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第5章:ファレス武闘祭
ジンvsアスラン1 打つかり合い
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【会場はすでに熱気で包まれております。それもそのはず!今日はいよいよ学園最強と噂されているアスラン・レーギスの初戦だからであります!しかもしかもっ、対戦相手は誰も予想だにしていなかったダークホースッ、実際私もそうでした!1年、ジン・アカツキです!一回戦を勝ち抜いた彼の実力は一体!?あれが全力だったのか?それともまだ実力を隠しているのか?もう間も無くその答えがわかるでしょう!!】
ゾクゾクするほどの闘志だ。目の前にいるのは単なる年下の少年ではない。一目見ただけでもその鍛え上げられた肉体が分かる。今まで見てきた同年代の中でもこれほどまでに完成されている者はなかなかいない。これだけで彼がどれほど努力を積んできたのか、想像に難くない。
「前からお前とは闘ってみたかったんだよ」
この言葉は本心だ。数ヶ月前の合成獣の事件の現場検証をした際、アスランは同行した。話ではシオンが追い詰めたところで最後にジンがとどめを刺したということになっていた。実際にSクラスの少女とEクラスの少年とが協力して闘ったなら、確実に前者の功績が大きかったと考える者がほとんどだろう。さらに現場はあたり一帯吹き飛んでおり、そんなことができるのはあの場ではシオンだけだったからだ。
だがアスランはそうとは考えていなかった。理由は単純だ。あの合成獣にはシオンがつけたであろう傷がほとんど残っていなかったのだ。そして明らかに歪な攻撃痕が複数あった。検証に立ち会った一部の人間はそれに気がついたが、有り得ないということで結局シオンが活躍し、ジンがとどめを刺したと結論づけた。だがだからこそアスランは知りたい。目の前の男がどれほど強いのかを。使徒に覚醒してから久しく感じなかった高揚感だ。
「俺もですよ先輩。先輩が卒業する前に一回だけでも、本気で手合わせをしてみたいと思っていました」
「はは、そうか。そいつは光栄だな。だがすまねえな。ちょっと制約があって、俺はこの大会で法術が使えないんだよ」
どうやら噂は本当だったようだ。そう言ってアスランは右腕につけたブレスレットをジンに見せた。紫色の鈍い光を放つ宝石を埋め込んだそれは、一目見ても禍々しさを感じさせる。
「なんですか、それ?」
「これは『封印環』っていって、簡単に言っちまえばとある魔物の魔核から創り出された物だ。そんでその魔物っていうのが法術を封じ込める力を持っているってわけだ。だからこれを填めている間、俺は全く術が使えない」
その言葉にジンは顔をしかめる。事前にテレサから言われて覚悟していたとはいえ、本気で闘ってもらえないということを目の前で宣言されたのだ。
「ちょっと舐めすぎじゃないですか?」
「んー、そういうつもりはねえんだけど、やっぱそう思うよな。でも悪い、これだけはどうしようもねえんだ」
本当にすまなそうな顔を浮かべるアスランに、大きくため息をついた。
「はあ、わかりました。それじゃあ先輩がその腕輪を外したくなるぐらい精一杯頑張りますよ」
「おお、それは楽しみだ。それじゃあ始めるか」
「ええ、始めましょう」
気安く語り合う二人の間に審判が開始の合図を告げる。瞬間、彼らは鍔迫りあっていた。アスランはショートソードを、ジンは一対の短剣をぶつけ合う。だが二人はすぐに剣を放して距離を取る。
「素の力は互角ってところか」
「そうですね」
剣をぶつけ合っただけで瞬時にわかった。
「それじゃあこれならどうだ?」
アスランは一瞬にして濃密な闘気を練り上げると地面を蹴った。
「つっ!?」
