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しおりを挟む伝説の不死鳥に成長を遂げたロッティが、炎を噴いたことで、会場の温度は上がっている。
そして、今もなお真っ赤な炎を纏うロッティと触れ合ったのだが、レヴィはどうしてか熱さを感じてはいなかった。
「今まで、どこにいたの? 心配したんだよ?」
『ああ、悪い悪い。ご主人様を驚かせたくて、最終形態に成長するまで、眠りについていたんだ』
してやったり、と言ったように、ロッティがニヤリと笑ったように見えた。
本来ならば、全身に炎を纏わせるには、何十年とかかるらしい。
その成長を、ロッティはたった一年のうちにやり遂げたそうだ。
『愚かな人間共が平伏す光景を、ご主人様に見せてやりたかったんだ』
「っ……僕のために力を蓄えてくれていたの!? ロッティさんは、僕を見捨てたわけじゃなかったんだ……」
『当たり前だろ? 俺様のご主人様は優秀なんだ。それをわかっていない無能共に、知らしめてやりたかったんだよ』
レヴィの前で平伏している貴族たちを眺め、「最高の気分だ!」と、ロッティが喉を鳴らす。
今のレヴィは、聖女としてはそこまで成長していないかもしれないが、動物の治癒を始めてから、こつこつと評判を上げている。
かつてのように、落ちこぼれだとは判断されていないとは思う。
だが、不死鳥は気高い生き物だ。
おそらくロッティの飼い主であるレヴィが、アーデルヘルムとは違い、人々に見下されていることに耐えられなかったのだろう。
(それでもロッティさんは、僕のためを思って、力を蓄えてくれていたことには違いない)
胸がほっこりとするレヴィは、艶々と輝くロッティの羽根を、優しく撫でた。
「ロッティさんの気持ちは嬉しいよ? でも僕は、そんなことより、早くロッティさんに会いたかった……」
『っ…………そんな可愛いことを言うなら、一生離れてやらねぇぞ?』
ツンツンと、高速で頬をつつかれる。
くすぐったくて、レヴィは思わず声を上げて笑っていた。
「「「…………」」」
レヴィとロッティの会話は、誰にも聞こえてはいない。
それでも、忙しなく羽根を動かす不死鳥がご機嫌であることは、一目瞭然だった――。
「ふふっ、僕も同じ気持ちっ! 一生、離してあげないんだからっ!」
『~~ッ!! ……おい。無自覚で、俺様を魅了するのはやめろっ!!』
ぷりぷりと怒っているロッティだが、レヴィに甘えているところは、なんとも可愛らしい。
見た目は随分と立派に成長しているが、中身は全く変わっていなかった。
こっそりと不死鳥と話すレヴィを、崇めている人々を見回す。
バルドヴィーノの正体に気付いていたのか、ベアテルやジークフリート、アカリは「やはりロッティだったか」と、ご満悦だ。
ただ、テレンスだけは腰を抜かしているが……。
『…………ご主人様にかっこいいところを見せるつもりが、ベアテル同様、骨抜きにされちまった気がしてならねぇ……』
はあ、と溜息を吐くロッティが、レヴィの頭に顎を乗せた。
その親しげな仕草により、不死鳥が慕っている相手は、勇者ではなくレヴィであることが、ありありとわかる光景だった――。
ただ、レヴィはそれどころではない。
(っ……ベアテル様も、同様に!? ぼ、僕が、ベアテル様に骨抜きにされているんじゃなくて?)
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