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治癒を終えても、ドレーゼ侯爵令嬢は恍惚とした表情でテレンスに話しかけている。
レヴィが聖女となれる可能性が低いと発覚し、本日の聖女候補お披露目の場で、テレンスはレヴィを選ばなかった。
そのことから、テレンスは婚約を見直す可能性があると判断したのだろう。
ドレーゼ侯爵夫妻に勝ち誇った顔を向けられ、レヴィは居た堪れなくなっていた――。
(その場所に立つのは、僕だったはずなのに……)
有能な聖女候補として、テレンスの手を取り、癒やす瞬間を何度も夢見て来た。
親元を離れて十年間、ずっとだ。
テレンスを癒やす相手はレヴィしかいないと、信じて疑っていなかった。
しかし今のレヴィは、婚約者どころか、誰からも声をかけられることなく、置物となっている。
劣等生だとわかった瞬間に、持て囃していた人々はレヴィのもとから離れていた――。
久々に再会した両親は、レヴィに失望し、既に教会から去っている。
正しくは、レヴィを溺愛する歳の離れた兄――ユリアンに叩き出されたわけだが……。
それでも、息をするのもままならないほどの重い気分になっていた。
(……今は、そばにいてほしかったな……)
我儘だとわかっている。
ぐっと唇を噛み締めたレヴィは、他の令嬢と言葉を交わすテレンスから目を逸らした。
教会を訪れる時、テレンスはレヴィを優先し、他の聖女候補には挨拶をするくらいで、他愛もない会話をするところを見たことがなかったのだ。
聖女として素質がないと判断された時と同様に、胸が苦しくて仕方がない。
テレンスの婚約者として相応しい人間であろうと努力し続けていたレヴィだが、すっかり自信をなくしていた――。
遠巻きにレヴィを眺め、こそこそと話している貴族の視線を小さな体で受け止め続ける。
逃げ出したくてたまらない。
しかし、第二王子殿下の婚約者であるレヴィが、醜態を晒すことは許されなかった――。
レヴィの大きな瞳に熱いものが溜まっていく。
少し触れられたなら、零れてしまうだろう。
それでも決して泣くものかと、レヴィは己の太腿を強く抓っていた。
「――治癒を頼みたい」
気配なく現れた人物の低い声が、レヴィの頭上から聞こえる。
目の前の相手を呆然と、首が痛くなる程に見上げるレヴィは息を呑んだ。
細身で優しげな風貌のテレンスとは違い、野生味のある雄々しい美貌の持ち主が、レヴィをじっと見つめていたのだ。
「っ……ベアテル、さま……」
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