下から斬りあげる攻撃を防ごうとすると、キンッ、という音とともにジンの腕が浮き上がる。防いだ力が攻撃よりも弱かったのだ。ガラ空きになったジンの胴にアスランは流れるように踏み込むと体をぶつけて弾き飛ばした。舞台の上を転がるが、剣を弾かれた瞬間に全身を包む闘気を増やしたため差ほどのダメージはない。すぐさま起き上がるとアスランのいる方へと目を向けた。だが当然ながら既に彼はいない。陽の光が隠されたことで瞬時にアスランがどこにいるのかを理解したジンは右手に持っていた短剣を斬り上げる。それと同時に再びキンッ、という音が響いた。
即座にアスランは攻撃が防がれることを理解して、器用にショートソードでバランスをとってジンの力を利用し、わざと吹き飛んだ。そしてふわりと着地すると子供っぽい笑顔を顔に浮かべた。
「やるじゃねえか」
「この程度でそんなことを言われたら困りますよ」
「はは、違いない」
「今度はこっちから行きますよ!」
「ああ、来い!」
ジンが舞台を蹴る。ビキッという音が響き、舞台にヒビが入った。アスランはすぐに体ごと振り向いて剣を縦にする。そこに計ったようにジンの短剣がぶつかった。超高速で後ろに回ったのだ。しかし防がれても構わずジンは両手の短剣を繰り出して連続で斬りかかる。それをアスランは最小限の動きだけで弾き続け、息苦しくなったジンが呼吸をしようとした一瞬の隙に、彼の腹部に前蹴りを入れて弾き飛ばした。
だが所詮は強引に放った蹴りだ。腰がそこまで入っていなかったので大してダメージはない。ジンは荒い笑みを浮かべた。そして再び駆け出すと左手に持った短剣を投擲する。それをアスランは容易に回避するが、その逃げた先にジンが放った『火球』が飛んでいた。アスランはそれを剣で切り落とすと、ジンが時間差で飛び込み剣を踏んで地面に固定する。靴が切れたような感触があるが、闘気で包んでいる足には何の痛痒もない。
「ちっ!」
だが切り上げたジンの短剣はアスランには当たらない。彼は咄嗟に剣を手放して強引に後ろに頭を引いたのだ。そしてそのまま思いっきり頭を振り下ろした。ゴンッという音とともにジンがうめき声を上げる。あまりの痛みにバランスを崩しそうになりながらも、何とかショートソードが地面に突き刺さるように強く踏みつけてから距離をとった。
「痛っえ!」
ジンが額を押さえて顔をしかめる。同様にアスランも笑いながら額を押さえていた。
「俺も痛えよ、ははは」
~~~~~~~~~~~
【す、すごいすごいすごいっ!まさに息もつかせぬ怒涛の展開!全くコメントを挟む暇もない!これがジン選手の隠していた力なのか!昨日の試合とは全く動きが違います!しかしそれすらも容易に回避し、攻撃を加えるアスラン選手!これが二人の全力なのか、それとも小手調べだったのか!期待が高まりますっ!どう思いますか、ガバルさん!?】
【えー、そうですね。えー、今までのはおそらくね、小手調べではないかと、えー、私は思】
【なるほど、ありがとうございます!おおっと両選手が再び動き始め……見えない、見えないぞ!早い、早すぎる!何が起こっているのでしょうか、ガバルさん!?】
【……えー、まあ普通に超高速戦闘とね、えー、言うやつですよね。膨大な闘気で足を包んで、スピードをね、えー、強引に】
【なるほど、つまりは普通の人じゃ把握できないほどのスピードということですね!これではコメントしようがない!凄い、凄すぎる!ジン選手は一体どれ程力を隠しているんだああ!】
そんな声に会場はヒートアップする。不気味なほどに金属がぶつかり合う音と、何かが動く二本の線しか見えない。しかしそれだけで充分だった。学園最強に喰らいつくのが1年の、しかもEクラスの生徒なのだ。その事実に皆が興奮する。やがて何度目かの金属音が響いたところで、舞台の中央にジンとアスランが現れた。
~~~~~~~~~~~
「ははは、やっべえな、クソ楽しいぜ」
「あはは、俺もです」
先程までの、いつも浮かべる紳士然とした笑みではなく、野獣のように目をギラギラさせながら獰猛な笑みをアスランが浮かべる。おそらくこちらが彼の本質なのだろう。
「それにしても、先輩雰囲気違いますね。いつもの好青年っぽい先輩よりも今の方が俺は好きですよ」
「あー、まあな。俺もこっちの方が楽なんだけど、まあ俺にも色々あんだよ。学校の顔ってえのは辛いぜ」
