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2日目
しおりを挟む咲崎 美玖とは両親同士も仲が良く小さい頃から一緒に過ごしてきた仲だ。
彼女の両親もプロの格闘家で、確か東京でジムを複数構えていると聞く。
美玖も英才教育を受けており、あれだけ強かったってわけだ。
そんな美玖は今じゃ超有名な美少女アイドルである。
国民の誰もが知らない人はいない、『エンジェ・ヴァイン』というグループでセンターを務めるエース。
高い身体能力を活かしたダンスパフォーマンスに圧倒的な声量。ファンへの神対応ぶりから、トップの地位を確立した。
中学生の頃、東京でスカウトされたとか言って、俺から離れて行ったんだ。
俺もいきなりのことで「頑張れよ」の一言しか伝えられなかったんだよなぁ。
もう三年も会ってなかった。
――2日目
俺は学校へ行くと、井上達の姿はなかった。
今日一日は安心して過ごすことができると安堵する。
束の間。
先生と一緒に、ある女子生徒が入ってくる。どうやら転校生らしい。
その姿にクラス中が騒然となり沸いた。
「今日から転校してきた、咲崎 美玖です。皆さん、よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭をさげる、俺の幼馴染。
「美玖って、あのミクちゃんですかぁ!? エンジェ・ヴァインのぉ!?」
男子生徒が席から立ち上がり問い質す。
「う、うん……」
「凄げぇ! 本物だぁぁぁっ!?」
「わ、わたし、ファンなんですぅ! 新曲最高ですぅ!」
「ありがとう……」
「うわっ! 超かわいい~!」
他の男子から女子まで興奮し舞い上がる。
美玖は少し困った表情だが丁寧に応える神対応ぶりを見せていた。
そして偶然なのか、俺の隣にある空席へと彼女は座る。
「でも、どうしてこの街に? アイドルの仕事は?」
「休養中なの。ここは元々、あたしが住んでいた街だから……」
休み時間、美玖の周りに生徒達が群がる。
他のクラスから学年すら関係なくだ。
まぁ国民的JKアイドルが、いきなり自分達の学校に転校してきたんだから無理もない。
当たり前だが、ぼっちの俺は蚊帳の外だ。
なんだか居づらくなったので席から立ち上がる。
「待って! シンシン!」
「シンシン?」
美玖が呼ぶ声に周囲は反応する。
おいおい……こんな大衆の前で昔の仇名で呼ぶんじゃねぇよ!
美玖は人混みを掻き分け、俺に近づいてくる。
刺さるような周囲の視線に困惑してしまう。
美玖は、そっと俺の腕を組む。
「そっ、あたしの幼馴染……そして大切な人だよ」
頬をピンク色に染めながら公言する。
「ええーーーーーっ!!!?」
クラス中、いやその場にいる者全員が驚きの声を上げる。
そりゃそうだろう。
現役の国民的JKアイドルが俺と幼馴染なんだからな。
…………ん? 待てよ?
今、美玖って大切な人とか言ってなかったか?
俺のこと? 嘘だろ?
「な、何言ってんだよ! お前、こんな所で!?」
いや、違う! 俺が訊きたいのはそこじぁない!
「……だって、本当のことだもん」
可愛らしく唇を尖らせ、美玖は腕に抱きついてくる。
む、胸が肘に当たる。とても柔らかい……こいつ、しばらく見ない内にこんなに成長したんだ。
だからそうじゃねぇだろ!?
その後、目立ちなくない俺まで注目を浴び、「いつからの幼馴染だ?」だの「ミクは昔から可愛かったのか?」だの「大切な人ってどういう意味だ?」だの、クラスの男子生徒を始め女子にまで問われてしまう。
とても、美玖に昨日の件を訊ける状況じゃなかった。
ようやく家に帰宅する。
「あっ、おにぃ、お帰り~」
妹の小春が、ソファーに寝そべり、スマホをいじっている。
兄の俺と違って、ショートポニーテールで可愛らしい顔立ちをした中々の美少女だ。
思春期で口は悪いが、いつも俺のことを気に掛けてくれる優しい一面もある。
「ただいま……母さんは?」
「しごと~っ。帰りに誰かと会うと言ってたぁ」
「そっ、夕食作るな」
俺の家はシングルマザーだ。
親父は幼い頃、交通事故で亡くなっている。
この一戸建ての家と保険金を残してくれたおかけで生活には困らないが、母親も気を紛わせるために働くようになった。
俺も家事の手伝いをするようになったてわけだ。
「おにぃ、手伝おっか?」
「珍しい……欲しい物でもあるのか?」
「いいじゃん、別に! 知らない!」
急にぷんすか怒り出し、自分の部屋へと戻った。
あいつも中二だっけな……難しい年頃だよな。
夕食を作り終え食器を並べている所、ちょうど母さんが帰ってくる。
「ただいまーっ! 芯、ちょっと来て~!」
玄関先から俺を呼ぶ母さんの声に、俺はひょっこり顔だけだした。
「えっ? ええ~~~っ!?」
俺は声を張り上げる。
しれっと母さんの隣で立つ、あいつの姿……。
――幼馴染の美玖だ!?
「美玖ちゃんだよ。懐かしいでしょ? 今日から、しばらく家で面倒みることになったからね」
平然と母さんは言ってきた。
どうやら仲良しだった美玖の両親に頼まれたらしい。
なんでも、美玖が自分の親にゴリ押ししたようなのだ。
「よろしくね、シンシン♡」
こうして、いきなり俺の生活が一変してしまった。
幼馴染とはいえ、現役アイドルが俺の家に住むことになったからだ。
妹の小春でさえ、驚きを隠せない。
夕食時も食卓は異様な空気だったしな。
美玖と母さんだけは平然と昔話に花を咲かせていた。
落ち着いてから、俺は美玖と「あの話」を訊こうとするも、彼女は「明日ね」とはぐらかされてしまう。
結局、何も話してくれないまま、美玖は母さんの部屋で一緒に寝ている。
【芯真が死ぬまで、あと8日】
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