召喚された最強勇者が、異世界に帰った後で

ぽんちゃん

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 レヴィがウィンクラー親子と話していると、アカリとテレンスが挨拶に来たのだが、周りの者たちはどこかそわそわとしていた。
 なにせ、勇者に対するマクシムの態度は、お世辞にも褒められるようなものではなかったからだ。
 それでもアカリは、果敢に話しかけていた。

「私と手合わせをしていただけないでしょうか?」

 己よりも体格の良いマクシムに挑もうとするアカリの意欲的な姿勢に、レヴィは感服する。
 しかし、マクシムは違った。
 レヴィをそばに置くマクシムは、「ベアテルで充分だろう」と、息子を名指ししていた。

「それはそうなんですけど……。できれば、ウィンクラー辺境伯にお願いしたいのです」

「――断る」

「っ……」

 今まで頼られたことはあれど、拒否されたことのなかったアカリは、呆気に取られる。
 そして、勇者の申し出を一蹴いっしゅうしたマクシムに、レヴィは度肝を抜かれていた。
 それでも咎められないのは、マクシムが過去に魔王討伐部隊の一員として、何度も活躍してきた猛者だからかもしれない、とレヴィは思った。

「っ、どうしてですか?」

 マクシムに拒否されても食い下がるアカリは、どこか焦っている様子だった。
 魔王討伐を目前に控え、アカリは不安を感じているのかもしれない。
 アカリを心配するレヴィだったが、マクシムの無愛想な態度は変わらなかった。

「私が王都に来た目的は、勇者殿のためではない。それに、私と手合わせをしたところで、然程意味はないだろう」

 要するに、実戦で力を身につけてこい、とマクシムはアカリに告げたのだ。
 歴代最強の勇者だと噂されているアカリだが、騎士との訓練を積んでいるものの、今まで魔物を見たことすらない――。

「私でなくとも、そこに次代の英雄がいるだろう。彼に指導してもらったらどうだ?」

 含み笑いをしたマクシムが、テレンスに視線を投げる。
 いやいや、と謙遜するテレンスだったが、頬を引き攣らせていた。

(でも、おかしいな。勇者様とマクシム様、どちらが強いかは、みんなが興味を持つと思ったんだけど……)

 テレンスや騎士たちは、マクシムを咎めるどころか、アカリに諦めさせようとしていた。



 マクシムと共にクローディアスのもとへ向かったレヴィだったが、不安で落ち着かない気分を掻き立てられる。
 だが、ロッティがマクシムの頭に乗ったことで、辺りは笑いに包まれ、和やかな時間に変わっていた。

 ……しかし。


「――なぜ、クローディアスの好物を知っていたんだ?」


 ベアテルに耳打ちをされ、今、そのことを追求するかと、レヴィの心臓は激しく音を立てる。
 テレンスと約束しているため、レヴィが動物と意思疎通が図れることを話すことはできない。
 なんと言い訳をしようかと考えていると、ベアテルが話し始めた。

「あなたは、クローディアスの心の声が聞こえるんだな」

「っ……」

「もしかすると、ロッティの声も……? 動物の心の声が聞こえるのか」

 核心に迫る発言に、レヴィは動揺を隠せない。
 打ち明けてもいないのに、ベアテルにレヴィの秘密がバレてしまった。
 正確には、心の声というより、動物と会話ができるのだが……。
 緊張から、レヴィはごくりと唾を飲んだが、なぜかベアテルが赤面する。

「……ベアテル様?」

「っ、いや、なんでもない。気にしないでくれ」

 空を仰ぎ見たベアテルが、さっと両手を頭に乗せた。
 追求されていたはずのレヴィより、ベアテルの方が挙動不審である。

(ベアテル様には、本当のことを話したいっ。きっと、馬鹿にするような目を向けられることはない、と思うから……)

 もしもベアテルが、レヴィの話を信じてくれたなら、クローディアスとも打ち解けられるだろう。
 その時は、ロッティのことも話したい。
 見た目とのギャップが凄いのだと、話したい。

 わくわくとした未来しか見えない――。

 明るい未来を想像してしまったレヴィは、我慢ができなかった。

「もし、僕が動物の声が聞こえると言ったら……ベアテル様は、信じてくださいますか?」

「当たり前だろう」

「っ、」

 即答したベアテルに、レヴィは息を呑んだ。
 真っ直ぐにレヴィを見つめる黄金色の瞳は、真剣そのものだった。
 どんなことがあろうとも、ベアテルはレヴィを信じてくれている。
 聖女候補お披露目の儀式の時と同じ、熱のこもった瞳を前にし、レヴィは目を逸らすことができなかった――。

「あなたは、嘘をつくような人ではない」

 そう言い切ったベアテルを見つめ、レヴィはたまらない気持ちになる。
 感極まるレヴィは、勝手に体が動き出す。

「ベアテル様が、無事に帰還しますように――」

 最大の祈りを捧げたレヴィは、特別な人に心からの笑みを見せる。



 気力が漲るベアテルは、絢爛けんらんたる輝きを放つ銀色の星屑が、滝のように己の全身に流れる様を、しかと目に焼き付けていた――。













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