召喚された最強勇者が、異世界に帰った後で

ぽんちゃん

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 ふたりきりになり、寝台の上におろしてもらったレヴィの隣に、ベアテルが腰を下ろす。
 テレンスの話は真実だったとは思うが、ベアテルの口から聞きたい――。
 そんなレヴィの気持ちを察したのか、意を決したような面持ちのベアテルが、口を開いた。

「俺が、テレンスに殺されかけたことを口外しなかったのは、レヴィが胸を痛めると思ったからだ」

「っ……えっ、僕が?」

「ああ。レヴィはテレンスを愛していただろう? 真実を知れば、優しいレヴィはきっと苦しむことになる。だから話さなかった」

 決して秘密にしたかったわけではないとわかり、レヴィは潤む瞳を伏せた。

(っ、話したくても、話せなかったんだ……。僕のことを考えて……)

 ベアテルの底無しの優しさを感じるレヴィは、今すぐに抱きしめたくなる気持ちを必死に堪え、ベアテルに問いかける。

「他に話せなかったことはありますか……? 僕、もっとベアテル様のことを知りたいっ」

 レヴィが懇願すれば、ベアテルは困ったように笑い、口元を隠す。
 だが、可愛い耳が飛び出してしまっている。
 おそらくベアテルは、困っているわけではない。
 照れているのだ。
 そうわかった瞬間に、無表情を意識するベアテルが、レヴィは可愛く見えて仕方がなかった。

「そうだな……。聖女候補お披露目の儀式の時に、俺がレヴィに治癒を頼んだだろう? その時から、テレンスに功績を譲り続けてきた」

 さらりと重大な事実を告げたベアテルに、レヴィは己の耳を疑った。
 正確に言えば、以前からベアテルは、テレンスに功績を奪われていたらしい。
 ベアテルは特に気にしていないようだが、レヴィは信じられなかった。

「っ……ベアテル様の功績を奪い続けて、平気な顔をしているあの人が、人として最低だということはわかりました。……でも、他人に功績を譲るだなんてっ。ベアテル様は、なんでそんなことをしたんですか?」

「――……あの頃のレヴィは、周りから勝手に期待されて、苦しんでいただろう? 俺の目には、レヴィの治癒の光は、誰よりも輝いて見えていた。だが、俺はそのことを証明できなかった」

 ベアテルが、悔しそうに眉根を寄せる。
 だが、ベアテルは誰よりも、レヴィのことを考えてくれていたことが知れたのだ。
 その気持ちが、レヴィは嬉しかった。

「テレンスの許可がなければ、誰もレヴィには治癒を頼めなかったんだ。だから功績を譲る代わりに、俺の治癒は、レヴィを指名することを約束させた」

「っ、僕のために、そんなことまでしなくてもよかったのに……」

 そうしたら、今頃テレンスではなく、ベアテルが英雄になっていたに違いない。
 国民にもてはやされ、謙遜していたテレンスの行動は、全て演技だったのだろう。

(……テレンスは、ベアテル様を卑怯だと言っていたけど、自分が一番卑怯者じゃないかっ)

 悔しい気持ちが込み上げてきたが、ベアテルがレヴィの手に触れ、指を絡めた。

「幼い頃から努力してきたレヴィには、治癒だけは続けてもらいたかった。俺の想いは伝えられずとも、レヴィにはずっと笑っていてほしかったんだ」

 恋人のように手を繋いだベアテルが、嬉しそうに目尻を下げる。

「それに、今思えば、俺のためでもあったんだ。レヴィの小さな手に触れることができるだけで、俺は幸せを感じていたんだ。それが、今はこんなことができる関係になれるとは、思わなかった……」

 優しいベアテルのことだ。
 レヴィが過去を気にしないようにと、今は幸せだと、言葉にしてくれたのだろう。
 熱い想いを返すように、レヴィがぎゅうっと手を握り返せば、ベアテルはくすぐったそうに笑った。

「今でも、朝目が覚めて、レヴィが微笑みかけてくれるまでは、夢ではないかと思っている」

「っ、夢じゃないですよ? ……僕は、ベアテル様が大好き、ですっ」

 レヴィがもじもじとしながらも本心を告げれば、ベアテルの耳が忙しなく動き出す。

(か、可愛いすぎるっ!! 大好き、って言葉に、ピンッて反応してた……)

