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そして、ユリアンにエスコートされるアニカと、レヴィと苦楽を共にした聖女たちが集まる。
ユリアンとアニカは、ベアテルが王命でレヴィを欲したことを、最初から知っていたそうだ。
今思えば、ユリアンはレヴィの兄であり、保護者なので、知っていても不思議ではない。
ふたりには謝罪されたが、レヴィは特に気にしていなかった。
ユリアンとアニカが恋仲であることは知っていたが、寄り添う姿を初めて見たレヴィは、胸がいっぱいになっていたのだ――。
「私、聖女のお役目は辞任して、ユリアンと婚姻しようと思うの。……認めてくれるかしら?」
そう言って、アニカがはにかむ。
レヴィにとっても喜ばしい話に、レヴィはぱあっと笑みを浮かべていた。
「っ……もちろんですッ!」
幸せそうに微笑むアニカに、レヴィは何度も頷く。
出産すれば、聖女の力は衰えてしまうが、アニカの代わりに立てる者を、レヴィは知っている。
生涯独身を貫くことを誓っている、スザンナだ。
内に秘めた聖なる力が増したことで、琥珀色の髪が、眩い金色に変わっていることもあり、次の聖女の頂点にはスザンナが相応しいと、誰もが認めることになるだろう。
「ありがとう、レヴィ。レヴィも、ベアテルと想いを通わせたと聞いている。幸せそうで、本当によかった……」
ユリアンにきつく抱きしめられる。
氷の貴公子の微笑みは、実の兄だとわかっているレヴィですら見惚れてしまう程の、幸せいっぱいの笑みだった。
「ユリアンお兄様も、おめでとうございますっ! 僕もとっても嬉しいですっ! 僕たちには頼れるスザンナ様がいますし、僕自身も、聖女として今まで以上に頑張りますっ! だからお兄様は、アニカ様と幸せになってくださいね?」
レヴィの熱い気持ちが伝わったのか、「頼れる弟だ」と、ユリアンが褒めてくれる。
「アニカの引退を惜しむ声もあるが、私たちが婚姻するのは、レヴィの幸せを見届けてからと、ふたりで話し合っていたんだ」
「っ……僕の、しあわせ……?」
有能な聖女ほど、婚期は遅れる。
てっきりアニカが最も力のある聖女だから、ユリアンとの婚姻を先延ばしにしていたとばかり思っていたレヴィは、心底驚いていた。
(っ、ずっと昔から、ふたりは僕の幸せを一番に考えてくれていたんだ……)
アニカとも熱い抱擁を交わし、目頭が熱くなってしまうレヴィは、必死に涙を堪える。
「レヴィちゃんに会いに行くって言っても、ユリアンには何度も邪魔をされていたの。レヴィちゃんを愛しているなら、遠くから見守れって言うのよ? すごく寂しかったわ……」
こっそりとアニカに耳打ちされる。
申し訳ないと思うのに、絶世の美人の拗ねた顔が酷く可愛くて、レヴィは口元を綻ばせていた。
そしてユリアンを見れば、アニカの話は真実だったようで、困ったように肩を竦めている。
「アニカは、私よりレヴィを愛しているらしい。まあ、だから私は、アニカに惹かれたんだが……」
「――……ユリアンお兄様が、惚気てる……」
くすくすと笑っていれば、ユリアンはばつの悪そうな顔でそっぽを向いていた。
照れているユリアンは、とても珍しい。
成り行きを見守っていた聖女たちもまた、ユリアンとアニカを祝福しており、レヴィも幸せな気持ちで満たされていた――。
そしてベアテルは、ジークフリートと共に部隊の者たちに囲まれている。
先に帰還したものの、ベアテルが皆から慕われていることが一目で分かる光景だった。
(かなり歳上の人もいるけど、ベアテル様に対して、尊敬の眼差しを向けている人が多い……)
大好きな伴侶が、周囲の人々から慕われている姿は、レヴィの胸を熱くさせる。
すぐにベアテルに笑いかけたかったが、ベアテルは意識してレヴィを見ないようにしているらしい。
ベアテルの横顔は、完全に仕事モードだった。
ベアテルの真面目な表情は、いつまでも見ていられるのだが、ユリアンとアニカが去った後。
獣のように目を光らせる貴族たちが、レヴィを狙っているように見えてならない――。
「レヴィ、久しぶりだな」
「っ……」
身震いしそうになるレヴィの前に、長身のふたりが現れる。
リュディガーとエルネストだ。
煌びやかな紫色の衣装が似合うふたりは、多くの人の目が集中している現状でも、余裕を感じる態度だった。
「俺たちがいれば、他の者たちはレヴィに話しかけることはできないから、安心していいよ?」
「っ……エルネスト様っ。お気遣いいただき、ありがとうございます」
咄嗟に機転を利かせたエルネストは、やはり国母に相応しい、とレヴィは思った。
そして、口を引き結んでいるリュディガーは、今もなにを考えているのかさっぱりだが、仕事とはいえ頻繁に手紙を交換している仲だ。
おそらく、レヴィの為に時間を割いてくれたのだろうと、レヴィは前向きに捉えていた。
「セドリック王太子殿下と、レイバン様にもよくしていただいています」
「ああ、兄上から話は聞いている。迷惑をかけてごめんな。レヴィは優しいから言えないかもしれないけど、邪魔なら追い出してくれていいからな?」
「っ、そんな、邪魔だなんて――」
「あの人たちは、俺の話は聞かないけど、レヴィの言うことなら、すぐに聞くと思うよ?」
(レイバン様ならまだしも、王太子であるセドリック殿下が、僕なんかに従うはずがないのに……)
レヴィはありえないと思っていたが、エルネストは自信満々に片目を瞑っていた。
「レヴィ――」
「レヴィくんっ!!」
何か言いかけたリュディガーを遮ったアカリに、飛びつかれる。
感動の再会だったが、アカリに怪訝な顔で見つめられてしまい、レヴィは戸惑っていた。
「レヴィくんは、ベアテルくんと結ばれたんだよね? 相思相愛なんだよね?」
「っ……は、はい。でも、どうして……?」
第一声がその話なのかと、気恥ずかしくなるレヴィだったが、はにかむレヴィをじっと見つめるアカリは、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「……なんだ、よかった。ちょっと気になったことがあってね……? でも、ふたりが幸せならそれでいいっ!」
最後に会えてよかったと喜ぶアカリに、レヴィも同じ気持ちだと抱きしめ返す。
しかし、急に無言になったアカリの黒い瞳は、すっと細められていた。
視線の先を追えば、ベアテルに挨拶する貴族たちが、自分の息子や娘を紹介していたのだ――。
(っ……どういうこと!? ベアテル様は既婚者だよ!? 僕の伴侶なんだよ!?)
親に紹介された若い世代の者たちが、揃ってベアテルに見惚れているではないか。
長身で魅惑的なベアテルの容姿は、人目を惹くことは間違いない。
だからといって、伴侶であるレヴィがいる場で、ベアテルに色目を使うのはおかしいだろう。
まるで、レヴィではベアテルに相応しくないと、判断されているような気持ちになる。
身分も高く、容姿端麗なベアテルに見惚れてしまう気持ちはわからないわけではないが、レヴィは顔面蒼白になっていた――。
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