもなと、少しだけ寂しい気持ちになる。
 でも、俺以上にリュカが傷付いていることに、この時の俺は、気付くことができなかったんだ。














 





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

処理中です...