嫌われ王子様の成長 〜改心後、暴君の過去が役に立つこともある〜

ぽんちゃん

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183 どちらにせよ、愛してる

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 いつまでも薄い唇を啄んでうっとりしていると、さりげなく誘導されて、俺はジルベルトの膝の上に乗っていた。
 
 頬を撫でられて薄らと目を開けると、空色の瞳と視線が交わる。
 顎を引いたジルベルトがキスをやめ、俺はまたしても棒立ちになっていた。

 もっとしたくて拗ねた顔をすれば、すっと色っぽい目つきになったジルベルトが、俺を優しく抱きしめてくれる。

 「誘ってる?」
 「っ…………ち、違うっ」

 恥ずかしくて否定する俺は、ジルベルトの胸元にしがみついている。
 言っていることとやっていることが正反対なのだが、ジルベルトは小さく笑った。

 「そっか。残念」
 「っ、」

 いつものように可愛いって言われて、抱っこで寝室に行くのだと思い込んでいた俺は、ジルベルトの言葉に絶句していた。

 「部屋まで送るよ」
 「っ……あ、う、うん……いや、大丈夫、ひとりで、戻れるから……」

 咄嗟に遠慮する言葉を吐いたが、いつものジルベルトなら『恋人の特権』だと言って、優しくエスコートしてくれる。
 それなのに、「そろそろ寝ないとな……」と呟いたジルベルトは、寝室に視線を向けた。

 あれだけ過保護だったジルベルトが、まさかの俺の子守りを放棄した……。

 昔は嫌われていたから、こんな対応が当たり前だったけど、今はショックすぎて俺は頭の中が真っ白になっていた。

 「リオン? どうしたの?」
 「…………」
 「俺はもう寝るけど……」

 ジルベルトが立ち上がり、ハッと意識を覚醒させた俺は、このまま自室に戻ったらいいのに、もっと一緒にいたくておろおろする。

 魅了魔法を使用すべき展開なのだが、なにも考えられない。

 半泣きで見上げると、綺麗な顔をくしゃっとさせたジルベルトに抱き寄せられていた。

 「ごめん、やっぱり俺には無理だ……」
 「……ジル?」
 「リオンの積極的な姿が見たくて意地悪しちゃったけど……。俺は、リオンにはめっぽう弱いんだ」
 
 そう言って、また膝の上に乗せてくれたジルベルトは、何度も可愛らしく触れるだけのキスをする。

 なにがなんだかわからないまま、顔中にキスをされている俺。

 黒髪を大切そうに愛でるジルベルトは、俺をまじまじと見つめながら、ゆるりと首を傾げた。

 「魅了魔法を使っている気になっているところも、めちゃくちゃ可愛いんだけどさ……。リオンは魔法なんて使わなくても、誰よりも魅力的だよ?」
 「っ、」

 なぜバレているんだと焦る俺は、目が泳ぎまくる。
 そんな性悪男に向かって、愛おしいとばかりの視線を送るジルベルトは、小さく笑みをこぼした。

 「この間の事件で、証明されたんだよね? リオンが魅了魔法を使用してないって」
 「っ……う、うそだろっ」
 「ホントだよ? でもね。もし、リオンに魅了されていたとしても、俺は別にかまわない。魔法を使っていようがいまいが、どちらにせよ、俺はリオンを愛してるから」

 そう言って、優しく口を塞がれた俺は、強張っていた体の力が抜けていた。

 微笑みあっていたのだが、罪悪感に押しつぶされそうになる。

 「ごめん、なさぃ、俺……ジルに、嫌われたくなくて……」
 「うん。わかってるよ? どんな手を使ってでも、俺を手放したくないんだって伝わった」
 「っ、ごめっ、ん……嫌いに、なった……?」

 声が震えてしまうが、じっと顔色を窺っていると、薄い唇からは甘い息が漏れる。

 「いや? もっと好きになったよ」
 「……本当?」
 「うん。でも、積極的なリオンもちょっとだけ見たかったな?」

 口角を上げたジルベルトの言いたいことがわかった俺は、じわじわと頬が熱くなっていく。

 なんて言ったらいいんだと、ぐるぐると考えている俺を、ジルベルトはずっと待ってくれている。

 意を決した俺は、大好きな空色の瞳を見つめた。


 「キ、キスしながら……したぃっ」
 「仰せのままに、俺の可愛いお姫様」


 普段見慣れているはずの俺ですら見惚れてしまうほどの美しい笑みに、心臓がバクバクと激しく音を立てる。

 顔を真っ赤にする俺を見て、嬉しそうに笑ったジルベルト。
 優しく俺をお姫様抱っこし、寝室に向かって歩き出した。
 途中、耳元で「優しくするね」と囁かれた俺は、ジルベルトがかっこよすぎて、気絶しそうだった。

 ちなみに、可愛いお姫様でもなんでもない平凡な俺は、ただジルベルトにしがみついて「ひゃい!」と答えた。
 ……うん、噛んだ。
 王子様のようなジルベルトに比べて、俺はダサ過ぎる。
 そんな俺を愛おしそうに見つめるジルベルトは、どこまでも完璧なのに、視力が弱い。たぶん。

 脳内で愛してるぞと連呼する俺は、寝台の上に下ろしてもらったが、ジルベルトを寝かせた。

 恋人に覆い被さる俺は、本日は抱く側に回ることに決め、深呼吸をした。


 「きょ、今日は、俺が頑張る、からっ! は、初めてだけど……」
 「っ、そういう積極性はいらない」


 矢継ぎ早に話したジルベルトがなにを言っているのか聞こえなかったのだが、俺はいつのまにか押し倒されていた。


 「いつまでも慣れないリオンが可愛いから、頑張らなくていいよ」
 「う、うん……?」


 素早い身のこなしで恋人に覆い被さるジルベルトは、なぜかめちゃくちゃ焦った顔をしていた。

 ……そんな顔もかっこいい。






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