婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚約編

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 「シュヴァリエ様、おめでとうございますっ!」
 「……いや、違うんだが……」

 ハァと小さく溜息を吐いた私は、虚な目で「ありがとう」と答え続けていた──。


 
 愛する人と添い寝をし、幸せなのに一睡も出来なかった私は、寝起きも爽やかなリュセと共に、仲良く食堂に向かっていた。
 すれ違う使用人全員が声をかけてくれ、キラキラとした目で私たちを見ている。

 彼らが期待するようなことをしてはいないのに、心から祝福されていた……。

 普通ならば、使用人から主人に声をかけることなどない。
 そんなこととは知らないリュセは、『使用人の人たちにも慕われているんですねっ』と、彼らと同じように魅力的な黒い瞳を輝かせている。

 もうリュセが喜ぶならなんでもいいかと、私は微笑むだけにしておいた。

 

 食堂に行けば、こちらも勘違いをしている父とセバスが「おめでとう」と祝福の言葉を告げる。
 私がなにか言う前に二人が涙ぐみ、席につこうとしていたリュセがぎょっとする。

 「ハッ! もしかして、今日はシュヴァリエ様のお誕生日ですか?! ど、どうしようっ。なにも用意していませんでした」
 「…………違うぞ?」

 初日から、私たちが夜を共にしたと、知れ渡っていることなど思いもしていないリュセは、とんでもない勘違いをしている。

 困ったように微笑んだ私は、天然なところも可愛いリュセの頭を優しく撫でた。
 たったそれだけのことなのに、頬を紅潮させるリュセは、スキップしそうなほど喜んでいる。

 昨晩は私を寝台に招き入れたというのに……。
 初心なのか、大胆なのか、わからない。
 だが、とにかく愛らしくて仕方がなかった。

 「リュセは……」
 「はいっ」
 「……なぜ、こんなに愛らしいのだろう……?」

 他人と共に添い寝をしたことは、私にとっては初めての体験だった。
 しかも、その相手が愛する人なのだから、うかうか眠れるはずもない。
 間違いなく寝不足なのだが、私の心は幸せな気持ちで満たされていた。

 気付けば、今にもスキップしそうだったリュセが棒立ちで、両手で顔を隠している。

 「っ、すまない。声に出していたか?」
 「うっ……」
 「ククッ、リュセの癖がうつったみたいだ」

 指の隙間から恨めしそうな目を向けられてしまったが、可愛すぎて笑ってしまった。

 「ついに理性が焼き切れたな? まあ、無理もないだろう」
 「そうですね、なにせこんなに愛らしいお方なのですから。なにもしない方がどうかしています」

 ようやく席についた私たちを見守る父とセバスが、またなにやら勘違いをしているが……。
 放っておくことにする。

 そんなことより、リュセと寝食を共にするという夢のような生活が送れることに、胸がいっぱいなのだから……。





 幸せな気持ちのまま職場に向かえば、部下たちの視線が突き刺さった。
 今までは、学園やサルース商会でリュセの姿を見ることは出来たが、これからは違う。

 声をかけて来ることはないが、リュセとのことを聞きたくて仕方がないのだろう。
 あわよくば、お茶会に招待してほしいと、皆の顔に書いてあった。

 特に気にせず着替えを済ませたのだが……。
 朝礼中も、鬱陶しいくらいに視線を送って来る。

 「ハァ、仕方がない。お茶会を開いた時には、招待してほしいと話しておく」
 「「「っ、ありがとうございますっ!!」」」
 「さすが副団長っ!」
 「……こんな時だけ持ち上げるな」

 女神様に会えるとはしゃぐ団員たちは、ようやく真面目に訓練をする気になったようだった。

 リュセも喜ぶだろうと思いながら訓練場に向かえば、黒地の隊服を着た五人組が、道を塞ぐように立っていた。

 「本当にリュセ様が、婚姻の準備を進めているのか……?」
 「ああ。既に公爵邸に滞在しているらしいぜ?」
 「だがまあ、半年の間でなにが起こるかわからないしな? 俺たちにも、チャンスがあったりして」
 「はははっ。私たちもリュセ様を迎える準備をしておくか?」

 わざと私に聞こえるように話す第一騎士団の連中は、美しい顔が台無しになるような、ゲラゲラと下品な笑い声をあげていた。










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