100回目の口付けを

ぽんちゃん

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その後

38 ユーリは僕のもの

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 「首筋を熱い舌で舐められて、ぁっ、ジュッと吸いつかれた、ンンッ……、はぁ……、私は、赤い花弁のような所有印をつけてもらう。綺麗な指先が、私のピンと尖った、む、胸の飾りをっ、ひぁっ……も、もぅ、むりだよぉ~、ゆーりぃ……」

 大好きな恋人と朗読会をしている僕は、官能小説を読みながら、本の内容と同じ行為をされている。

 ソファーに腰掛ける恋人の足の間にすっぽりとおさまる僕は、逃げられないように後ろから抱きしめられて拘束されていた。

 「ヴィー、そんな文章どこにもないよ?」
 「っ……耳元で、喋らないで」
 「なんで? ヴィーは耳が弱いの?」
 「よ、弱いかはわからないけど……。僕、ユーリの声が、すごく好きだから……。ぞくぞくするっ」
 「……あぁ、もう。たまらないな、ヴィーは」
 
 耳元で話すのをやめてとお願いしているのに、わざと話を続けて、時たま吐息を吹きかけてくるユーリに、相変わらず高熱が出ている僕は終始たじたじになっていた。

 「そ、それに、僕一人で読んでる……んっ、」
 「ヴィーが言ったんでしょ? たまには読んであげるって」
 「っ……そ、そうだけど。んぅっ……まさか、こんな……エッチな本だと、思わなかったんだもんっ! あっ、や、ゃぁ……っ」
 
 くつくつと笑うユーリは、優しく僕の耳を喰み続けている。

 「ぼ、僕も、所有印? ユーリにつけたい」
 「………………襲うぞ」
 「うん? 何?」
 「いや、なんでもないよ? ヴィーが可愛いなって言っただけ」

 僕の首筋に顔を埋めるユーリは、すんと匂いを嗅いで感嘆の声をあげる。
 ……恥ずかしすぎてたまらない。

 朗読中にちょっかいをかけ続けるかっこいい恋人に振り返った僕は、えいっと胸元のシャツを広げて、筋肉で少し盛り上がる胸に吸い付いた。

 「んっ、」
 「………………」
 「あれ? 全然ついてない。もう少し強く?」

 赤い花弁がつくまで、逞しい胸筋にちゅっちゅしまくっていると、ふるふると身体が小刻みに震えている。

 チラッと顔を見上げると、大きな手を口許に当てて、頬を上気させる色っぽいユーリが僕を見下ろしていた。

 「ユーリ? 痛かった?」
 「……いや、全然」
 「じゃあ、もう少しやってみるね?」
 
 眉間に皺を寄せて、深く息を吐いたユーリは、僕が胸元に吸い付いている間、ひたすら天井を見上げていた。

 それから何度も挑戦して、ユーリの胸元にたくさん所有印をつけることができた僕は、満足げに頷いた。

 「これでユーリは僕のもの」

 官能小説通りならば。

 ふふっと上機嫌に笑う僕は、この間お友達になったユメルさんに、ユーリは学園時代にモテモテだったことを聞いてしまったのだ。

 みんなに塩対応だったから『氷の王子様』って呼ばれていたらしい。

 愛想を振りまいていたわけではなかったから喜ばしいことだけど、ユーリは僕の王子様なんだから、少しだけモヤッとしてしまった。
 
 それに謝罪後は、騎士団員達にも先輩後輩関係なく好かれていることを知っている。

 圧倒的に強いから、後輩くん達は特にユーリにキラキラとした視線を送っているんだ。

 そんなユーリを影から覗いている僕は、立派なストーカーに成長してしまった。

 自分でも思うけど、ユーリが好きすぎて本当気持ち悪い。

 たくさんの赤い印のつく胸元にこてりと頬を寄せた僕は、ユーリの少し速い心音を聞きながら、こっそりとため息を吐く。

 そんな僕を抱き上げたユーリは、膝の上に跨るように座らせる。

 「俺もヴィーにつけたい」
 「えっ……こ、この体勢で?!」
 「嫌なの?」
 「い、嫌じゃなくてっ、恥ずかしい、から……」

 片方の口角の上がるユーリは、僕が恥ずかしがるといつもちょっと悪そうな顔をする。

 その顔がまたかっこよくて、胸がドキドキしすぎて心臓に悪い。

 そして、僕の顔を凝視したまま所有印をつけるユーリがエロすぎて、鼻息が荒くなってしまう。

 普段は身長差で見下ろされているけど、今はユーリが上目遣いで見つめてくるから、所有印を一つつけられる度に、無駄にビクッと反応してしまう。

 そんな僕ににやりと不敵に笑うユーリが色っぽくて、たまらずユーリの顔に抱きついた。

 ユーリの腕が僕の背に回って優しく抱きしめてくれる。

 そのことにほっとしていると、急に胸の飾りをぺろりと舐められて、驚きすぎて飛び跳ねた。

 「ひゃあっ!!」
 「ククッ……」
 「もう! ユーリっ!」

 ぷりぷりしたままユーリを見下ろすと、楽しそうに笑いながら、僕の胸の飾りに舌を伸ばす。

 「っ、や、やだっ」
 「ん? 気持ち悪い?」
 「……ち、違うけど、恥ずかしいっ」
 「ヴィーは何をされても恥ずかしいんだな? そんなところも可愛いんだけど」

 くつくつと喉を鳴らすユーリにむっとする僕は、そっぽを向いて「ユーリがするから」と呟いた。

 他の人にされても擽ったい、というより本気で気持ち悪いだけなんだけど、僕は大好きなユーリに触れられると、何をされても気持ち良くなっちゃう変態なんだ。

 心の中で文句を垂れていると、顎を掬われて熱の孕む黄金色の瞳と視線が交わる。

 「ヴィー。あんまり可愛いことされると、俺も限界。……だから、恥ずかしくても我慢して?」
 「っ、む、むりだよぉ……」
 「ククッ。悪いけど諦めて? ヴィーはもう、俺のものだから」

 恍惚とした表情で僕に優しく口付けたユーリは、期待するように尖った胸の飾りにも、同じように優しく口付けるのだった。
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