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テレンスの叫び声を背に、レヴィはベアテルに促され、パーティー会場を後にする。
(……もっと、テレンスの話を聞いてあげるべきだったかもしれない)
婚約を白紙にしたことを、テレンスはようやく謝罪してくれた。
反省していることがわかり、嬉しい反面、ベアテルへの謝罪はないのかと、残念な気持ちにもなる。
だが、人は急に変われない。
(きっとテレンスには、まだ時間が必要なんだと思う……)
これから、過去を振り返る時間はたくさんあるだろう。
己の身勝手な行動が、どれだけの人を傷付けたのかをわかってほしい。
そして、両親を悲しませたことも――。
「テレンス殿下が、いつか、心から謝罪してくれる日がきたらいいですね……」
使用人たちに王宮の一室に案内されるレヴィは、ベアテルに小声で話しかける。
しかし、ベアテルは無言だった。
(……聞こえなかったのかな? ううん、ベアテル様は耳がいいんだ。もしかしたら、機嫌が悪いのかな……?)
功績を奪われ、一度は殺されかけた相手の話だからかもしれない。
ベアテルへの配慮を怠ったことに気付いたレヴィは、口をつぐんだ。
そして本日、宿泊する豪華な部屋に案内され、多くの使用人たちも入室する。
後日、詳しい話が聞きたいと、ヴィルヘルムが用意してくれたのだ。
久々にシュナイダー公爵家に帰ろうと思っていたレヴィだったが、この度、めでたく結ばれたユリアンとアニカの邪魔はできないため、有り難く宿泊させてもらうことにしていた。
「湯浴みの準備は整っております」
ベアテルやレヴィの身の回りの世話を担当する者たちが、これでもかと瞳を輝かせている。
だが――。
「下がっていい」
有無を言わせぬ態度のベアテルに、使用人たちの表情が強張る。
(……嫌な気分にさせちゃったかな? でも、ベアテル様は、自分のことは自分でするから大丈夫! って言いたかっただけなんだけど……)
ベアテルにも、通訳が必要かもしれない――。
レヴィが説明しようとしたが、使用人たちは逃げるように退出していた。
◇
レヴィは使用人たちを気にかけていたが、部屋の外では黄色い悲鳴が上がっていた。
なにせ、今まで多くの者に言い寄られても、歯牙にもかけなかったベアテルが、レヴィに対してだけは独占欲をあらわにしているのだ。
しかも、レヴィに触れることができるのは、伴侶であるベアテルだけだと、言外に告げられている。
「噂以上の溺愛っぷりだったわ……」
「ええ。私たちがレヴィ様のお姿を見ただけで、不機嫌そうだったものっ」
王宮勤めの優秀な者たちが集められていたが、興奮を抑えきれない。
レヴィを磨き上げたい気持ちはあるものの、ふたりの邪魔をしないよう、使用人たちは急ぎ部屋を離れていた。
そしてベアテルから呼び出しがあるまでは、決して近付くまいと、皆一様に思っていた――。
◇
『んじゃ、俺様は小僧のところにでも行ってくるぜ。ごゆっくり~』
にたりと笑ったロッティが、窓から飛び出す。
なにやら気遣われたような気もするが、レヴィの気のせいだと思いたい。
(~~っ、もうっ。ここは僕たちの邸でもないし、ましてや王宮だよ!? そんなところで、イチャイチャできるはずがないのにっ)
そっと窓を閉めたレヴィが振り返れば、ベアテルが立っていた。
カーテンを閉めてくれたが、ベアテルの気配が感じられず、レヴィは心臓が止まりそうだった。
「っ、ベアテル様、ありがとうございます。先に湯浴みを……んんっ」
言い終わる前に、性急に口を塞がれる。
驚きに目を見開けば、ベアテルはニコリともしない無表情。
だが、黄金色の瞳は熱を孕んでいる。
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