召喚された最強勇者が、異世界に帰った後で

ぽんちゃん

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 大きく温かな体に包まれ、いつのまにか眠りについていたレヴィは、寝台の上でレイバンと共にベリーの実を食べていた。
 昨晩は落ち込んでいたレヴィであったが、レイバンの毛を乾かし、黙々とブラッシングをしたのだ。
 硬かった毛が艶々になり、レイバンが心地よさそうにしている姿を見ているだけで、レヴィは胸がほっこりとしていた。

「僕ね、ふたりが結ばれるってわかっていたんだ」

 心配をかけてしまったレイバンに、レヴィはへへっと笑って見せる。
 すりすりと頬ずりをしてくれるレイバンからは、石鹸の良い香りがして、レヴィは癒やされていた。

『私はエルネストから、テレンス殿下はレヴィ様を、それはそれは愛しているのだと聞いています』

「…………それは、アカリ様と出逢う前のことじゃないかな?」

 レイバンなりに、レヴィを慰めようとしてくれているのだろう。
 苦笑いを浮かべるレヴィは、ずっとローブのポケットに仕舞っていた小さな箱を取り出す。
 テレンスが帰還した際に身につけようと思っていた高価な指輪は、一度も指に填めることなく、不用品となってしまった。

「人の気持ちは変わるものなんだ。僕だってそうだもん……。僕はどんなことがあっても、テリーと婚姻するんだってずっと思ってた……。でも今は、約束を守れなくてごめんね、ってテリーに謝罪されたとしても、僕は笑顔でふたりを祝福できると思う」

 にっこりと笑ったレヴィだが、テレンスのことが大好きな気持ちは、今も変わらない――。
 それでもテレンスにもらった指輪は、レヴィが持っているべきではない。
 ただ、今はまだ処分することはできなかった。

『レヴィ様。ひとつ、よろしいでしょうか』

「ん? なあに?」

『実際におふたりを見たわけではないので、テレンス殿下のお気持ちはわかりかねますが……。今言えることは、勇者様とテレンス殿下が婚姻したのは、半年程前です。しかし、その時すでに、レヴィ様はベアテル様の伴侶として迎えられているのです』

 レイバンの言いたいことに気付いたレヴィは、ハッと息を呑んだ。
 レイバンの話によると、レヴィの立場は一年程前からベアテルの伴侶なのだ。
 とんでもない事態になっていることに気付いた瞬間、レヴィは悲鳴を上げていた。

 謝罪すべきなのは、レヴィの方かもしれないのだから――。

「っ、ああ、どうしよう!! もしかすると、知らないうちに、僕が先に約束を破ったんじゃ……っ」

『断言することはできませんが、その可能性もあるかと……。テレンス殿下もバルドヴィーノ様も、勇者様を選んだわけではない。そうせざるを得ない状況だったのではないでしょうか?』

「っ、そんな……」

 レヴィを愛していると、婚姻する日が待ち遠しいと、顔を合わせる度に話していたテレンスが思い起こされる。

(テリーがアカリ様に惹かれていたのは、間違いないと思う……。それでも、ずっと僕を好きだって、伝えてくれていたんだ)

 もしかすると、テレンスは今もレヴィを愛しているのかもしれない――。

 とても都合の良いことを考えていると、自分でもわかっている。
 ただ、テレンスを信じたい気持ちもある。

(テリー本人から、話を聞きたい……)

 今は互いに別の相手と婚姻しているようだが、テレンスにもらった指輪を処分すべきだろうかと迷っていたレヴィは、思いとどまっていた。







 レイバンの話が真実なのかを確かめるべく、レヴィはベアテルを呼び出すことにした。
 急ぎ部屋の扉を開けたレヴィは、その場で飛び跳ねる。

「っ……びっくりしたあ」

「――すまない、あなたが心配で……」

 レヴィの部屋の前には、ベアテルが気配なく立っていたのだ。
 いつもなら、どこにいようともレヴィの身を案じてくれるベアテルに、心から感謝していた。
 レヴィにだけ特別優しく接してくれることを、嬉しくも思っていた。
 だが、レイバンの話を聞いた今は、一晩中、聞き耳を立てていたのでは……? と怪しんでしまう。
 他の使用人たちの姿も見えたが、レヴィはベアテルだけを部屋に招き入れていた。

「テレンス殿下が、今、どこにいるのかわかりますか? 会って話したいことがあります」

「……それは無理な話だ。魔王討伐部隊は、まだ王都に帰還していない」

 レヴィがテレンスの名を出しても、ベアテルは動揺を見せることはなかった。
 魔王討伐部隊は、未だ王都に帰還せず、魔物の被害に遭った地を回っている。
 ベアテルは真実を話しているのだろうが、大切なことは伝えていない――。

(きっと今後も、話すつもりはないんだろう……。いつまでも隠し通せることではないというのに、なんで話してくれないの……?)

 なぜ秘密にしているのかはわからないが、婚姻はレヴィの人生を左右することだ。
 大切なことを話さないベアテルに対し、不信感を募らせるレヴィは目を細めた。

「魔王は討伐されたのに?」

「っ……」

 レヴィがぼそっと呟けば、黄金色の瞳が揺れる。
 ベアテルの僅かな変化を、決して見逃さなかったレヴィは、レイバンの話は真実なのだと確信していた――。

「ベアテル様、お願いします。本当のことを教えてください。僕は、ベアテル様の伴侶なんですか?」

 沈黙するベアテルの瞳は、レヴィの背後に向けられている。
 レヴィを守るように寄り添うレイバンを、じっと見ていた。
 全て知っているのだとわからせるべく、レヴィはレイバンを優しく撫でる。

「僕たちが王命で婚姻したって、本当なんですか? しかも、一年近く前に……。ベアテル様の口から聞かせてほしいです」

 レヴィが懇願すれば、ベアテルは諦めたように目を伏せた。


「ああ、そうだ。俺が陛下に願い出た。第二王子殿下を守った褒美として、あなたを伴侶に迎えたいと――」

















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