召喚された最強勇者が、異世界に帰った後で

ぽんちゃん

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「ルーカス様! ロッティ様は、他になんと話していらっしゃるのですか?」

 使用人たちに囲まれるルーカスは、少しだけ嬉しそうだ。
 なにせ、可愛い耳がぴくぴくっと反応している。
 それでも我が子を俺様にさせたくないレヴィは、急ぎ可愛い口調の動物の名を上げる。

「ルーカスッ!! クローディアスくんは!?」

『えっ!? ぼ、ぼく!? そんなに熱心に見つめられたら、僕、緊張しちゃうよぉ~』

 ブルルン、と鼻息の荒い、漆黒色の巨大馬。
 長い尻尾を叩きつけ、地が揺れている。
 はたから見れば、機嫌の悪い凶暴馬でしかないのだが――。

「んーと。そんなに熱心に見つめられたら、ぼく、きんちょーしちゃうよぉ~っ」

「「「っ……はうっ!!!!」」」

 舌足らずなルーカスの可愛さに、レヴィだけでなく、使用人たちも魅了される。
 しかも、クローディアスが可愛らしい性格だということも発覚し、「ギャップがすごい!」と大盛り上がりだ。

 今までまったく話さなかったルーカスが、生き生きとしているのだから、レヴィはこれ以上なにも言えなかった――。







 ルーカスが心配だったこともあり、レヴィたちはたった一月という最短で魔王を討伐し、帰還することとなっていた。

 その後は、レヴィのように曖昧に通訳せず、動物の言葉をそのまま伝えるルーカスが、引っ張りだことなる。
 ルーカスに気に入られたいがために、ペットとして動物を飼う者も増えていた。

 そして、レヴィに動物の治癒を求める者はいるものの、皆がルーカスにも声をかけていく。

「ルーカス様っ。私のペットは、なんと言っているのでしょうか? 最高級の食事を与えても、どうにも食べてくれなくて……」

 まるまると太った猫を膝の上に乗せ、憂い顔を見せる可愛らしい令嬢。
 猫をダシにして、ルーカスに会いに来たうちのひとりである。
 そんなこととは知らない純粋なルーカスは、真剣に話を聞いていた。

 その態度は、レヴィのような大人になりたいと願っているのだから、レヴィとベアテルはルーカスを微笑ましく見守っていた。

「んーと。味付けが濃いから、胃もたれするんだにゃ~」

「ッ……ブフォッ!! さ、さすがはルーカス様ですっ!! ありがとうございますありがとうございますっ!!」

「…………う、うん」

 力になれているのだろうかと、不安そうな目をするルーカスに見つめられてしまう。

(……ある意味、みんなを幸せにしているから大丈夫だよっ!!)

 レヴィは心の中でエールを送る。
 動物と会話ができるルーカスは、耳を隠す必要もなく、人々に好かれていた。
 それに、無表情だったとしても、耳の動きで心情が読み取れる。
 そのギャップに撃沈する者が続出し、レヴィの前でしか耳を出さないベアテル以上に人気者になってしまったことは、言うまでもない。


「ベアテル様は、僕以外の前で耳を出さないでくださいね? 絶対ですよ?」

「ククッ。出そうと思っても出せないから、安心してくれ」

 ベアテルに抱き寄せられたレヴィは、うっとりと伴侶を見上げる。
 だが、耳は隠す必要なんてないと豪語していたというのに、今は隠してほしいと話している己の浅ましさに、レヴィは罪悪感を抱いていた。

「……耳がすっごく可愛いと思うのに、独り占めするようなことを言ってしまいました」

 しゅんと落ち込むレヴィだったが、ベアテルはまったく気にしていない。
 むしろ愛おしそうにレヴィを見つめているのだから、器の大きな伴侶である。

「レヴィは悪くない。俺の耳は、レヴィにしか反応しないだけなんだ」

「うっ……」

 耳元で囁かれたレヴィは、カッと頬を赤らめた。
 一部始終を見ていたルーカスが、耳を隠そうとペタペタと頭を触っている光景を眺める人々は、幸せな気持ちになっていた――。









 治癒能力はないものの、動物と話せる稀少な能力を持つルーカスは、ドラゴンとも友となった。
 その子孫もまた伝説の生き物を使役する、立派な英雄と成長する。
 銀のドラゴンの背に乗る勇敢な姿は、人々の目に焼きついて離れない。

 だが、王宮の人々の最も目につく場所に飾られている肖像画は、いつまでも変わらない。
 リンドヴィルムの口内でにこにこと笑っている絶世の美人――レヴィ・ウィンクラーだ。

 鳥の病が集団感染した時にも、すぐさまリンドヴィルムと共に各地を回って活躍し、民を助け続けた英雄である。
 リンドヴィルムが最も愛し、口内で大切に守り抜いたのは、レヴィ・ウィンクラーただひとりだった――。

 そして、獣の血が混ざるウィンクラー辺境伯家を蔑む者は、ドラッヘ王国には誰ひとりとしていない。
 魔王は復活し続けているものの、レヴィの意志を継ぐ者たちは、異世界勇者の力を借りることなく、いつまでもドラッヘ王国を守り続けていた。








                    (完)



―――――――――――――――――――――――






 最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました!(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾ 



























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感想 61

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みんなの感想(61件)

ミホミホ
2024.08.05 ミホミホ

一気読みしました~
はぁー面白かったホントに。レヴィの純粋で可愛くて一生懸命ところ癒されました。

ストーリーもムダなく、すれ違い両片思いに焦らされながらも楽しく読めてよかったです!何より拗らせ勘違いクソ王子は別として、根っからの悪人がいないのがいいですね!
有難うございます。ぽんちゃんさんの他の作品も制覇中ですぞ!

解除
turarin
2024.01.14 turarin

面白かった〜
いい映画を一本観たような、なんか、ほ〜っとした感じです。
次作も楽しみにしてますね!!

解除
あー
2023.12.12 あー
ネタバレ含む
2023.12.19 ぽんちゃん

♡あー様♡
感想ありがとうございますッ‼︎⁽⁽٩(๑˃̶͈̀ ᗨ ˂̶͈́)۶⁾⁾

もっともっと読みたいだなんて‼︎♡♡
最高に嬉しいお言葉、ありがとうございます♡♡
感無量ですッ‼︎( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ )

世間知らずなレヴィと、寡黙なベアテルの恋と冒険?を楽しんでもらえて、私も嬉しいですーッ‼︎♡(ฅωฅ♥)//

最後まで読んでくださり、ありがとうございました(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

解除

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