婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

文字の大きさ
53 / 100
婚約編

15

しおりを挟む


 褒め上手なセバスさんからお仕事を教わり、なにをしても褒められる一日を過ごした僕は、最後にシュヴァリエ様を出迎えるという超重要任務を失敗していた……。

 それなのに、誰よりも僕に甘いシュヴァリエ様は、みんなの前で熱烈なハグをしてくれたんだ。
 一日の疲れが、瞬時に吹っ飛んだ。

 ……といっても、別に疲れるようなことはしていないのだけど。

 「困ったことはなかったようだな?」
 「はいっ。セバスさんは優しいし、教え方も上手だったので楽しかったです! 使用人の方々とも、仲良くなれたと思いますっ」
 「リュセが楽しく過ごせたなら、よかった。でも、無理はしないようにな? 少しでも大変だと思ったら相談してほしい」
 「っ、ありがとうございますっ!」

 力になると話してくれたシュヴァリエ様は、頼もしすぎる存在だ。
 お言葉に甘える僕は、唯一大変だったことを話すことにした。

 「実は……使用人の人たちに敬語を使わないようにすることが、一番大変でした。みんな僕より歳上なので……」

 えへへと笑うと、シュヴァリエ様だけでなく、話を聞いていた使用人の人たちも、驚いたように目を丸くしていた。

 「僕、なにかおかしなことでも言いましたか?」
 「……ククッ。相変わらずだな、リュセは」

 頭をぽんぽんされて喜ぶ僕は、シュヴァリエ様と共に夕飯の席に向かう。

 いずれ公爵夫人になるとはいえ、今はまだシュヴァリエ様の婚約者だ。
 みんなに認めてもらうには、まだまだ時間がかかるだろう。

 僕が使用人の名前を覚えた時点で、『そこの君』としか呼ばれたことのない人たちから、好意的に見られていることを知らない僕は、より親しくなれるように頑張ろうと心に決めていた。





 寝る準備を整えた僕の部屋に、ガウン姿のシュヴァリエ様が訪れる。
 いつものようにソファーに並んで腰掛け、今日の出来事を互いに話した。

 時折、髪を掻き上げたり、足を組み替える姿が色っぽくて目に毒だったけれど、聞き上手なシュヴァリエ様となら、いつまでも話していられる。

 「それで、秋には狩猟大会があるんだ。毎年不参加だったが……。今年は参加しようと思っている」

 そう宣言したシュヴァリエ様は、今日は第一騎士団の人たちに絡まれたらしい。
 この間、シュヴァリエ様だけを愛すると宣言したばかりなのに、まだ僕たちの仲を引き裂こうとする人たちがいるみたいだ。

 また騎士団に足を運んで、僕がシュヴァリエ様一筋なところを見せる必要があるかもしれない。
 不快に思ったけれど、いつもなら無視をするシュヴァリエ様は、今日は言い返したそうだ。

 ……僕のために。

 きっとかなり勇気を振り絞ってくれたんだと察した僕は、ぐっと拳を握りしめた。

 「シュヴァリエ様なら、絶対に優勝できますっ! 今日絡んできたナルシスト集団に、シュヴァリエ様の凄さを見せつけてやりましょうっ!」
 「ククッ……。ナルシスト集団か。リュセの目にはそんな風に見えているんだな?」

 くつくつと喉を鳴らしたシュヴァリエ様に、愛おしそうに見つめられる。

 「頑張ってみるよ。リュセのために……」

 甘い声で囁いたシュヴァリエ様と見つめ合う。

 真剣な話をしていたのに、急にとっても甘い空気になって、心臓がドキドキうるさい。
 頬が熱くなってしまうけれど、真っ直ぐに見つめ続ける。

 「リュセ……」

 僕の名を囁いたシュヴァリエ様に、そっと熱い頬を撫でられて、さらに熱くなる。
 恥ずかしくてぎゅっと目を閉じた僕は、シュヴァリエ様と二度目のキスをした……。

 「そろそろ寝ようか」

 さっきまで喋り倒していた僕だけど、今はこくりとだけ頷くと、シュヴァリエ様が小さく笑った。

 恥ずかしすぎて、無言で手を引く僕。
 シュヴァリエ様は自室に戻る気満々だったことにも気付かずに、寝台に連れ込んでいた。
 
 「リュセっ、その、今日は……」
 「腕枕、してほしいですっ」
 「うぐっ……」

 なにやらもごもご話しているシュヴァリエ様を見上げると、目を開けたまま固まっていた。
 いつまで経っても動く気配がないから、勝手に腕を拝借する僕。

 「明日も、寝る前にお話しましょうねっ」
 「…………」
 「ふふっ、またすぐに寝ちゃったっ。寝つきがよすぎるっ」

 すりすりと頬ずりをする僕は、僕に腕枕をさせられている人が気を失っていることにも気付かずに、花の香りに包まれて、すぐに眠りに落ちていた。










しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした

Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話 :注意: 作者は素人です 傍観者視点の話 人(?)×人 安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される

木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

王子様から逃げられない!

一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

狂わせたのは君なのに

一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

処理中です...