「ああ、なるほど。確かにその顔じゃ、無理ですね」
「ははは、だろ?だから内緒だぜ?そんじゃあ」
「あはは、了解です。それじゃあ」
笑っていた顔を二人とも真顔に戻すと剣をしっかりと握りしめた。
「行くぜ!」「行きますよ!」
観客が両者を見失った瞬間にジンとアスランのぶつかり合う音が響き渡った。
ゾクゾクするほどの闘志だ。目の前にいるのは単なる年下の少年ではない。一目見ただけでもその鍛え上げられた肉体が分かる。今まで見てきた同年代の中でもこれほどまでに完成されている者はなかなかいない。これだけで彼がどれほど努力を積んできたのか、想像に難くない。
「前からお前とは闘ってみたかったんだよ」
この言葉は本心だ。数ヶ月前の合成獣の事件の現場検証をした際、アスランは同行した。話ではシオンが追い詰めたところで最後にジンがとどめを刺したということになっていた。実際にSクラスの少女とEクラスの少年とが協力して闘ったなら、確実に前者の功績が大きかったと考える者がほとんどだろう。さらに現場はあたり一帯吹き飛んでおり、そんなことができるのはあの場ではシオンだけだったからだ。
だがアスランはそうとは考えていなかった。理由は単純だ。あの合成獣にはシオンがつけたであろう傷がほとんど残っていなかったのだ。そして明らかに歪な攻撃痕が複数あった。検証に立ち会った一部の人間はそれに気がついたが、有り得ないということで結局シオンが活躍し、ジンがとどめを刺したと結論づけた。だがだからこそアスランは知りたい。目の前の男がどれほど強いのかを。使徒に覚醒してから久しく感じなかった高揚感だ。
「俺もですよ先輩。先輩が卒業する前に一回だけでも、本気で手合わせをしてみたいと思っていました」
「はは、そうか。そいつは光栄だな。だがすまねえな。ちょっと制約があって、俺はこの大会で法術が使えないんだよ」
どうやら噂は本当だったようだ。そう言ってアスランは右腕につけたブレスレットをジンに見せた。紫色の鈍い光を放つ宝石を埋め込んだそれは、一目見ても禍々しさを感じさせる。
「なんですか、それ?」
「これは『封印環』っていって、簡単に言っちまえばとある魔物の魔核から創り出された物だ。そんでその魔物っていうのが法術を封じ込める力を持っているってわけだ。だからこれを填めている間、俺は全く術が使えない」
その言葉にジンは顔をしかめる。事前にテレサから言われて覚悟していたとはいえ、本気で闘ってもらえないということを目の前で宣言されたのだ。
「ちょっと舐めすぎじゃないですか?」
「んー、そういうつもりはねえんだけど、やっぱそう思うよな。でも悪い、これだけはどうしようもねえんだ」
本当にすまなそうな顔を浮かべるアスランに、大きくため息をついた。
「はあ、わかりました。それじゃあ先輩がその腕輪を外したくなるぐらい精一杯頑張りますよ」
「おお、それは楽しみだ。それじゃあ始めるか」
「ええ、始めましょう」
気安く語り合う二人の間に審判が開始の合図を告げる。瞬間、彼らは鍔迫りあっていた。アスランはショートソードを、ジンは一対の短剣をぶつけ合う。だが二人はすぐに剣を放して距離を取る。
「素の力は互角ってところか」
「そうですね」
剣をぶつけ合っただけで瞬時にわかった。
「それじゃあこれならどうだ?」
アスランは一瞬にして濃密な闘気を練り上げると地面を蹴った。
「つっ!?」
下から斬りあげる攻撃を防ごうとすると、キンッ、という音とともにジンの腕が浮き上がる。防いだ力が攻撃よりも弱かったのだ。ガラ空きになったジンの胴にアスランは流れるように踏み込むと体をぶつけて弾き飛ばした。舞台の上を転がるが、剣を弾かれた瞬間に全身を包む闘気を増やしたため差ほどのダメージはない。すぐさま起き上がるとアスランのいる方へと目を向けた。だが当然ながら既に彼はいない。陽の光が隠されたことで瞬時にアスランがどこにいるのかを理解したジンは右手に持っていた短剣を斬り上げる。それと同時に再びキンッ、という音が響いた。
即座にアスランは攻撃が防がれることを理解して、器用にショートソードでバランスをとってジンの力を利用し、わざと吹き飛んだ。そしてふわりと着地すると子供っぽい笑顔を顔に浮かべた。