 相変わらず素早い動きで口元を隠したベアテルだが、耳を見れば、照れているのは一目瞭然だった。

「ああ、わかってはいるんだが……。レヴィの隣に立つことができて、いろんな気持ちを共有することができる……。俺にとっては、夢のような毎日だ」

「っ、」

 些細なことで歓喜するベアテルが、愛おしい。
 溢れる想いのまま、ベアテルをじっと見つめていれば、音もなく唇が重なる。
 ゆっくりと寝台に押し倒され、レヴィは高鳴る胸を押さえた。

「んっ」

 レヴィの緊張を解こうと、ベアテルが優しい口付けを繰り返すが、レヴィの心臓は今にも破裂しそうなほどドキドキと音を立てていた。

 ベアテルの節くれ立つ手が、レヴィの服のボタンをそっと外していく。
 宝物に触れるかのように、レヴィの頬を優しく撫でていた手が、首筋をなぞり、ゆっくりと胸元までおりていく。
 冷たい空気に触れたからか、はたまたベアテルに肌を見られたからか。
 レヴィの火照る体は、大袈裟なまでにぶるりと震えていた。

「んんぅっ」

 ベアテルの指先が、小さな胸の飾りを掠めた瞬間、レヴィの口からは甘えた声が漏れる。
 恥ずかしくてぎゅっと抱き付けば、ベアテルはレヴィの耳元で悩ましい溜息を吐いた。

「――……はあ、可愛い。それに、すごく綺麗だ」

 ベアテルが感嘆の溜息を漏らし、レヴィは顔から火が吹き出そうになっていた。
 鍛え上げられているベアテルの肉体の方が、レヴィの細い体よりも断然魅力的だ。
 比べるまでもない。
 それでもベアテルが、感動したように熱い吐息を吐くものだから、レヴィはたまらない気持ちにさせられる。

「ふ、ぅぅっ……」

 ぎゅっと目を瞑っているというのに、灼けるようなような熱い視線を感じる。
 肌を晒しただけで、頭が沸騰していたレヴィは、どうにかなってしまいそうだった。

「っ……見ないでっ」

 なんとか声を振り絞る。
 ベアテルのように鍛えているわけではないため、レヴィは細い体を見られることが恥ずかしかったのだが、情欲を孕む黄金色の瞳に見下ろされていた。

「いくらレヴィの頼みでも、今は無理だ」

 先程まで余裕があったように見えたベアテルが、切迫詰まったように告げ、レヴィは息を呑む。
 だが、さりげなく両手で胸元を隠せば、直様その手をシーツに押さえつけられる。

「純粋なレヴィを怖がらせてしまうと、頭ではわかってはいるが……。我慢できそうにない」

「っ、」

 逃げる気など毛頭ないのだが、優しさの塊のようなベアテルに押さえつけられ、この先の未知の行為が怖いはずなのに、レヴィはドキドキが止まらなかった。

「ぁっ……ベアテル、さまっ」

 ベアテルの逞しい体に囲われ、全身余すところなく優しい口付けが降ってくる。
 色気を漂わせるベアテルに、レヴィの顔にぶわっと熱が集まっていた。

「んぁ、」

 愛していると伝わってくる――。
 嬉しくてたまらないのだが、レヴィは息が上がっていた。
 真っ赤な顔を隠したいのに、易々とレヴィの両手を拘束するベアテルは、レヴィの顔をじっくりと見つめている。
 恥ずかしくてぶんぶんと首を横に振るが、ベアテルはレヴィの体に吸い付いていた。

「あっ、ああっ!」

 小さな胸の飾りが、快感を拾い上げる。
 なにも感じなかったはずの胸の飾りを、ベアテルにちろちろと舐められれば、レヴィの口からはあられもない声が出てしまう。

「こ、これ以上は、だめ、です……っ。変な声が、出ちゃう、からっ」

 息も絶え絶えになるレヴィがお願いすれば、ベアテルは眉間に皺を寄せた。
 恥を晒している気分になり、涙目になる。
 大好きなベアテルには、レヴィのはしたない姿を見られたくない。
 せめて声だけでも我慢しようと、必死に口を引き結ぶが、ベアテルは涙に濡れるレヴィの目尻に、そっと口付けを落とした。

「――……声も、仕草も、なにもかもが、愛らしくて仕方がない」

「っ、」

 普段とは違い、ギラギラと光る黄金色の瞳は、レヴィの乱れた姿を目に焼き付けているかのように、一瞬たりとも逸らされることはなかった。

















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