「やるじゃねえか」
「この程度でそんなことを言われたら困りますよ」
「はは、違いない」
「今度はこっちから行きますよ!」
「ああ、来い!」
ジンが舞台を蹴る。ビキッという音が響き、舞台にヒビが入った。アスランはすぐに体ごと振り向いて剣を縦にする。そこに計ったようにジンの短剣がぶつかった。超高速で後ろに回ったのだ。しかし防がれても構わずジンは両手の短剣を繰り出して連続で斬りかかる。それをアスランは最小限の動きだけで弾き続け、息苦しくなったジンが呼吸をしようとした一瞬の隙に、彼の腹部に前蹴りを入れて弾き飛ばした。
だが所詮は強引に放った蹴りだ。腰がそこまで入っていなかったので大してダメージはない。ジンは荒い笑みを浮かべた。そして再び駆け出すと左手に持った短剣を投擲する。それをアスランは容易に回避するが、その逃げた先にジンが放った『火球』が飛んでいた。アスランはそれを剣で切り落とすと、ジンが時間差で飛び込み剣を踏んで地面に固定する。靴が切れたような感触があるが、闘気で包んでいる足には何の痛痒もない。
「ちっ!」
だが切り上げたジンの短剣はアスランには当たらない。彼は咄嗟に剣を手放して強引に後ろに頭を引いたのだ。そしてそのまま思いっきり頭を振り下ろした。ゴンッという音とともにジンがうめき声を上げる。あまりの痛みにバランスを崩しそうになりながらも、何とかショートソードが地面に突き刺さるように強く踏みつけてから距離をとった。
「痛っえ!」
ジンが額を押さえて顔をしかめる。同様にアスランも笑いながら額を押さえていた。
「俺も痛えよ、ははは」
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【す、すごいすごいすごいっ!まさに息もつかせぬ怒涛の展開!全くコメントを挟む暇もない!これがジン選手の隠していた力なのか!昨日の試合とは全く動きが違います!しかしそれすらも容易に回避し、攻撃を加えるアスラン選手!これが二人の全力なのか、それとも小手調べだったのか!期待が高まりますっ!どう思いますか、ガバルさん!?】
【えー、そうですね。えー、今までのはおそらくね、小手調べではないかと、えー、私は思】
【なるほど、ありがとうございます!おおっと両選手が再び動き始め……見えない、見えないぞ!早い、早すぎる!何が起こっているのでしょうか、ガバルさん!?】
【……えー、まあ普通に超高速戦闘とね、えー、言うやつですよね。膨大な闘気で足を包んで、スピードをね、えー、強引に】
【なるほど、つまりは普通の人じゃ把握できないほどのスピードということですね!これではコメントしようがない!凄い、凄すぎる!ジン選手は一体どれ程力を隠しているんだああ!】
そんな声に会場はヒートアップする。不気味なほどに金属がぶつかり合う音と、何かが動く二本の線しか見えない。しかしそれだけで充分だった。学園最強に喰らいつくのが1年の、しかもEクラスの生徒なのだ。その事実に皆が興奮する。やがて何度目かの金属音が響いたところで、舞台の中央にジンとアスランが現れた。
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「ははは、やっべえな、クソ楽しいぜ」
「あはは、俺もです」
先程までの、いつも浮かべる紳士然とした笑みではなく、野獣のように目をギラギラさせながら獰猛な笑みをアスランが浮かべる。おそらくこちらが彼の本質なのだろう。
「それにしても、先輩雰囲気違いますね。いつもの好青年っぽい先輩よりも今の方が俺は好きですよ」
「あー、まあな。俺もこっちの方が楽なんだけど、まあ俺にも色々あんだよ。学校の顔ってえのは辛いぜ」
「ああ、なるほど。確かにその顔じゃ、無理ですね」
「ははは、だろ?だから内緒だぜ?そんじゃあ」
「あはは、了解です。それじゃあ」
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